主張

「翁長・安倍会談」

「固定観念」を捨て民意に従え

 沖縄県の翁長雄志知事と安倍晋三首相が昨年11月の知事選後初めて会談しました。同県名護市辺野古の米軍新基地建設に反対する翁長氏に会おうともせず、遮二無二、建設作業を進める安倍政権への批判の高まりを受けての会談です。28日の日米首脳会談を控え、翁長氏説得に努めていることをアピールする首相の思惑も指摘されています。首相は翁長氏を「沖縄の皆さまの、まさに思いを代表」している知事と呼びました。翁長氏が指摘したように、沖縄の「圧倒的民意」は新基地反対です。日米首脳会談で首相はその思いこそオバマ大統領に伝えるべきです。

政府のごまかし通用せぬ

 安倍政権はこれまで、新基地建設を正当化する口実として、「19年前(1996年)に日米で(普天間基地の)全面返還が合意され、3年後(99年)に当時の沖縄県知事と名護市長の同意をいただいて辺野古移設を閣議決定した経緯がある」(菅義偉官房長官)と繰り返してきました。

 これに対し翁長氏は首相との会談で、当時の稲嶺恵一知事は軍民共用空港化、15年使用期限を、岸本建男名護市長は基地使用協定の締結などを受け入れ条件にして新基地建設を認めたものの、その後、政府は県と十分な協議もしないまま閣議決定を廃止したと指摘しました。「前提条件がなくなったことで、受け入れたというのは間違いだ」とも断じました。

 実際、新基地建設に関する99年12月の閣議決定は、「軍民共用空港を念頭に整備を図る」とし、15年使用期限という県知事や名護市長の要請を「重く受け止め」るとしていました。ところが、日本政府はその後、そうした約束をほごにしました。辺野古沖合の建設案を辺野古沿岸域に変更した上、県の同意も得ないまま、2006年5月には現行のV字形滑走路案で米政府と合意し、99年の閣議決定を廃止しました。

 政府が一方的に廃止した閣議決定を持ち出し県知事の同意を得ていたなどというのは全く通用しません。

 安倍政権が新基地建設を進める口実にしている、仲井真弘多前知事による辺野古沿岸域の埋め立て承認も成り立ちません。

 翁長氏が「政府は今、普天間飛行場の県外移設という公約をかなぐり捨てた前知事が埋め立てを承認したことを錦の御旗として辺野古移設を進めている」と批判した通りです。首相は、沖縄で昨年たたかわれた名護市長選、県知事選、衆院選の争点が前知事の埋め立て承認であり、その「全ての選挙で辺野古新基地反対という圧倒的民意が示された」(翁長氏)事実こそ受け止めるべきです。

辺野古に絶対造らせない

 「辺野古への移転が唯一の解決策」とする首相に対し、翁長氏は沖縄の米軍基地は強制接収で造られたとし、「土地を奪っておきながら、(普天間基地が)世界一危険だから沖縄が(新たな基地を)負担しなさい、嫌なら代替案を出せと言われる。こんな理不尽なことはない」と語り、「私は絶対に辺野古への新基地は造らせない」と不退転の決意を示しました。これこそ民意です。

 日米首脳会談で、首相が「かたくなな固定観念」(翁長氏)に縛られ、辺野古新基地建設推進を約束するようなことは許されません。