一人芝居『屋久島の女』上演台本 作・演出:末満健一
■登場人物
梅
エリザベート
串刺し公
下男フィッコ
方士
村人たち
島の男たち
語り部
舞台中央に語り部が佇んでいる。
語り部Ⅿ「波の音。風の音。波の音。風の音。波の音。風の音。波の音、土の匂い。風の音、木々の騒めき。波の音、雨の予感。土の匂い。雨の匂い。風の匂い。海の匂い。意識を広げていく。見上げると群青色の空、足元には灰色の雲が見える。地上に向かって意識が下降する。分厚い雲を潜り抜けて意識は下界を見渡すことができる。海が見える。網膜が青く染まる。小さな島が見える。海に囲まれたその島は深い森に覆われていて、木々はまるで黒のような緑を携えている。島の上空を鳥が飛んでいる。白い鳥。毛並みもなにも分からない、ただ輪郭だけを持った白い鳥が飛んでいる。輪郭の鳥たちはどんどんと数を増していく。鳥たちは島の中央を目指している。大きな千年杉の袂
執筆集
一人芝居『屋久島の女』上演台本
2025/12/09(火) 22:32