医療費抑制進める仕組み
第1の問題は、国民健康保険について制度発足以来の大改悪を行い、医療費削減の仕組みをつくることです。国保の財政運営が市町村から都道府県に移管されます。保険料の額は引き続き市町村が決めますが、都道府県が「標準保険料率」を示すことになります。これまで住民の運動や日本共産党の論戦で一般会計からの繰り入れで保険料を軽減させてきました。今後は、標準保険料率をもとに繰り入れをやめさせる指導が行われ、保険料の値上げや取り立て、保険証取り上げなどがいっそう強まります。
自治体の要求に押されて国は3400億円の公費を投入することになりました。これと引き換えに、今後市町村による繰り入れをやめさせる圧力も働いてくることは必至です。
さらに、国保の「都道府県化」と、都道府県が策定する「地域医療ビジョン」、「医療費適正化計画」の三つをセットにして都道府県主導で医療費を削減していくことです。
都道府県は、地域医療ビジョンで医療の提供計画を立てて病床削減を行わせるとともに、医療費適正化計画で医療費の削減目標を立てます。ここに国保運営の権限が加わり、医療費抑制を推進していく仕組みです。ある自民党議員は「ここまでくれば、次はキャップ制」だと語っています。都道府県ごとに医療費の上限を決めて、その範囲内に抑え込んでいくねらいです。
「老いも若きも負担増」に
第2は、「老いも若きも負担増」です。後期高齢者医療制度の保険料の特例軽減を政令によって廃止します。特例軽減は、後期高齢者医療を導入するとき反対世論に押されてつくられました。対象者は加入者の半分を超える865万人。廃止されると一挙に2倍から10倍もの負担増になります。
一般病床や療養病床の65歳以下の入院時の食事代を1食260円から460円に引き上げます。1カ月入院すると1万8千円の値上げです。
入院食事は治療の一環であり、負担増を押し付けることは大問題です。このほかにも紹介状なしで大病院を受診する際、5000円~1万円の定額負担を義務化することや、国保組合への補助金削減などもねらわれています。
混合診療の全面解禁に道
第3は、「患者申し出療養制度」の導入です。保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」は原則禁止されています。だれもが必要な医療を受けられるようにする国民皆保険制度に反するからです。
これを財界は「岩盤規制」と攻撃、安倍首相も「ドリルになって壊す」といってきました。当初案では、医師と患者が合意さえすればどんな治療もできるとしていましたが、医療関係者の反対もあって、一定の機能の病院に限定し、安全性も一応審査することになりました。
しかし、審査期間は現行の6カ月から6週間、前例がある場合は2週間に大幅短縮されます。安全性が不確かな医療が出回ることや、事故の責任を患者に負わせる危険性も指摘されています。混合診療の全面解禁はきっぱり断念し、必要性・有効性が確認された医療は保険適用し、国民皆保険制度を拡充させていくことこそ必要です。
「小泉路線」復活
日本医師会が小泉政権の医療政策を総括した時、給付費抑制、家計負担増、官によるコントロール、規制緩和による民間企業への利益誘導―を特徴にあげていました。まさに小泉政権時代の医療「改革」路線が、安倍内閣で完全復活・強化されようとしているのです。
暮らしを壊す消費税ではなく、応能負担の原則にたった税制改革と、国民の所得を増やす経済改革を行えば、医療改悪を中止し、安心できる医療制度をつくる財源は生まれます。
医療破壊を許さない国民的な共同を広げ、改悪法案阻止、国民本位の医療制度改革に全力をあげる決意です。