主張

TPP交渉

アメリカ追従からの脱却こそ

 関税の原則撤廃などを目指す環太平洋連携協定(TPP)交渉をめぐり、7月中に大筋合意するため、閣僚会合を開催する動きが日本など各国の政府で激しくなっています。アメリカ議会でTPP交渉の進展に欠かせないとされる大統領通商交渉権限にかかわる貿易促進権限(TPA)法が可決され、オバマ大統領も署名して成立したことが背景になっています。

米国民もTPP反対

 TPA法案をめぐってアメリカ議会は、迷走を続けてきました。オバマ大統領と与党の民主党、野党の共和党の駆け引きもありますが、何といってもアメリカ国民の中にTPPが米国の国民の利益にならず、ごく一握りの巨大資本の利益追求にしかならないという批判があるためです。勤労者・市民に有害でしかないという声が広がり、労働組合や市民団体の反対運動が高まっていました。

 ようやく成立にこぎつけたTPA法も、大統領に交渉権限を与えるといっても大幅譲歩する権限まで与えているわけではありません。交渉で「農産物関税を撤廃か米国以下に」するよう求めるなど、アメリカに有利な「条件付き権限移譲」といわれています。アメリカのフロマン通商代表は「議会はTPAを通じ、高い水準のルール」を求めているとのべています。

 TPP交渉自体が、関税撤廃や知的財産権、ISD条項など多くの分野で多国籍企業の利益を優先するアメリカ、日本などと、発展途上国との間で簡単に妥協できない状況です。TPA法が成立したからといって、一気に合意がすすむという状況にはありません。

 それにもかかわらず、安倍晋三首相は、「日米がリーダーシップを取り、早期の妥結をめざす」と交渉妥結に前のめりです。TPP交渉をまとめるために、TPA法が条件とする「農産物関税を撤廃か米国以下に」を受け入れるなら、日本農業などは壊滅的な打撃を受けることはあきらかです。

 国連の専門家グループは、TPP交渉をはじめ自由貿易の拡大が各国の主権を侵害し、幅広い分野で人権に悪影響を与える懸念があるという声明を発表しました。アメリカに追従することでは、国会決議が「聖域」とした農産5品目の生産維持も食の安全や医療、労働条件などの維持も確保できません。国民にはもちろん国際的にも有害さはあきらかです。

 安倍内閣がTPP交渉の妥結を急ぐのは、TPPが首相のいう「企業がもっとも活動しやすい国」のための「成長戦略」の柱になっているためです。同時に、首相がアメリカ議会の演説で「TPPは安全保障上の意義がある」と述べたように、日米同盟最優先の立場からアメリカに奉仕しようとしているからです。このような売国的な態度こそ転換すべきです。

より広く阻止の声を

 TPPとTPA法に反対したアメリカの労働組合もたたかいを続けると表明しています。TPP交渉は極端な秘密主義をとっていますが、内容があきらかになれば反対がさらに広がるのは必至です。

 情報を公開させ、多国籍大企業の利益のために諸国民を犠牲にするTPP交渉の正体を広範な人々に知らせれば、交渉を漂流させ断念させる条件はあります。国内の運動をさらに強め、国際的な共同を発展させることが重要です。