主張

米軍機の低空飛行

子が泣き叫んでも「妥当」とは

 日本での米軍機の低空飛行訓練の傍若無人ぶりとこれを擁護する安倍晋三政権の異常な姿勢が際立っています。住民の命と暮らしを脅かす低空飛行訓練をやめさせるため、政府の対米追従姿勢をただすとともに、米軍の横暴勝手を許す特権の撤廃が必要です。

飛行計画の情報提供を

 昨年12月、高知県香美市の民家の庭先から超低空を飛行する米軍機を捉えた動画が撮影されました。すさまじい爆音とともに谷間からいきなり現れた戦闘機がすぐ目の前の稜(りょう)線(せん)をなめるように旋回し、そばにいた3歳の男の子が恐怖で泣き叫ぶ映像です。インターネット上で公開され、大きな反響を呼びました。動画を見た尾﨑正直高知県知事は記者会見で「子どもが泣くような過剰な訓練はやめてもらいたい」と訴え、県議会は今年3月、「米軍機の低空飛行訓練の中止を求める意見書」を全会一致で可決しました。

 ところが、安倍政権はこうした声に冷たく背を向けています。

 安倍首相は、日本共産党の仁比聡平議員の質問に対し「(米軍は)公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべき」だと答弁しました。しかし、仁比氏が動画に写っているような飛行も「妥当な考慮を払った飛行だったと言うのか」とただしたのに対し答弁に立てず、代わりに答弁した中谷元・防衛相は、人口密集地域や学校、病院などに「妥当な考慮を払う」とした「日米合同委員会の合意(1999年)を尊重して訓練が行われている」と擁護したのです(3月30日、参院予算委員会)。子どもが恐怖で泣き叫ぶ飛行訓練が「公共の安全に妥当な考慮を払っている」などというのはとんでもない答弁です。

 高知県議会の意見書は「飛行ルートや時間の告知もなく行われる(米軍機の)低空飛行は、当該空域で年間40回以上活動する消防防災ヘリコプターやドクターヘリの航行の安全を脅かしている」と指摘しています。仁比氏が日本政府に事前通報されている米軍機の飛行計画を地元自治体に伝えるよう求めたのに対し、中谷氏は「開示等は差し控えさせてもらいたい」と拒否しました。米軍機の飛行計画について中谷氏がかつて「当然、何時ごろに通過する予定です、ということは(地元に)言っておくべきだ」(高知新聞2013年9月13日付)と語っていたことをほごにする極めて無責任な態度です。

 米軍機の危険な飛行訓練をかばいだてする安倍政権の異常な姿勢はこれだけではありません。

 鹿児島県の屋久島空港で米軍機が超低空で進入し、着陸せずにそのまま飛び去るローアプローチ訓練をしていた問題で、政府はこれまで「かなり危険も伴うし、基本的に日米地位協定上許容されていない」としていました。ところが、昨年10月に再び同じ訓練が行われたことに関し、岸田文雄外相は、事前調整が必要としつつ、米軍機が日本の民間空港に出入りできるとした日米地位協定5条を口実に、一転、「認められる」としました(3月26日、衆院安全保障委員会)。

地位協定の特権なくせ

 米軍機の低空飛行訓練も、最低安全高度などを定めた航空法の適用が日米地位協定に基づいて除外されている問題があります。米軍の危険な訓練を野放しにする安倍政権を許さず、米軍特権撤廃を求める声を大きく上げる時です。