主張

自民党改憲戦略

9条狙う“二段構え”は論外

 自民党が昨年末の総選挙後初の憲法改正推進本部を開き、まず各党の理解を得やすいとする「環境権」などから前例を作り、その後、本命ともいえる「9条改正」などをめざす“二段構え”の戦略を確認しました。改憲に異常な執念を見せる安倍晋三首相(自民党総裁)のもと、自民党は3月8日に開く大会でも来年の参院選後の改憲案提出を念頭に「憲法改正を推進する」運動方針を決めようとしています。“二段構え”の改憲戦略は、自民党が進める改憲が、9条改憲による「戦争する国」づくりのための、道理のないものであることを浮き彫りにしています。

「9条改正」は特に重要

 26日に開かれた自民党の憲法改正推進本部では、自民党が2012年にまとめた憲法改正草案のうち、憲法9条の「改正」などを「特に重要な項目」とすることを確認したうえ、改憲には幅広い勢力の賛成が必要で、憲法9条は最初に憲法改正案を発議するテーマに含めることは難しいと、“二段構え”の戦略を確認したといいます。

 これを受け、1回目の改憲では各党の合意が得やすいとして、(1)「環境権」など新しい人権規定、(2)緊急事態条項、(3)財政規律確保に関する条項―などを現行憲法に追加するものをめざすことを検討しているといわれます。

 自民党が、安倍首相が執着している憲法9条の「改正」などを「特に重要な項目」と確認したことは重大です。自民党の憲法改正草案は、個別的自衛権と集団的自衛権の区別なく「自衛権の発動を妨げるものではない」ことを明記し、自衛隊を「国防軍」に変えることを狙うなど、まさに海外で「戦争する国」になるものです。その「9条改正」を特に重視するというのは、自民党が改憲に突き進む本音を浮き彫りにしています。

 自民党の“二段構え”の戦略は、自民党単独では改憲案の発議に必要な衆参両院での3分の2の議席を獲得できていないことや、国民の間では憲法、特に「9条改正」への支持がまだ少数派であることを反映したものです。しかし、「9条改正」のために異論の少ない「改正」を持ち出すというのはまさに“改憲のための改憲”であり、憲法をもてあそび、主権者である国民を愚ろうするものです。

 この問題では自民党憲法改正推進本部で事務局長を務める礒崎陽輔首相補佐官も最近、「憲法改正を国民に1回味わってもらう。『そんなに怖いものではない』となったら、2回目以降は難しいことを少しやっていこうと思う」と発言しています。語るに落ちるとはまさにこのことです。国民が改憲を望んでいるわけでもないのに、国民を改憲にならしていこうなどというのは言語道断であり、“二段構え”の改憲などというのは、絶対許すわけにはいきません。

憲法守る世論と運動を

 総選挙後、改憲に取り組むことを繰り返している安倍首相は、来年の参院選挙で3分の2の議席を獲得することと同時に、「国民投票で過半数の支持を得るのが正念場」と、国民世論への対策を重視しています。自民党が今回の大会で決める運動方針で、「憲法改正賛同者の拡大運動を推進する」と盛り込んでいるのもそのためです。

 国民を踏みにじる危険な改憲を阻止するため、憲法守れの世論と運動の盛り上げが急務です。