ゲーム妖怪ジーコの、創作小説とかブロマガとか。
眼前に広がる暗夜のように、掴みどころのない不吉な何かが、私の心を押さえつけていた。
それは焦燥か、それとも疑心か。いずれにせよ不快なことに変わりはなかったが、それが足を止める理由にはならなかった。こんな時、星明りの空をなんの不自由もなく飛べたなら、少しは気が紛れるのだろうか。しかし私に、そんな翼はあるはずもない。
ならば、地を這うようにしてでも突き進むしかない。そこに道がなくとも、何が立ち塞がろうとも。『不落』の名にはそれが求められる。まったくもって、はた迷惑なことだ。
そんな些細な心の乱れに、全身を覆う各種術式が揺らぎを見せた。身体強化、装備軽量化、防風障壁までならともかく、一歩ごとに疾風を纏わせる移動術式は姿勢維持に神経を使う。こんな夜中に制御の甘い高速移動体が転倒でもしようものなら、その周辺にどのような地形変化を起こすか予測できたものではない。その後始末の面倒を思えば、今は少しの不満など飲み込んでおくに限る。
そう自分に言い聞かせながら、背後に浮かべた照明魔法球が照らす前方眼下へと意識を戻す。自らを切り取るように映し出された影は、全身鎧の意匠と長耳、その上の巻角、そして、今ひた走る街道の凹凸によって、捻くれた蛾虫がのたうち回っているように見えた。
北へと延びるこの古い街道は、平原を抜け、月光すらも遮る森林地帯へと潜り込んでいく。ところどころ石畳が剥がれ、補修の跡もまばらながら道としての役割を果たすそれは、帝国と北方ハーピィ自治領を繋ぐ数少ない動脈の一つだ。少なくとも、以前まではそうだった。
ほうぼうの勢力圏にことごとく暴威を振るった魔族の大侵略──降魔戦役を経た今、この街道もまた存在する意味を失い、過去の名残として横たわるのみとなっている。かつては、ここを幾多の隊商と使節が北を目指したというが、もはや人の行き交う気配すら絶えて久しい。あるとすれば、辺境警備隊が義務的に巡回している程度のものだ。
だが今この瞬間で言えば、北方古遺跡群へと向かう合同調査各隊が、足並みも揃わぬままこの街道を頼りに進路を取っていることだろう。帝国聖騎士団の看板を背負わされた私としては、彼等に気付かれぬよう、そして彼等に先んじて、そしらぬ顔を装って現地へと辿り着きたい。
やがて街道が大きく右へと弧を描きだしたところで、足を止めた。ほんの少しの息の乱れを整えながら、視線を左、木々の密度が一気に増す斜面へと向ける。道は外れるが、だが進路としては直線に近い。闇夜の森にあってその方角を示す道標は、その先の空にあった。
──雷雲。
北方古遺跡群の上空に居座り続ける、異形の雲。
この記事の続きを読む
ポイントで購入して読む
※ご購入後のキャンセルはできません。 支払い時期と提供時期はこちら
- ログインしてください
購入に関するご注意
- ニコニコの動作環境を満たした端末でご視聴ください。
- ニコニコチャンネル利用規約に同意の上ご購入ください。