主張
社会福祉法人改革
国の責任放棄は許されない
介護、保育、障害者福祉などのサービス事業を非営利で担う社会福祉法人(社福)のあり方を変える社会福祉法等の改定法案の審議が、衆院で始まりました。法案には、新たな無償サービス提供を社福に画一的に行わせることや障害者施設職員の退職金制度の改悪などが盛り込まれています。多くの社福はいまも厳しい経営状況に置かれ、職員の労働環境も苛酷です。それをさらに悪化させる法案に現場から不安と批判の声が上がっています。安倍晋三政権は短時間の審議で成立を狙いますが、とうてい許されません。徹底審議で廃案にすることが求められます。
新たな負担と困難強いる
法案の柱の一つは、すべての社会福祉法人に、すでに行っている社会福祉事業に加え、新たな「無料・低額の福祉サービス提供」(地域公益活動など)を行う「積極的努力義務」を求め、その財源には、社福の「余裕財産」をあてることなどを義務づけるというものです。
全国に1万9千以上の社福がありますが、圧倒的多数は新事業を行う人的体制のゆとりや「余裕財産」などありません。にもかかわらず、こんな法案が出されたのは“社福が内部留保をため込んでいる”と一部の例を過大に描いた、政府の規制改革会議やマスメディアなどの大宣伝がきっかけです。
非営利の社福が将来の事業などに備える資金と、営利優先の大企業のため込む「内部留保」とは性格が違います。厚生労働省の調査でも、運転資金を考慮すると約7割の社福が運営困難となっています。そもそも「社福の内部留保」の確定した定義はなく、法案でも算定方式は定まっていません。
経営実態を無視して「余裕があるだろう」と、公的支援も一切せず新たな無償サービス実施を一律に迫ることは、多くの社福をさらなる経営難に追い込むものです。社福が疲弊することで被害を受けるのは利用者と住民です。あまりにも乱暴なやり方です。
社福に義務づける「地域公益活動」の内容自体が問題です。事業対象として生活困窮者や介護保険の要支援者などをあげています。本来、政府・自治体が公的責任で支援しなければならない人たちです。公的な社会保障制度の拡充によって支えるべき人たちを、社会保障削減路線で切り捨てておいて、社福による「慈善事業」に肩代わりさせようというのです。社会保障・福祉にたいする国の責任放棄にほかなりません。
障害者施設職員の退職金積立制度の公的助成廃止は、勤続年数が短いうえ低賃金の職員の老後の安心を奪うものです。福祉現場の労働環境の劣悪化に拍車をかけることは、やめるべきです。
生活・権利の保障こそ
多くの社会福祉法人は「制度にないものは自分たちでつくる」として地域要求をつかみ、自主的・先駆的に事業や施設を立ち上げ、運動の力で行政を動かし制度の新設・拡充をかちとってきました。
今回の法案は、そのような社福の役割を大きく変質させ、地域住民が願う制度づくりや拡充をすすめる道を阻むものです。
国の責任を投げ捨てる法改悪を許さず、憲法25条にもとづき国の責任で国民の生活と権利が保障される社会福祉制度へ充実・発展させることが必要です。