主張
安倍首相とTPP
国民包囲で参加断念させよう
民主党政権以来大きな問題になっている環太平洋連携協定(TPP)への参加問題について、自公政権を復活させた安倍晋三首相は、選挙公約や国会答弁では「聖域なき関税化を前提にする限り参加しない」とする一方、マスメディアでは「参院選の前に方向性を示していきたい」と発言するなど、参加に含みを残した、不誠実な態度を取り続けています。財界はそうした安倍政権の立場を見透かして、一日も早い参加の決断を迫っています。国民的包囲で、安倍政権に参加を断念させることがますます重要になっています。
「成長戦略」で強まる圧力
安倍政権は、金融緩和や財政出動など「三本の矢」の対策で「強い経済」を実現するとしていますが、そのひとつである「成長戦略」を検討するために設置した「産業競争力会議」では財界代表などからTPP参加の早期決断を求める意見が相次いでいます。安倍首相も、「国益の確保」を大前提としながら、「戦略的経済連携を推進する」方策の検討を指示しました。「成長戦略」で、TPP参加に道が開かれる危険は明らかです。
安倍政権は「聖域なき関税化」は認められないとする一方で、交渉によって農産物などの関税撤廃の例外化が可能なような幻想をふりまいています。しかし、アメリカやオーストラリアなどを含め進んでいるTPP交渉は、関税の撤廃、非関税障壁の撤廃・緩和が原則です。新たに参加する国は無条件で受け入れることが求められます。関税撤廃の例外が実現でき、「国益」が守られるようにいうのはまったくのごまかしです。
政府の試算でも、TPPへの参加が日本農業に壊滅的な打撃を与えることは明らかです。ただでさえ自給率が低い日本農業の破壊は、世界では深刻な飢餓さえ抱える食料問題を、巨大な農業輸出国と食料・農業企業の支配にゆだねることになります。非関税障壁の撤廃・緩和は、医療、労働、金融・保険、建設など多くの分野でアメリカなみの競争ルールが押しつけられます。TPP参加は文字通り国のあり方に関わる大問題です。
だからこそ自民党も総選挙で、例外なき関税撤廃とともに、国民皆保険、食の安全、ISD条項による主権侵害など5項目を挙げて参加反対を公約したのです。TPP参加に道理はありません。
安倍政権は、BSE(牛海綿状脳症)に感染している危険があるとして禁止していた生後21カ月から30カ月の米国産牛肉について2月から輸入を解禁すると決めました。牛肉の輸入拡大はアメリカの中心的な要求のひとつです。日本がTPPに参加すればこうした食の安全を脅かす事態がいっそう深刻になることが懸念されます。
主権を守る国民的共同を
民主党政権のもとでTPP問題が表面化して以来、JAなど農林漁業団体や医師会、消費者団体などが、TPPの危険性を指摘し、幅広い反対運動を発展させました。それが自民党にたいする圧力となっていることは明らかです。
いまこそ、安倍政権にTPP参加表明を断念させるために、より広い国民的運動で包囲することが重要です。TPP参加を阻止し、食料主権・経済主権を保障する貿易ルールを確立させるために、日本共産党は、TPP反対の一点での共同の発展に力を尽くします。