労働政策審議会の労働条件分科会が13日、過労死を増加させる「残業代ゼロ」制度である「高度プロフェッショナル制度」の創設などを盛り込んだ報告をとりまとめ、厚労相に提出(建議)しました。17日にも同分科会が開催されるなど、労働基準法改悪案の国会提出に向けた作業が急ピッチですすめられています。

 今回の「残業代ゼロ」制度は、2007年の第1次安倍内閣時にとんざした「ホワイトカラー・エグゼンプション」そのものです。

 前回の「ホワイトカラー・エグゼンプション」では労政審は報告をとりまとめたものの、「残業代ゼロ」制度との激しい批判と反対世論が噴出。法案要綱が出される前に労働基準法改悪案の国会提出を断念しました。安倍首相は当時、「働く人たちの理解がなければうまくいかない」「サービス残業が増える、助長する形になってはならない」と語りました。

 しかし、今回の建議でも「働く人たちの理解」など得られてはいません。報告では、「高度プロフェッショナル制度」の創設、裁量労働制の見直しについて、労働者側の「認められない」とする意見が明記されました。分科会でも労働者代表7人の総意として明確に反対を表明しました。

 報告では、「健康・福祉確保措置」として(1)一定の時間以上の休息時間(2)労働時間は一定の時間を超えないこと(3)年間104日以上の休日―のいずれかを措置するとしています。しかし、「年間104日以上の休日」は、前回「ホワイトカラー・エグゼンプション」でも盛り込まれていました。休日さえ確保すれば、1日に何時間働かせても、休息を取らせなくてもいいものです。これで長時間労働防止に対する「歯止め」とはとてもいえません。

 「高度プロフェッショナル制度」では、「時間ではなく成果で評価される働き方」を掲げています。しかし、「成果で評価」というのは、労働時間規制の適用除外を実施するための方便でしかありません。

 成果主義賃金は法律による規制はほとんどなく、すでに多くの職場に広がっているからです。そもそも成果主義賃金は、成果が上がらなければ評価されないため、長時間労働を助長する賃金制度です。現に成果主義賃金が導入されている職場では、長時間労働がまん延しています。

 大企業・財界の本音は、“労働者に成果を競わせるには、労働時間の規制は阻害になる”ということです。

 過労死は各国になく、翻訳すべき言葉がないため「カローシ」として国際的に通用するほど例を見ない極めて異常な労働災害です。日本では毎年100件を超える過労死認定がされていますが、これは氷山の一角です。過労死に至るような長時間労働を強いて、企業の「競争力強化」も、経済の持続的発展も望めません。(行沢寛史)