主張
3月期大企業決算
もうけは過去最大、還元足りぬ
ことし3月期の大企業の決算がほぼ出そろい、全体では2008年の「リーマン・ショック」以来の最高水準を記録した昨年3月期をさらに上回り、2年連続の最高益となったことが明らかになりました。「アベノミクス」による円安と株高で大企業がうるおい、石油など輸入価格の下落でも恩恵を受けているためです。大企業の大もうけの一方で、勤労者の実質賃金は4年間もマイナスを続けており、消費税増税の直撃も受けて消費の低迷は深刻です。大企業のもうけを労働者の賃金や下請け単価に還元しなければ、国内の消費と経済が行き詰まるのは必至です。
円安でうるおう一部企業
証券会社などの集計によれば、3月期に決算を迎えた東京証券取引所1部に上場している大企業の売り上げから経費を差し引いた経常利益は合わせて43兆円を超し、昨年をさらに上回って、過去最高を記録しています。なかでも円安でうるおった自動車や電機などの輸出関連企業や、原油価格の下落で原材料費や燃料コストが低下した化学や空運などの大企業は軒並みもうけを増やしています。
「アベノミクス」のもとで異常な円安が続いていますが、円安だからといってすべての輸出関連企業がうるおっているわけではありません。最近でみても、円に換算した輸出金額では増えても、数量ではマイナスのままです。海外に生産拠点を移した大企業は為替差益もあって円安でうるおいますが、国内の下請け企業は輸出の数量が増えなければ生産が拡大しません。円安で輸入額も増えているため、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は赤字が続いています。
結局、海外で収益を拡大した一握りの大企業や、石油など原材料価格の低下で恩恵を受けた一部企業だけが利益を大幅に伸ばしたというのが3月期決算の特徴です。代表的なのがトヨタで、営業利益は2兆8000億円と3期連続の増益で過去最高ですが、その中身は円安を追い風に北米市場で収益を伸ばし、国内での販売不振を補っています。株主への配当や研究開発投資にも積極的です。
日本の大企業は、景気が悪いときにも労働者の賃金や下請け単価を抑えてもうけを確保し、円安などが追い風になるとさらにもうけを増やしてきました。賃金などの抑制は続けており、昨年、ことしと安倍晋三政権の要求で賃上げに踏み出したとはいっても、賃上げ率は消費税増税分の3%にも及びません。その結果、賃上げから増税や消費者物価上昇分を差し引いた労働者の実質賃金は14年度まで4年連続のマイナスで、14年度の1年前に比べた実質賃金の下落は3%と、統計を取り始めて以来最大となっています。
国内で販売増えなければ
円安などで大企業がどんなにもうけを増やしても、肝心の国内で購買力が伸びず売り上げが増えなければ、やがて行き詰まり、経済が破綻してしまいます。大企業の史上空前の利益と、労働者の賃金のかつてない落ち込みは、日本経済が危ない段階に近づいているのを浮き彫りにしています。
日本経済をつりあいの取れた発展に引き戻すには、大企業のもうけを賃金や下請け単価に分配し、国民の暮らしを立て直すことです。そうしてこそ、消費主導の経済再建も実現できます。