革新懇のシンポから

31304ea0b5134306c31b5c744c13c03d5a41a33a 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から5年を前に、日本共産党の志位和夫委員長は6日、全国革新懇・福島県革新懇のシンポジウムで「原発ゼロへの展望~いま、何が問われているか」と題して報告しました。

 志位氏は冒頭、安倍政権が「オール福島」の声である「県内原発全基廃炉」に背を向け、到底、帰れる状況にないのに避難指示の解除をすすめて賠償すら打ち切ろうとしていると指摘。「福島県民切り捨て政治」を厳しく批判し、すべての被災者が生活と生業(なりわい)を再建できるまで、国と東電が責任を持って支援することを強く求めました。その上で、この政治は「原発固執政治と一体だ」と強調。原発固執政治が二つの深刻な矛盾に直面していることを明らかにしました。

原発に対する国民の認識は大きく変化している   

 第一の矛盾は、国民の認識の発展との矛盾です。志位氏は原発事故の体験を経て、国民の原発に対する認識は大きく変化しているとして三つの角度から解明しました。

 一つは、「原発安全神話」が、国民の間では完全に崩壊したことです。

 志位氏は、関西電力高浜原発に関わって、避難が必要となる事故が起きるおそれが「大いにある」「ある程度ある」との回答が高浜原発の立地する福井県高浜町で50・2%、「周辺地域」で76・9%にのぼったとする調査も示し、「いくら再稼働の既成事実を積み重ねようとも『原発安全神話』は国民の間では通用しない」と強調しました。

 二つ目は、原発が他の技術にない「異質の危険」を持っていることが国民的認識となったことです。

 志位氏は、福井地裁が一昨年5月に関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた判決で、他の技術と異なる原発の「本質的な危険性」が繰り返し強調されていると指摘。実際に福島県の双葉町、大熊町、浪江町などのかなりの部分を含む「帰還困難区域」が発生していることは、「異質の危険」の最も深刻なあらわれだと強調しました。

 三つ目は、日本社会は「原発ゼロ」でもやっていけることが国民的体験を通じて明らかになったことです。

 この5年間で国民は2回の夏と冬で「稼働原発ゼロ」を経験しましたが「電力不足」は起こらず、年間を通じて原発の稼働がなかった2014年度はエネルギー起源のCO2(二酸化炭素)は3・6%減少し、発電コストは「3・5兆円増加する」とした財界シンクタンクの“脅し文句”の7分の1にすぎませんでした。

 これらの事実を示した志位氏は、「全国に広がった『原発ゼロ』『再稼働反対』のたたかいが国民的認識の発展をつくりだしたことに大いに確信を持って、さらにたたかいを発展させよう」と訴えました。

原発技術との矛盾が限界に達している

 第二の矛盾は、原発固執政治と、原発という技術システムとの矛盾が限界に達していることです。

 その一つは、危険極まりない「老朽原発」が常態化することです。

 民主党政権時に原発の運転期間は「原則40年」という方針が打ち出されましたが、安倍政権では40年を超えた高浜原発1、2号機が新規制基準で適合とされました。

 何故、「老朽原発」の再稼働を強行するのか。志位氏は、政府の方針は30年度の発電電力量のうち20~22%を原発で賄うとしているが、30年末には日本に存在する原子炉43基のうち25基が「40年」を超えて廃炉となると指摘。そうなると原発依存度は15%前後となり、新増設が困難である以上、既存原発の運転期間延長に頼らざるを得ない深刻な行き詰まりにあると強調しました。

 もう一つは、より本質的な矛盾―「核のゴミ」=使用済み核燃料の問題です。

 志位氏は、原発を再稼働した場合、計算上わずか6年ですべての原発の貯蔵プールが使用済み核燃料で満杯となり、六ケ所再処理工場の貯蔵プールはすでに満杯であって文字通りあふれ出すことになると指摘。仮に再処理をすればプルトニウムがさらに蓄積され、「高レベル放射性廃棄物」が生成されるが、その処分方法にも見通しがなく、「八方ふさがり」と言うのが原発の現状だと解明し、「原発ゼロの日本」へ決断すべきだと求めました。

被災者への支援と一体に原発ゼロと安倍政権の打倒を

 志位氏は、186回にのぼる首相官邸前の再稼働反対・原発ゼロを求める抗議行動をはじめ、戦後かつてない新しい市民運動がさまざまな分野で豊かに発展するなか、空前の規模で広がった戦争法に反対するたたかいに背中を押されて野党共闘が前進し、日本の政治を変える大きな可能性をつくり出していると力説。「力を合わせ、原発事故の被災者の方々の支援と一体に、原発ゼロの日本をつくろう。安倍政権を打倒し、立憲主義・民主主義を取り戻していこう」と力強く訴えました。