MAAでは現在、新型コロナウイルス感染防止のために対面でのリアルなレクリエーション開催が控えられ、インターネットで配信される企画を視聴したあとにZoomで感想会を行う「ネットレク」が活動の中心となっています。自宅で鑑賞できる多種多様なコンテンツが、美術館や博物館、劇場をはじめ、多くの人が現地に赴くことを前提にしているはずの機関からオンラインで提供されていることは非常にありがたく、視聴することがほんの少しでもそういった機関の運営継続に繋がるのであればという思いもあって、私も楽しみながら参加しています。
今回のレク「芥川賞受賞作感想会」は、2021年上半期の芥川龍之介賞受賞作について感想を語り合うというものでした。
上述したレクの流れで言うと受賞作を読むことが配信コンテンツ視聴にあたり、オンラインではなくオフラインの活動となります。そのため、各自が受賞作を自分のペースで読んでおき、Zoom感想会の部分のみが日時設定されるという、それまでの構成とは少し違う開催形式になりました。
また、MAAが創立されて以来、美術、歴史、科学、音楽、舞台芸術などさまざまな分野に触れてきた中、5年目にして初めて文学がメインテーマになった点にも、ほんのり新しさが感じられます。
しかも、文学の中でも芥川賞といえば純文学。しかもしかも、受賞作発表の7月14日から感想会の9月4日まで1か月半というスケジュール。コロナ禍以前のリアル開催レクで博物館や寄席などを訪れていたころは「大人の遠足みたい」などと暢気に考えていたのが、突然先生から夏休みに読書感想文の宿題を出された小学生の気持ちになりました……(先生いないけど)。
その課題図書、いえ、今回(第165回)の受賞作は、石沢麻依氏の「貝に続く場所にて」と李琴峰氏の「彼岸花が咲く島」の2作品です。
2作同時受賞は珍しいことではありませんが、え、これは、両方読まなきゃダメっていうことでしょうか、先生?
芥川賞については、同時に発表される直木賞とあわせてこちらにわかりやすく紹介されています。発表当日のニュースでは受賞者や選者のコメントなども読むことができ、作品を味わう手掛かりになりました。
そしていよいよ、夏休みが明けて、じゃなくて、レク当日の9月。
感想会は、受賞作それぞれについての感想を順番に話していく形で行われました。なんだか本当に国語の授業みたいで、特に私は思っていることを口頭で簡潔に説明するのが苦手なこともあり、話しているうちに「あれ? 伝えたいのはこれだったっけ」と自分でもわからなくなることがあるので、ちょっと緊張してしまいます。でも、皆さんがお互いの感想に興味をもって耳を傾けていらっしゃる様子がZoomの画面からも感じられてほっとしました。
作者が暗示するものが何かを考察したり、舞台となっている街の景色をネットで見てみたりと、一人ひとりが異なる視点からの読書体験を通して感じたことを共有でき、自分では読み飛ばしていた気づきや発見がたくさんありました。それは、皆さんから新しい栞を受け取り、読み終えた本に改めて挟み込んでいるようで、もう一度そのページをたどってみたいと感じる、豊かで心地よい時間でした。
あ、感想会にあたっては2冊読了している必要はなく、途中まで読んで感じたことを伝えるだけでもまったく問題ありませんでした。ありがとう、先生!
先生といえば、遠足のときに「おうちに帰るまでが遠足ですよ」というのが学校の先生のお約束。これをリアル開催のレクにあてはめてみると、作品に向き合うメインの活動だけでなく、集合場所への道中で目にした木々の葉の色から、感想会で食事を共にしながら乾杯したときのグラスの音、皆さんの感想を思い返しつつ帰る道で見上げた夜空の高さまで、すべてがレクの一部となっていることに気づきます。そう考えると、リアルに集える機会が減ってしまった寂しさはとても大きなものです。
でも、リアル開催だとどうしても場所や日時が限られてしまい、距離やスケジュールの関係で参加しにくい方がいらっしゃることが残念に思われるときもあったので、どこからでも繋がりやすいオンラインの良さを活用し、今回のような開催形式がさらに洗練されていくといいなとも感じています。
この先の状況を読み解くのはまだ難しい状況ですが、本の目次に例えるなら、コロナ禍以前のリアルだった時期が第1章、オンライン中心の今が第2章、というところでしょうか。
次のページをめくるとどんな展開が広がっていくのか、これからの物語が楽しみです。
記:パピルス