主張

PKO法改定案

「殺し殺される」危険ここでも

 衆院安保法制特別委員会で審議中の「戦争法案」は、自衛隊が集団的自衛権の行使をはじめ、憲法9条が禁じる海外での武力行使に乗り出す仕掛けがさまざまに盛り込まれています。その一つが、国連平和維持活動(PKO)法改定案(国際平和協力法案)です。PKOとは関係のない活動にも自衛隊を派兵し、形式上は「停戦合意」があってもなお戦乱が続いているようなところで治安維持活動をさせるという、極めて危険な内容になっています。ここにも、自衛隊が「殺し殺される」戦闘を行うことになる大問題があります。

アフガン派兵現実の危険

 PKO法改定案は第一に、同法の目的規定に「国際連携平和安全活動」という国連が統括しない活動への協力を新たに盛り込み、自衛隊が参加できるようにします。

 第二に、自衛隊が具体的に行う活動内容を拡大し、政府が「安全確保業務」と呼ぶ治安維持活動や「駆け付け警護」などを新たに可能にします。「安全確保業務」とは「特定区域の保安のための監視、駐留、巡回、検問及び警護」などを行うことと規定しています。

 第三に、自衛隊の武器使用基準を拡大し、隊員の生命・身体を防護するための「自己保存型」の武器使用などだけでなく、「任務遂行型」の武器使用=「業務を妨害する行為を排除するため」の武器使用も新たに認めます。

 こうした改定がされれば、米国による「対テロ」報復戦争を受け、2001年から14年までアフガニスタンに展開した国際治安支援部隊(ISAF)のような活動に自衛隊を参加させ、「安全確保業務」を行うことが可能になるのではないか―。日本共産党の志位和夫委員長の追及に対し、安倍晋三首相が「今ここに再現して判断することが困難であるから一概には言えない」(5月28日の衆院安保法制特別委)として参加を否定しなかったことは重大です。

 国連ではなく、NATO(北大西洋条約機構)が統括したISAFはアフガニスタンの治安維持を主な任務にしていましたが、米軍主導の「対テロ」掃討作戦と混然一体となり、約3500人もの死者を出しました。

 PKO法改定案が定める「安全確保業務」は、具体的には重要施設の警護、検問所を設置しての検査、市街地のパトロールなどであり、どれもが狙撃や自爆テロの標的となり、戦闘に至る可能性があるものです。「任務遂行型」の武器使用が許されれば自衛隊が先に発砲する事態もあり得ます。ISAFはこれらのケースで多数の犠牲者を出し、多くの市民も戦闘に巻き込まれ、死亡しています。

 ISAFは14年末に活動を終了したものの、NATOはその後も、「確固たる支援(RS)任務」としてアフガン治安部隊の訓練や支援を行う活動を続けています。米軍は、RS任務とともに、「自由の見張り作戦」(OFS)として「対テロ」掃討作戦も続けています。法案の成立を許せば、米国の要求を受けて自衛隊のアフガン派兵が現実化しかねません。

違憲立法であるのは明瞭

 「戦争法案」は憲法9条を踏みにじる違憲立法です。自衛隊から戦死者を出すばかりでなく、他国の民衆を殺傷する点からいっても違憲性は明瞭です。違憲立法は直ちに廃案にするしかありません。