【パリ=浅田信幸】国連人種差別撤廃委員会(ジュネーブ)は29日、日本における人種差別撤廃条約の順守状況に関する「最終見解」を発表し、人種や国籍で差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)を法律で規制するよう日本政府に勧告しました。また旧日本軍「慰安婦」問題への対応も不十分だとし、謝罪と補償を求めました。

 最終見解は、右翼団体の街頭宣伝活動でのヘイトスピーチの広がりや、公職者、政治家による人種差別発言に懸念を表明。(1)街宣やインターネットを含むメディアでの差別的行為・表現に対する厳正な対応(2)差別行為にかかわった個人と組織への捜査と訴追(3)ヘイトスピーチを広げる公職者と政治家の処罰(4)教育などを通じた人種差別問題への取り組み―などを勧告しました。

 同時に、ヘイトスピーチ対策を、その他の抗議行動などを規制する「口実にしてはならない」とくぎを刺しています。

 人種差別撤廃条約は差別を助長する表現を「犯罪」と定義し、処罰立法措置を義務付けています。ただ日本政府は「表現の自由」を保障する憲法との整合性を考慮すべきだとして、履行を留保しています。最終見解は留保の取り下げを要請しました。

 「慰安婦」問題では、日本政府による実態の認識や被害者への謝罪、補償が不十分だと懸念を表明。(1)人権侵害の調査を終え、侵害に関与した責任者の処罰(2)真摯(しんし)な謝罪と適切な補償による「慰安婦」問題の永続的解決(3)「慰安婦」問題を否定する試みの糾弾―を日本政府に求めました。

 人種差別撤廃委員会による対日審査は2010年以来、4年ぶり。