志位氏は冒頭、憲法9条を全面的に破壊する戦争法案の違憲性を端的に明らかにし、「これまでの国会論戦を通じて、戦争法案の違憲性は明らかになったと確信している」と強調。「世界からみると、戦争法案と推進勢力に、三つの異常と危険があります」と話を進めました。
第1は、「非国際性」です。志位氏は、兵站(へいたん)が武力行使と一体不可分であり、戦争行為の不可欠の一部であることは世界の常識、軍事の常識だと指摘。「政府は、これをごまかすために、世界のどこにも通用しない概念、議論を弄(ろう)しています」と批判しました。
「政府は、英訳できない、概念すらない三つの言葉を使っています」。政府がいう(1)「後方支援」、(2)「武器の使用はするが武力の行使にはあたらない」、(3)「武力行使と一体でない後方支援は武力の行使にあたらない」との用語・概念は、世界で通用するものではないと志位氏が述べると、安倍政権の“非常識ぶり”に特派員らからたびたび失笑が起こりました。
集団的自衛権についても同様です。政府は、解釈変更の唯一最大の理由として「国際情勢の根本的変容」をあげますが、「国際情勢の根本的変容のもとで、他国に対する武力攻撃によって『存立危機事態』に陥った国が一つでもあるか」とただすと、一つも実例があげられません。
志位氏は、「憲法9条の下では自衛隊の海外派兵はもともと不可能です。それを取り繕うとするから、世界のどこにもない架空の概念を作り出すことになります」と指摘。「自衛隊の世界的規模での派兵を企てながら、世界のどこにも通用しない詭弁(きべん)でそれを合理化することは、許されるものではありません」と力を込めました。
第2は、「対米従属性」――法案推進勢力が異常なアメリカ追随を特徴としていることです。
「米国の先制攻撃の戦争を行った場合でも、集団的自衛権を発動するのか」。志位氏の質問(5月28日、衆院安保特)に、安倍晋三首相は「違法な武力行使をした国を、日本が支援することはない」と答弁しました。
志位氏は、ベトナム戦争やイラク戦争など、米国の数多くの先制攻撃の戦争に、日本政府はただの一度も反対を表明したことがないことを告発。「このような政府が、『違法な武力行使をした国を支援することはない』といって誰が信用できるでしょうか」と強調し、「異常な米国いいなりの国が、集団的自衛権行使をする危険は極めて深刻です」と批判しました。
第3は、「歴史逆行性」――過去の日本の戦争を「間違った戦争」と言えない安倍政権が、戦争法案を推進する危険性です。
志位氏は、自身の国会論戦を振り返り、安倍首相が5月20日の党首討論で「間違った戦争」と認めることを拒み続けたことを取り上げました。
「戦後の国際秩序は、日独伊3国の戦争は侵略戦争だったという判定の上に成り立っています。ところが、安倍首相は『侵略戦争』はおろか『間違った戦争』とも認めません」と指摘。「過去の戦争への反省のない勢力が、憲法9条を破壊して、『海外で戦争する国』への道を暴走する。これほどアジアと世界にとって危険なことはありません」と批判しました。
志位氏は、最後に、「国会の大幅会期延長が強行されましたが、この法案の行方を握っているのは国民の世論です」と強調。「文字通りの圧倒的多数の国民が反対となった場合には、いかに与党が国会で多数を持っていたとしても強行することはできなくなる。国会論戦と国民運動の両面で、安倍政権を圧倒的に包囲するような状況をつくるために全力をつくします」と表明しました。
志位氏の講演を受けて、約1時間にわたって活発な質疑がおこなわれました。特派員らからは、「海外派遣から帰国した自衛隊員の自殺をどう考えるか」、「首相となったらどの国を最初に訪問するか」、「共産党の安保政策はどういうものか」、「野党を一つの勢力に束ねることをどう考えているのか」、「沖縄の現状をどう見ているのか」、「憲法学者の『違憲』発言をどう受け止めるか」、「この地域の平和と安定のために何が必要か」など多面的な質問が次々と出ました。志位氏は一つ一つに対して丁寧に答えました。
質問をした特派員の一人は、「安倍政権がいかに世界の流れに逆行しているかが具体的にわかった。もっと発信してほしい」と記者会見後に感想を語りました。