ども!ギンです。
今回は、『サイレントヒルf(エフ)』の小説版を読んだ感想をお届けします。

まずは原作ゲームについて軽くご紹介。

『サイレントヒルf』は、2025年9月に発売されたサバイバルホラーゲームで、『サイレントヒル』シリーズの最新作にして初の和ホラー作品です。

舞台は1960年代の日本、架空の田舎町「戎ヶ丘(えびすがおか)」。
主人公は、心に傷を抱えた少女・深水雛子(しみずひなこ)。
彼女が、静かで美しいはずの町で次第に広がっていく異変と向き合いながら、自分自身と向き合っていく――そんなお話です。

脚本は『ひぐらしのなく頃に』でおなじみの竜騎士07氏。精神世界の描写や社会的メッセージを絡めるセンスはさすがの一言で、全体を通して「美しさの中に潜む恐怖」が強く印象に残る作品でした。竜騎士さん最高でした……!


■ 小説版は「トゥルーエンド」を軸に再構成された“もうひとつの物語”

で、今回読んだ小説版はというと、ゲーム本編のいわゆる「トゥルーエンド」をベースに再構成された内容になっています。

とはいえ単なるノベライズではなく、他のルートやチャプターのセリフや文書、情景も丁寧に織り込まれており、“作品のエッセンスをぎゅぎゅっと凝縮したようなオリジナルの物語”という印象。

文章も1960年代の日本を舞台にしてるだけあってか、古き日本っぽさが香るどこか風雅な雰囲気。言葉の選び方からして独特で、文字を追ってるだけなのに空気がじっとり重く湿ってくるような、そんな読書体験ができました。ここも素敵だなぁと気に入った点です。

さらに描写も非常に丁寧で、文章を追うだけでゲームの映像が最初から最後までそのまま脳内再生されちゃう!ファンとしてはニヤリとできる嬉しい体験ができる小説作品でした。


■ 小説版を読んだ率直な感想

正直に言えば、ゲームで全エンディングを見ていて、自分なりに考察もしていた私のようなタイプには、小説版で得られる「新しい情報」はそこまで多くなかったです。

でも、それが悪いってわけではなくて。 むしろ「公式としての解釈・正史を言語化したもの」として読むことで、自分の中の考察が整理されたり、「あの解釈でよかったんだな」と確認できたりする。そういう意味では、非常に意義のある一冊でした。

逆に、ゲームを軽く一周しただけの人や、実況動画だけで追った人にとっては、小説版はめちゃくちゃ頼りになると思います。物語全体の流れをつかむガイドとしても、世界観にどっぷり浸る手段としても、かなり優秀です。


■ ゲーム版で感じた衝撃と共感

実を言うと、ゲーム版『サイレントヒルf』そのものが、私の中で2025年にプレイした中でもシナリオ部門では圧倒的トップティアに位置するお気に入り作品になってます。

何が良いって「周回プレイするたびに物語の印象がガラッと変わる」ところ!

1回目では見えなかった事実、別のルートでしか分からない人物の本音、ちょっとした台詞のニュアンスの違い…そういう細かな変化がプレイヤーの視点を大きく揺さぶってくるんです。
プレイヤーの解釈によって登場人物たちの「正しさ」や「悪意」が周回するごとにぐらぐらと揺れ動くシナリオ構造に、度肝を抜かれました。

プレイするたびに手に入るメモやノートの内容が変わるので、ただの繰り返しにはならず、常に「新しい物語」を読んでいるような感覚になるんですよね。

初見じゃわからなかった事実があとから浮かび上がって作品全体への見方がどんどん変わるこの構造、ほんとクセになる。

スルメのように噛めば噛むほど味が出るゲームでした。


■ トラウマを刺激してくるのに、なぜかセラピーにもなる作品

でね。この作品、私が何よりも衝撃を受けたのはここです。
ホラーゲームとしての怖さももちろんあるんだけど、それ以上に「人間の内面や社会問題の闇をここまで容赦なくリアルに炙り出してくる作品」なのが最高に面白い!好き!

登場人物たちの言動や背景があまりに生々しくて、読んでいて(プレイしていて)胸糞悪くなることが多々あるんですけど。けれどその「気持ち悪さ」や「ざわざわ感」こそが、作品の本質的な魅力のひとつだと私は思っています。

言ってしまえばこれは、“トラウマ刺激型セラピー”のような作品なんだと思うんです。

登場人物たちはそれぞれ、何かしらの痛み・葛藤・矛盾・依存・嫉妬・喪失を抱えていて、それが物語の中で徐々に明らかになっていきます。
でもその描き方が絶妙で、キャラクターのことなのに、気がつけば自分の中にも似たような感情や記憶があったことを思い出させられる。

こっちの中にある感情や記憶、トラウマが次々と刺激されちゃうんですよ。

昭和の家長制度、役割文化、ジェンダー、毒親、いじめ、スピリチュアル、土着信仰、田舎あるある、そして人間都合で変えられていく風習や常識の数々…。
本ッ当ーにいろんな人の共感とトラウマを刺激しまくる配置!もはや笑えるレベルで全方位に刺しに行ってるんだよなぁ。

不快になるのは、共鳴してしまうからな訳で。

で、そうしてプレイヤー自身の心の中にある言葉にできなかったモヤモヤや痛み、自分の中にあったけど蓋をして直視してこなかった感情とかを、物語というかたちで引きずり出されて“追体験”させられる。
そうして未消化だった自分の感情を無理矢理味わわされることになったり、「あのときのあれって、実はこう思ってたんだな」っていう自己理解への気づきが生まれたり。

だから、プレイヤーによってどのキャラクターに感情移入するかもおそらく全然違う。
性別や年齢、人生経験によって、「理解できる」「共感できる」「許せない」人物がバラバラだと思うんだよなこの作品。

しかもそれが、安全なフィクションという枠の中で起こるから、どこか冷静に見つめられるのもいいところで。

キャラクターを通して感情が揺さぶられる=自分の内面を知る、考え方のクセを知る、自己理解へとつながるということ。
そういう意味では、『サイレントヒルf』ってめっちゃ優秀な“感情の鏡”だと思いました。

だからこそ、私はこの作品にこんなにも刺さったんだろうな、と思います。
ただ怖いとか、感動したとか、システムの出来が良いとか、どういう話だったのかを考察して明らかにしたいとか、それだけじゃなくて――

読後・プレイ後に、自分の心の中が少しだけ整理されたような気がした。
1周目は確かに胸糞でしかなかったはずなのに、全エンディングを見たらなぜか爽やかな気分が残ったというゲーム体験。(決して物語的にはスッキリ解決しているわけではないのにね!)

そんな不思議な後味を残してくれる、稀有な作品でした。


■ まとめ:この作品、しんどい。でも好き。

『サイレントヒルf』は、ただのホラーじゃない。 トラウマ系、内面掘り下げ系、感情を揺さぶってくるタイプの物語が好きな人にはぶっ刺さると思います。

しかも、プレイヤーによって感情移入するキャラが全然違うし、同じエンディングでも「グッド」に見える人と「バッド」と感じる人がいる。そういう余白の多さも魅力のひとつ。

なんかもう、「作品がプレイヤーを選ぶ」んじゃなくて、「プレイヤーの内面が作品に映し出される」感じ。正直、しんどい。何度も感情がざわついた。 でもだからこそ、ここまで深く刺さったんだと思う。

この作品と出会えてよかったです。
いやーこの作品題材で語りたいこと、まだまだいっぱいあるわ!

ここまで読んでくれてありがとう。

では!