主張

大震災から4年半

国は被災者の現実に向き合え

 台風がもたらした豪雨など自然災害の被害が広がるなか、東日本大震災から4年半を迎えました。被災地ではいまも約20万人が避難生活を強いられ、復興はまだまだ道半ばです。多くの被災者は、住まいや仕事をはじめ多くの問題を抱え、先の見通しがたたず不安といらだちを募らせています。安倍晋三政権が5年の「集中復興期間」を延長しない方針であることに、被災自治体からは懸念と批判が上がっています。国は、被災者の置かれている現実に正面から向き合い、苦難を取り除くため、心の通う支援を強めるべきです。

住まい再建の支援を急ぎ

 被災者の生活の安定にとって不可欠な住まいの再建は依然として立ち遅れたままです。自治体が整備する災害公営住宅への入居はすすみません。建設予定戸数が希望に見合っていないため、「何度も応募しているのに入れない」との訴えが相次いでいます。建設予定約2万9000戸にたいし完成した災害公営住宅は4割弱程度にとどまっています。

 用地確保・整備の遅れや建設にたずさわる人手不足などがなかなか解消されないためです。建設資材の高騰や人件費の高さなどは、自宅の自力再建をめざす被災者にも大きな障害となっています。

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」が、東京など都市部での大型開発ラッシュを引き起こしていることのしわ寄せもあります。建設にたずさわる必要な人的資源が被災地で優先的に確保できるよう、国が手だてを講じるべきです。

 2年程度の使用しか想定していない応急仮設住宅の老朽化は深刻です。カビの発生などで被災者の健康まで脅かされています。改修・補修は急務です。仮設住宅からの転居が次第に始まるなか、引っ越した人も仮設に残された人も、地域とのつながりがうすれ、孤立することが問題になっています。

 長引く避難によるストレスなどで健康を壊す被災者が安心して医療にかかれるように、医療・介護の減免制度を国の制度として復活させることが重要になっています。

 津波や地震のなかでせっかく助かった命が、自殺や孤立死など「震災関連死」で失われるようなことが絶対にあってはなりません。公的なサポート体制を後退させるのではなく充実こそ必要です。

 安倍政権が「集中復興期間」を今年度で終え、事業縮小や地元自治体の一部負担を求めていることは、被災地の現実からも被災者の願いからも、かけ離れた姿勢です。被害が大きい自治体ほど負担が膨らむ危険があります。甚大な被害を受けた自治体から「はしごを外すのか」との声が上がっています。

 被災地は時間がたてばたつほど、新たな問題が生まれ、被災者に困難をもたらします。5年たったからと機械的に支援を打ち切ることは復興の妨げにしかなりません。支援を必要とする人と地域がある限り、最後まで国が責任をもつことこそ求められます。

「災害大国」が試される

 東京電力福島原発事故の賠償など被災者支援の打ち切りや後退などは許されません。国と東電が賠償や除染に責任を負うことが福島の復興の大前提です。

 東日本大震災の復興・支援をはじめ、災害から国民の命と暮らしを守る使命を果たせるかどうか政府の姿勢が問われています。