抗議受け撤回

 消費者金融のアイフルが、5万円以上のサラ金利用をフィギュアスケート観戦券プレゼントの条件にしていたことがわかりました。人気競技の観戦券をめぐるサラ金誘導に抗議が相次ぎ、同社は撤回しました。

 7月上旬、フィギュアスケートファンの怒りを招く観戦券の応募キャンペーンが、アイフルのホームページに載りました。

 グランプリ(GP)シリーズ中国大会の観戦チケットを手に入れる条件として、アイフルカードローンの新規契約と、5万円以上の借り入れを明記していました。

 GPシリーズは国際スケート連盟が日本など世界6カ所で開く権威ある大会です。日本で開かれる大会の観戦券は入手が難しく、ファンは国際大会のチケットを買い求める状況です。ホームページは日本とロシアの五輪メダリストを出場選手として紹介して、応募を促していました。

 アイフルの商法に疑問を感じたファンは、すぐにツイッターなどで告発。同社や金融庁、文部科学省に抗議の電話やメール送付を呼びかけました。アイフルは7月中旬、借り入れがなくても応募できるように改めました。

 本紙の取材に対し、同社は「さまざまな意見をいただき、幅広い方々に応募の機会を提供すべきと判断した」と説明しています。

 全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会の秋山淳事務局長は、「不当な景品表示から消費者を守る景品表示法に抵触するおそれがある」と指摘。また、日本貸金業協会の自主規制基本規則に反する行為ともいいます。同規則は、(1)安易な借り入れを誘引する設定・表現を避ける、(2)児童及び青少年への配慮―を掲げています。

 アイフルは2004年からフィギュアスケートの国際大会を協賛。サラ金業界への批判が高まる中で一時休止しましたが、昨年から再開しています。

解説

連盟はファンの熱意に応えよ

 アイフルの行為について日本スケート連盟は「関係ない」という態度です。

 確かにアイフルの契約先は日本スケート連盟ではなく、グランプリ(GP)シリーズ中国大会を主催する中国スケート連盟です。日本スケート連盟主催のNHK杯では、同社と契約していません。だからといって、この問題に関わらないままでいいのでしょうか。

 今回の被害者は日本のスケートファンです。アイフルは日本のスケートファンに自社を宣伝するために協賛企業となり、広告看板をスケートリンクに出しています。契約関係がないから対応を考えないというのは、あまりに素っ気ないといえます。

 アイフルはスポンサーである立場を悪用して、消費者金融の新規開拓を狙いました。競技を愛する日本のファンを食い物にして、自社の利益を追求する行為です。その手法を問題視するならば、国際スケート連盟を通して、協賛企業としての資質に異を唱えることもできるはずです。

 サラ金誘導キャンペーンをいち早く告発し、撤回させたのは、日本のフィギュアスケートファンでした。

 不正をただしたファンの行動は、スケート競技を健全に発展させる力の表れです。その熱意に、連盟関係者も応えてほしいものです。 (勝又秀人)