主張

戦争法案国会審議

「合憲」論は完全に崩れ去った

 安倍晋三政権は、参院で審議中の戦争法案について、来週中の成立を強行しようと狙っています。しかし、3カ月余りの国会審議などを通じて明白になったのは、戦争法案が紛れもない憲法違反の法案だということです。安倍政権が国会でどんなに多数の議席を握っていたとしても、違憲の法案を成立させることは、およそ立憲主義の国では許されないことです。

憲法原則から重大な逸脱

 戦争法案については、圧倒的多数の憲法学者や弁護士、元内閣法制局長官ら、法律の専門家が憲法違反だと断じています。

 最近では、「憲法の番人」である最高裁判所のトップ(長官)を務めた山口繁氏が「集団的自衛権の行使を認める立法は、違憲と言わねばならない」(「朝日」3日付)と語り、戦争法案を「違憲」と指摘しました。

 8日の参院安保法制特別委員会での参考人質疑でも、元内閣法制局長官の大森政輔氏が、昨年7月に安倍政権が強行した「閣議決定」で集団的自衛権の行使を容認したことについて「超えることができない憲法則とも言うべき基本原則からの重大な逸脱」であるとし、「無効と解すべきだ」と厳しく批判しました。

 安倍政権は砂川事件最高裁判決(1959年)を根拠に戦争法案は「合憲」だと主張しています。しかし、同判決について山口元最高裁長官は「集団的自衛権の行使なんてまったく問題になっていない」とし、「(政府の主張は)非常におかしな話だ」と批判しました(同前)。大森元内閣法制局長官も8日の参考人質疑で「全くの暴論だ」と強調しました。

 戦争法案をめぐる「合憲か、違憲か」の論争は既に決着がついています。

 戦争法案に基づく米軍など他国軍隊に対する兵站(へいたん)の違憲性も一層明らかになりました。

 大森氏は参考人質疑で、戦争法案によって新たに認められる「戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油」について、他国軍隊の武力行使と一体化し、「違憲」との認識を示しました。

 安倍政権は、現行の「周辺事態法」で「発進準備中の航空機への給油」は行わないとしている理由について「(米軍の)実際のニーズがない」ためであり、「武力行使と一体化するから除外したということではない」と説明しています。ところが、大森氏は同法の作成時、「(内閣法制局の担当者は)『典型的な一体化事例だから認められない』と何度も何度も言い続けた」が、これに反対する外務省の強い主張によって「表面上ニーズがないということにして収めた」のが「真相」だったと明かしました。安倍政権が虚偽の説明を行っていることは極めて重大です。

内閣法制局は「任務懈怠」

 大森氏は、昨年7月の「閣議決定」を是正しなかった現内閣法制局について「任務の懈怠(けたい)」と異例の批判を行いました。山口元最高裁長官も「(内閣法制局の現状は)非常に遺憾な事態」だと嘆き、「時の政権の意見や目先の利害にとらわれた憲法解釈をしてはいけない」(同前)と忠告しています。それは、安倍政権が、これまで積み上げられてきた政府の憲法解釈をいかに乱暴にねじまげているかを示すものです。戦争法案は廃案にする以外にないことは明白です。