岐路に立つアメリカ資本主義:今、米国が直面する3つの課題(WSJ)
アメリカ特有の資本主義は、幾世代にもわたり、技術革新、生活水準の向上、そして莫大な富を生み出してきた。しかし、今日の資本主義は、制度、専門知識、そしてエリート層に対する広範な不信感、深刻な二極化政治、そして企業と政府の適切なバランスについての合意の欠如といった特徴を抱えている。
アメリカ資本主義は岐路に立たされている。
一方の道は歴史的な好機へと続く。この道を選ぶには、人工知能やクリーンテクノロジーといった革新技術を継続的に発見し活用し、生産性を向上させ、広く共有される繁栄を実現することで、アメリカンドリームへの信頼を回復する必要がある
。もう一方の道は、経済的勝者と敗者の間の格差の拡大によって穴だらけになり、第二次世界大戦後数十年にわたりアメリカが推進してきた製品、資本、人材、そしてアイデアのグローバルな流れを阻害するためにアメリカ自身が築いている壁によって狭められている。
アメリカ国民は、イノベーション、グローバル化、そして競争の力に対して、ますます不安と懐疑的な見方を表明している。多くの人々は、過去の数十年の記憶や、所得分布の上位層、そして自らの願望と比較して、十分な所得、富、機会の増加を経験しておらず、また、子どもたちにもそれを期待していない。
この岐路に立つアメリカ資本主義は、3つの問いに直面している。これらの問いへの答えは、未来の世代の生活を形作るだろう。①アメリカはより多くの人々に経済的機会をもたらすことができるのか、それとも、並外れた成功を収めた人々と苦境に立たされた人々の間の格差は拡大し続けるのか。⓶アメリカは世界との間に壁を築き続けるのか、それとも新たな橋を架けるのか。そして、③アメリカは競争による創造的破壊と政府による規制という安全柵との間で適切なバランスを取ることができるのか、それともどちらかに偏りすぎてしまうのか。
再分配か、それとも成長か?
過去半世紀にわたり、アメリカの経済規模は緩やかに拡大してきた。インフレ調整後のアメリカの一般世帯の年間所得は、年率1%未満の伸びにとどまっている。2025年の平均的な男性のフルタイム賃金労働者の週給(1,325ドル)は、インフレ調整後で1979年の同職者の週給とほぼ同額である。一方で、才能 に対する経済的報酬は劇的に増加しており、これがアメリカの経済規模における分配の不均衡が拡大した一因となっている。大学卒業者が高校卒業者よりも享受する所得プレミアムは、過去50年間で30%から55%に拡大した。上位1%の世帯が保有する富の割合は、1989年の22.8%から2024年には30.8%に上昇した。ディズニーパーク、空港の保安検査場、ソーシャルメディア、そして子供たちの遠征スポーツチームなど、アメリカの中流階級の人々は、お金で買える様々な特典に常に直面している。
こうした状況は、あまりにも多くの人々にとって機会の減少を意味します。
ハーバード大学のオポチュニティ・インサイトによると、1945年生まれの子どもの約90%は30歳時点で親世代よりも高い収入を得ていましたが、1985年生まれの子どもでは約50%にとどまっている。
アメリカンドリームへの信頼が薄れつつある現状を、私たちはどのように克服できるか?
一つのアプローチとしては、今日のダイナミックな市場原理を不変のものとして受け入れ、富裕層への課税を強化して、より広く繁栄を分かち合うこと。
こうした考えが、純資産が10億ドルを超える住民に5%の一時的な課税を課すというカリフォルニア州の住民投票案や、純資産が5000万ドルを超える世帯に年間2%、10億ドルを超える世帯に年間6%の税金を課すというエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)の提案の背景にある。
この見解は、普遍的ベーシックインカム(UBI)の多くの支持者の根拠。彼らは、AIが牽引する未来の労働市場では、家族を養い、衣食住を賄うのに十分な賃金が得られる仕事は生まれないと考えている。OpenAIのサム・アルトマン氏は、「テクノロジーが従来の仕事を奪い続け、莫大な新たな富が生み出されるにつれ、将来、何らかの形でUBIが国家規模で導入されるだろうと確信している」と述べている。
別の道。生産性成長のペースを加速させ、次世代の機会を増やす政策。
この道を選ぶには、国は基礎知識の創造に、そして何よりも国民のスキル向上に、より多くの投資を行う必要があります。それは、幼児期から見習い制度、高等教育、そしてあらゆるキャリア段階における再訓練に至るまで、あらゆる段階での投資です。
米国政府が研究開発への投資を増やすことで、生産性の向上と経済成長の促進に。しかし、1963年には米国の国内総生産(GDP)の2.8%だった連邦政府の研究開発支出は、2023年にはわずか0.6%。
例えば、現在米国には5歳以下の子供が約2500万人います。一人ひとりに4000ドル相当の質の高い幼児教育プログラムを提供するには、年間1000億ドルが必要となります。これは莫大な金額ですが、研究によると、子供たちの潜在能力への投資は、私的にも社会的にも計り知れない利益をもたらす。例えば、ノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・ヘックマン氏や他の研究者による研究では、ノースカロライナ州における幼児期介入の便益は費用の7倍にも上ると結論。
壁か、それとも橋か?
私たちは、米国が80年間主導してきた開かれたグローバル経済秩序に対する保護主義的な反発の時代に生きている。現政権は、関税、移民制限、そしてグローバル化へのその他の障壁によって、この秩序を置き換えようとしている。これは、1930年代以来、世界が目にしたことのない規模のもの。
こうした事態が起きているのは、トランプ氏が、貿易とグローバル化に対するアメリカ国民の深い複雑な感情を的確に捉え、選挙で当選、そして再選を果たしたから。一方では、多くのアメリカ人が貿易は脅威よりも機会であると考えている。他方では、貿易がアメリカの労働者や地域社会に及ぼす圧力についても、多くのアメリカ人が懸念。こうした懸念は、確かな学術研究によって裏付け。
孫崎享のつぶやき
WSJ[岐路に立つアメリカ資本主義、米資本主義は幾世代も技術革新、生活水準の向上、莫大な富を産出。今日の資本主義は、制度、専門知識、エリート層に対する広範な不信感、深刻な二極化政治、企業と政府の適切なバランス合意の欠如といった特徴を抱えている。
新着記事
- WSJ[岐路に立つアメリカ資本主義、米資本主義は幾世代も技術革新、生活水準の向上、莫大な富を産出。今日の資本主義は、制度、専門知識、エリート層に対する広範な不信感、深刻な二極化政治、企業と政府の適切なバランス合意の欠如といった特徴を抱えている。 8時間前
- 新研究によると、自然の中で過ごす時間は、身体への愛着、自己肯定感、人生全体の満足度を高める可能性(WP)。ネガティブな思考や苦痛な思考を鎮める効果。助言① スマートフォンをしまおう⓶自然との一体は量より質、マインドフルネス(今この瞬間に意識)自然の効果を観察 1日前
- 独が国連安保理非常任理事国選挙で敗北。西欧その他グループ枠(2議席):オーストリア(131票)、ポルトガル(134票)が当選。独は104票で落選。独は過去6回非常任理事国、国連分担金負担で日本に次ぐ4位。、イスラエル支援姿勢への批判。グローバルサウスと中ロ影響力拡大。 2日前
- 下院は水曜日、トランプ大統領のイランにおける軍事作戦を抑制する決議案を可決 この採決は象徴的な意味合い、決議案は共和党多数の上院を通過する必要あり、通過したとしてもトランプは拒否権を行使可。議会承認なしに戦争が長引きガソリン価格高騰→共和党内で不安拡大。 3日前
- 140億ドル規模の台湾への武器売却は、トランプ大統領の対中政策における試金石、1979年台湾関係法は、米国が台湾への武器売却を規定。台湾支援の行方は不透明。イランとの戦争で大量の武器を使用。トランプは今後台湾への武器売却交渉を習近平と直接行うと表明 4日前
民主主義の、「ルール」「人権」「平等」「自由」などをどのように位置づけるかによって見方が異なってくる。
現在のトランプ氏が志向している政策は民主主義の「ルール」「人権」「平等」が破壊される方向にあり、中国、ロシア、イラン、北朝鮮など権威主義国と同じような方向性を垣間見る。
問題は、今後はAI・ロボットとの共同社会であり、「利益」の視点が強くなれば「底辺の人間」は役に立たないとみられ切り捨てられていくと恐ろしいことになる。
ことは米国に限らない。非民主主義国も同じでしょう。
>>1追伸
コスト競争力で後れを取ってきた日本が、「AI・ロボット時代」「均一品質確保の熟練技術」による「未来工場」において中国との競争力がほとんどなくなってきているようだ。
YAHOOニュースによると、「中國優位の終焉。日本の自動車部品産業最大の60%「生産性向上」中国とのコスト差が急接近」
半導体も歩留まりが悪ければコストが高くなる。熟練技術がコストに大きく影響する。日本が飛躍する時代の足音が聞こえるようだ
民主主義という看板を掲げた米国の権力は各種の資本集団によるたらいまわしに必然的にならざるを得ません。そうして確定したのが4年ごとの選挙です。当然、ポピュリズム金権選挙です。このような体制では長期的な戦略を立てることは出来ません。
中国は共産党独裁ですから、権力は中国と世界の今後20年間の推移を見据えて計画を立てて実践できます。
将来計画なき米国と長期計画の中国の競争でどちらが有利か問うまでもありません。
因みに、日本は過去に於いて官僚制度があったので官僚が長期展望を作り政治家が実施するという理想的なシステムを持っていたが、安倍晋三がその官僚制度を破壊したので、日本の政権は米国以上に腐ってしまっています。アジアにおいて経済列島国に陥落するのは間違いありません。
>>2
ま、夢を見るのは自由ですからね。中国はAI,ロボットでは世界で既にナンバーワンです。
>>1
非民主主義。意味不明。
中国は市場経済の拡大を長期計画に入れてます。上海を筆頭に沿海州の市場経済は花盛りです。
ロシアは選挙してます。ロシア人はコーザ・ノストラ(ロシア共同体)が保障され、満足してます。
イラン、5000年かけて育んだ民族文化を維持発展させ、共同社会を誇りにして驀進してます。
北朝鮮は原子爆弾を保有したことによって韓米の侵略を阻止することに成功しました。これから、この国は民生向上に取り組むことになってます。中国をお手本にするでしょう。
以上のようにそれぞれ将来を見据えて頑張ってます。単に権威主義国としてひとくくりにするのは間違いです。
>岐路に立つアメリカ資本主義
これは岐路に立つ”西側“と言い換えてもよいだろう。
経済面では、西側は株主資本主義或いは金融資本主義は腐敗にまみれた実相をあらわにしている。それは、日経平均株価が象徴で、外国人投資家によるマネーゲームの草刈り場と化して、先物取引により株価が上がろうが、下がろうが、いくらでも儲ける手法が確立している。これを金融工学とかいって、持て囃し、実態経済とは関係ない、バブルをさも、好景気!みたいに粉飾する光景は日常になってしまった。
株価が好景気のバロメーターではなくなって久しい。イラン戦争下の石油危機の最中、6月3日のに日経平均株価は最高値 68,786円、年初来高値=史上最高値だったと言う。今後数ヶ月で世界恐慌か?という状況にしては、異様な株価であった。必ず儲けるのは莫大な資金力を持つ機関投資家とか、ヘッジファンドだろう。一握りの“大金持ち”だけが丸儲けするシステムだ。
なけなしの身銭を切って、貯蓄から投資だのNISAだのに踊らされた庶民は、ババを掴まされる運命にある。中間層は、低賃金の外国人移民等にとって代わられ、没落し、階層の二極化が進む。
イランでの戦争では、トランプ一族も株式取得を介して、軍事産業への投資により大儲けしていると言われている。
要するに、西側の資本主義システムは腐敗している。様々な歪みが複合的に折り重なり、既存の自由民主主義では取り繕えなくなってきたのが、西側の政治状況だろう。
だから、低賃金労働力問題や社会的対立としての外国人移民問題が庶民の不満の種になり、ロシア封じ込めのために湯水のようにウクライナへの軍事支援に税金を投入するEUは勝てない戦争の泥沼にハマっている。戦争による物価高に直面するEUの庶民は、ますますEUの政策に懐疑的になり、結果的にグローバリズムを進めてきたEUから、国民国家への回帰を志向し始めている。それが、AfDやリフォームUKの人気の理由であり、イタリア・メローニ政権の成立だろう。
西側金融資本主義の総本山、アメリカ帝国は、イランによるホルムズ海峡封鎖を誘引し、世界恐慌の引き金を引いた。中東における石油利権を大幅に失いつつあり、まさに墓穴をほった。それは、さらにはペトロダラーの影響力低下につながるだろう。
こうした世界の潮流に逆らうかのように、日本では、多くの人々が、アメリカ帝国を筆頭にした西側資本主義諸国の”ルールによる秩序“が未だに変わらないスタンダードだと錯覚している。
だから、高市の対中国、存立危機事態発言がなんの違和感めなく、巷間に受け入れられ、ウクライナ支援を繰り返し、アメリカ帝国トランプに抱きつくという、ズレズレぶりだ。石油危機やレアアース不足を考えるなら、中露との関係改善はまさに国益にかなう外交そのものだ。アメリカ帝国への忖度により、逆に日本をアメリカ帝国に売り渡すかの高市外交は、戦後最悪というべき悪政だ。
コメント
コメントを書く