主張

16年度概算要求

暮らし破壊の加速は許されぬ

 安倍晋三内閣が、来年度(2016年度)の予算編成の基本的な方針となる概算要求基準を、閣議で了解しました。「社会保障拡充のため」といって消費税率8%増税を強行して3度目の予算編成だというのに、打ち出された方針は、社会保障費の削減をいっそう加速させるものです。この方針に沿って各省庁は8月末までに財務省に概算要求する作業に入り、年末に予算案決定の予定ですが、国民の願いに逆行する予算づくりを推進することは許されません。

国民の苦難は眼中になく

 12年末に政権に復帰した安倍内閣は、3年連続で社会保障費の抑制と削減を行ってきました。今回の概算要求基準は、その削減幅のさらなる拡大を迫るものです。新たなタガは、16年度予算での社会保障費の伸びは6700億円までしか認めないというものです。概算要求時点で8300億円の伸びまでは認めていた15年度予算編成より、さらにきびしくなります。昨年より1600億円もの削り込みを求めるやり方自体が、「社会保障費削減、先にありき」の乱暴な姿勢を示すものです。

 社会保障費の伸びを前年度より減額したのは、景気回復で生活保護利用者が減るためなどと政府は説明します。雇用破壊・低年金など貧困を拡大させる政策を推進しておいて、なぜ生活困窮者が減少するのか、説得力がありません。

 日本の社会保障費は、高齢者人口増や医療技術の進歩などにより、年1兆円程度の「自然増」があるといわれています。それを無理やり抑え込むことは、社会保障の基盤を揺るがし、国民の健康や命を脅かすことにしかなりません。

 かつて小泉純一郎政権の「年間2200億円社会保障費削減」方針は、「医療崩壊」「介護難民」などの深刻な事態を引き起こし、国民のきびしい批判を受けました。安倍政権が狙っているのは、ひとまず引っ込めざるをえなかった「社会保障一律削減」路線の事実上の復活・強化です。

 実際、過去3回の予算編成では、毎年約1兆円とされる社会保障費自然増分を概算要求段階から抑え、査定でさらに削減して最終的に年5000億円増にまで抑え込みました。その結果、生活保護予算の過去最大規模のカット、年金支給額引き下げ、介護報酬大規模削減、医療・介護の相次ぐ負担増など暮らしの安心と安全を揺るがす制度改悪が次々と行われ、国民は耐えがたい痛みに苦しんでいます。

 閣議了解された概算要求基準は、過去3年間に国民に痛みをもたらした社会保障改悪を「改革等の効果」とほめちぎり、さらに「合理化・効率化に最大限取り組」むと削減路線を少なくとも18年度まで継続すると明記しました。国民の暮らしなど眼中になく、いっそうの犠牲を強いる安倍政権の異常さを浮き彫りにしています。

安倍政治からの転換こそ

 16年度予算では医療の診療報酬改定が大きな焦点です。15年度に強行した介護報酬大規模削減のようなやり方が行われれば、再び「医療崩壊」を招きかねません。

 軍事費を3年連続で増加させる一方、「歳出削減」といえば真っ先に社会保障を狙い撃ちにする安倍政権の姿勢は、根本的に間違っています。憲法25条にもとづき、国民の生存権と社会保障増進に責任をもつ政治への転換が必要です。