この試合、橋川正人はそもそもイライラしていた。甲子園のマウンドが柔らかすぎて、なかなか足に馴染まなかったからだ。それでコントロールを失い、ストライクを取ることに苦労していた。

ところが、そこで岡田が負傷退場になった。これは橋川に微妙な心理の変化を及ぼした。それは「自分がリードしなければならない」という責任感だ。

岡本は急造のキャッチャーである。キャッチングは確かに上手かったが、しかしリードなどほとんど、いや全くといっていいほどしたことがない。

そうなるともう、自分がリードしなければならない。これまでは岡田に任せきりだったが、ここからはそこの部分も自分が担わなければならなかった。

しかしそのことで、橋川は逆に開き直った。マウンドで踏ん張るのをやめ、七分の力で投げるようにした。その代わり、コントロールを重視した。緩い球で打たれてもいいから、フォアボールだけは出すまいとするようになったの