政府・与党は整備新幹線の3区間(北海道、北陸、九州)について、巨額の税金を注ぎ込んで開業時期を前倒しすることを狙っています。7日にも政府・与党の会合で決める構えですが、その中身は―。
国・自治体負担
政府は、北海道新幹線(新函館北斗―札幌間)の開業を2035年度から5年、北陸新幹線(金沢―敦賀間)を25年度から3年、それぞれ前倒しし、22年度に開業予定の九州新幹線・長崎ルート(武雄温泉―長崎間)も可能な限り早める方針です。
3区間の建設費は3兆100億円に上ります。財源は、国・自治体の負担と、JR各社が国に支払っている新幹線施設貸付料の収入などを充てる仕組みです。
もともと貸付料収入は、18兆4054億円(12年度末現在)も残っている旧国鉄の債務返済に充てるべきものです。ところが政府は、前倒し開業のために5400億円が必要だとして、14年度予算で719億円だった国費を増額し、自治体の負担も増やすとともに、開業後の貸付料収入を担保にした借入金を増やすなどして賄う考えです。
採算性に疑問も
3区間は、国土交通省の試算でも、「費用対便益」が北海道1・1、北陸1・0、九州1・1という採算ギリギリの路線です。しかも、人口減のもとで新幹線だけが需要を大きく伸ばすことが前提。北海道では、道央への鉄道利用者が610万人(2005年)から940万人へと1・5倍以上にもなると見込んでいます。その上、「開業時期が早いほど税収効果が大きくなる」(北海道)と前倒しをけしかけています。
形態もあいまい
3区間をめぐって国は、並行在来線の経営をJRから分離することを自治体に強要し、在来線の存廃も経営形態もあいまいなまま、多くの住民の批判や不安を無視して建設着工を認めました。北陸新幹線の場合、並行する信越・北陸本線は各県の第三セクター鉄道に移行。大幅な本数削減や運賃値上げが計画されています。
数々の問題を抱えた3区間の前倒しを「地域活性化」の名でごり押しする姿勢が問われています。