突出する「読売」、フジテレビ

742cd326f7e1a62129a2bfb8931af827668a1262 安倍晋三首相が政権に復帰して2年。マスメディア幹部との会食が目立っています。総選挙では政権党による「報道介入」に批判が起きました。安倍政権のメディア戦略は―。

 総選挙投票2日後の16日、「自公圧勝」報道の嵐のなか、首相が全国紙やテレビ局の解説委員・編集委員らと会食したことが話題になりました。

 この会食にとどまらず、この2年間、首相とメディア幹部との会食が重ねられてきました。そのなかで鮮明になっているのが、首相によるメディアの選別です。2年間でみると、突出しているのが、「読売」の渡辺恒雄会長の8回、フジテレビの日枝久会長の7回。それにつづくのが、「産経」の清原武彦会長の4回、日本テレビの大久保好男社長の4回などです。

 安倍政権の改憲路線や歴史逆行の動き、消費税増税や環太平洋連携協定(TPP)交渉推進など、政権べったりの姿勢が目立つメディアとの癒着ぶりが顕著です。なかでも、「読売」は渡辺会長のほか、論説主幹とも判明しているだけで7回会食。フジの日枝会長は夏のゴルフ仲間として定着しています。「朝日」、「毎日」、「日経」、共同、時事、「中日」などの経営幹部との会食も欠かしていません。

 こうした状況に、ある全国メディア幹部は「会食する順番、回数など、メディア全体が安倍政権に選別されている状況が一番問題だ。現役記者も、官邸からにらまれないように汲々(きゅうきゅう)としている」と懸念します。

 一方で、今回の総選挙公示前にTBSの報道番組に出演した安倍首相が、アベノミクスに対する街の声を紹介した番組中の取材映像に対し「これ、おかしい」「(テレビ局の)みなさん(声を)選んでおられる」と強い口調で非難しました。この2日後に、自民党が在京テレビキー局各社に要請文書を出し、「街頭インタビュー、資料映像等で一方的な意見に偏る、あるいは特定の政治的立場が強調されることのないよう」求めました。

 これに対し民放労連は「政権政党による報道介入に強く抗議する」との委員長談話を発表するなど、異例の事態に発展しました。

 メディア幹部と会食を重ね、癒着を深める一方で、現場には恫喝(どうかつ)まがいの行動に出る―安倍政権のメディア戦略にきびしい監視が必要となっています。

問われる“権力の監視役”

 安倍晋三首相とメディア幹部との会食で目につくのは、政局の節目節目に首相が近しい記者との会食を行っていることです。

 総選挙から2日後の16日夜、「読売」、「朝日」、「毎日」、「日経」、NHK、日本テレビ、時事通信の解説委員・編集委員らが、東京・西新橋のすし店で会食したことを本紙がニュースとして報道しました。大きな反響があり、「マスメディアの堕落だ」「あまりにひどい」との反応が寄せられました。

 このメンバーは、首相との定期的な会食を重ねています。秘密保護法強行の直後(13年12月16日)、集団的自衛権の検討表明の日(14年5月15日)にも会食しています。靖国神社参拝や消費税増税強行の直後には、報道各社の政治部長らが首相と懇談・会食をしています。

 こうした会食が社論や解説記事に影響することはないのか。首相の側は政局の節目に自分の考えをメディアに伝えようとしているのは明白です。国のあり方が大きく問われ、世論も多数が反対している問題が重要局面を迎えているときに、メディアの編集幹部が権力中枢と会食することが許されるのか、きびしく姿勢が問われます。

 これらの会食は、高級料理店で2時間から3時間も食事をともにするもので、通常の取材とは明らかに一線を画すものです。しかも、会食に出席した解説委員・論説委員などは、自社の社長らと首相の会食にも同席するケースがあり、いわば経営幹部と権力中枢の接近を媒介しているともいえます。

 権力の監視を本来の役割とし、そのためにも緊張関係を保つべきメディアのあり方からの重大な逸脱です。
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