主張
新国立競技場
後世にツケ残す計画見直しを
無謀でずさん、将来に禍根を残す決定というほかありません。
2019年ラグビー・ワールドカップ(W杯)の会場であり、20年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の実施設計案が承認され、9日には一部契約が結ばれました。文部科学省と事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は10月着工、19年5月の完成をめざすとしています。
ふくらみ続ける総工費
異常なのは、そのコストです。当初の1300億円が二転三転、昨年の基本設計を900億円も上回る2520億円に膨らみました。計画を了承したJSCの7日の有識者会議で「極めて妥当な値段だ」(東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長)と開き直る姿もありました。しかし、現実には横浜国際総合競技場(7万人収容)なら四つできておつりがくる、ばく大な総工費です。
工費はさらに膨らむ可能性が大です。五輪後に見送った開閉式屋根は168億円ですが、これは別枠です。総額4千億円を超えるとの指摘もあります。当然、維持経費も膨らみ、50年間の大規模修繕費は656億円から1046億円にはね上がりました。後世に大きなツケを残すことは明らかです。
ザハ・ハディド氏のデザインと、開閉式屋根を支える2本の巨大アーチにこだわったことが原因です。JSCも工費高騰の理由をアーチ構造の「難易度の高い特殊な工事のため」と認めています。槇(まき)文彦氏ら著名な建築家が以前から工費を大幅に抑え、工期を早める提案をしてきました。これを無視し続けた態度がより事態を深刻化させています。
最大の欠陥は、財源のめどが立っていないことです。はっきりしているのは、国費の392億円、スポーツ振興基金の取り崩し分125億円など626億円だけ。下村博文文科相は9日、日本共産党の田村智子参院議員の追及に、「(財源の)積算根拠について、こうなると申し上げられるものはない」と見通しのなさを認めました。ここに見えるのは、無理を承知でゴリ押しする政治の傲慢(ごうまん)さです。
文科省らが現行案にこだわるのは、「メーン競技場を示し、五輪招致を勝ち取った」との理由からです。しかし、国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ副会長は6月末、新国立について「IOCは国民にとって負担にならないか心配している。国民が満足できるものにしてほしい」と語っています。見直しこそ、開催都市の負担軽減をめざすIOCの「五輪アジェンダ2020」の基本精神です。
国民は認めていない
五輪招致に関わった女子マラソン五輪メダリストの有森裕子さんは6日、都内のシンポジウムで「五輪が負の要素に思われるようなことは本望ではない」と涙ながらに訴えました。世論調査(「読売」6日付)で81%が「計画を見直すべきだ」としています。JSCが建設を認めても、決して国民が認めたわけではありません。
日本共産党は、事態打開のため、「計画を抜本的に見直し、建築家の対案や意見を取り入れ、簡素で無駄のない計画に」など五つの提案を行っています。新国立競技場を“負の遺産”としないため、世論とスクラムを組み、計画見直しを強く求めていきます。