主張

消費税増税の1年

経済の破たんはごまかせない

 消費税の税率が5%から8%に引き上げられた昨年4月以来1年間の国内総生産(GDP)が、実質で1%のマイナスになったことが明らかになりました。2008年の「リーマン・ショック」が国際的な金融危機を引き起こした08、09年度以来のマイナス成長です。消費税の増税が国民の暮らしと経済に破たんをもたらしているのは、明らかです。安倍晋三政権は「アベノミクス」で経済が持ち直してきているようにいいますが、数字はごまかせません。経済失政の誤りを認め、消費税に頼るのはやめて、国民の暮らし最優先の経済政策に転換すべきです。

増税の打撃立ち直れぬ

 この1年間のGDPの内訳では、民間最終消費支出が前年比実質3・1%のマイナス、民間住宅建設が11・6%のマイナスなど、消費税増税が国民の暮らしを痛めつけ、消費を落ち込ませたことをくっきり浮かび上がらせています。3カ月ごとの推移で見ると、昨年4~6月期に前年同期比1・8%の大幅落ち込みになったあと、2期連続マイナスを続けました。増税から半年後になってやっとプラスになり、今年1~3月期の速報はプラス0・6%ですが、消費支出などはいぜん低い伸びで、まだまだ増税の打撃から立ち直りきれていません。専門家も「増税の悪影響が完全に払しょくされたとはいいがたい」との見方です。

 原則としてあらゆる商品やサービスの価格に上乗せされる消費税の増税が、消費を落ち込ませ、暮らしを悪化させることは予想されたことです。商店や製造業者にとっても売り上げが減り、価格に転嫁できなければ身銭を切ることになります。勤労者の収入は消費税増税などによる物価上昇に賃上げが追いつかず、この1年間の実質賃金は統計を取りだして以来最大の3%もの落ち込みになりました。国民の生活悪化は深刻です。

 安倍政権は、「黒田バズーカ」などともいわれた異常な金融緩和と大型公共事業などの財政出動、大企業向けの減税や規制緩和など「成長戦略」で経済が立て直せるからと、国民の懸念や反対を押し切って消費税増税を強行しました。歴史的なマイナス成長をもたらし経済を破綻させた、失政への責任は免れようがありません。

 「アベノミクス」を扇動してきた日銀の黒田東(はる)彦(ひこ)総裁自身、最近この2年間を振り返って、「思い通り」もあったが「想定外」もあったとして、「想定外」のひとつとして消費税増税による個人消費の落ち込みが長引いたことをあげています。黒田総裁にとっては「想定外」でも、消費税増税で暮らしを切り詰めてきた国民にとって、あいまいにすまされることではありません。

再増税強行は許されない

 「アベノミクス」は経済を立て直すどころか円安と株高を進め、大企業と大資産家を潤しているだけです。金融緩和のための日銀の国債買い上げは、事実上日銀が政府の借金を引き受ける状態になりつつあると懸念もよんでいます。

 経済失政の責任も取らないまま、安倍政権が17年4月に先送りした消費税率を10%にする再増税を、経済がどうなろうと実施するとしているのは許されません。大企業中心の「アベノミクス」ではなく、国民の暮らし最優先で、経済と財政を立て直すことが急務です。