多くのMMAファイターをマネジメントするシュウ・ヒラタ氏が北米MMAシーンを縦横無尽に語りまくるコーナー!今回は15000字でお送りします!(聞き手/ジャン斉藤)
――UFCマカオで朝倉海選手がUFC初勝利を収めました!
シュウ 朝倉選手がスカ勝ちして、みんなが見たかった海選手の姿が見えましたし、あと鶴屋玲選手も1年半ぶりの復帰戦で勝ちました。彼の表情を見たときに久しぶりの試合で緊張してたのかはわからないけど、勝手に心配しちゃって。「大丈夫かな」と思ったけど、しっかり勝ってくれてよかったですね。朝倉選手もすごくプレッシャーや重圧があったと思うんですよね。ここで負けたら……って話になりますよ。
――リリースされなくても浮上の目はないでしょうねぇ。
シュウ 海選手が勝ったことでファンの方々がすごく興奮するのはわかるんですけども、一番下の選手に勝ったにすぎないんですよ。あの試合の後、すぐにリリースされてましたし。そんな過度な期待は寄せずに、次の試合はランカー戦じゃなくても全然いいでしょう。下からしっかり上がっていくマッチメイクを望むべきだと思います。海選手はスター選手でいいギャラをもらってますけど、こういったマッチメイクもしてくれるのもある意味、実力のひとつでもありますからね。
――スモザーマンはフィーダーショーでは勝っているけど、UFCとの契約は運がよかったところもありますね。
シュウ 風間敏臣選手がUFCで一本勝ちしたハラランボス・グリゴリオウ選手はもともとセラ・ロンゴにいて、井上直樹選手と練習したことがあるし、UFCでスモザーマン選手にKO勝ちしてるんです。だから実力は測れていたし、本来であればUFCには入れない選手ですね。
――だからといって楽に勝てるわけじゃないのがUFCの難しいところですよね。
シュウ やっぱりある程度はできますからね。
――いまコメントにありましたけども、朝倉海選手がUFCではフライ級に下げて試合をしたことはどう思いました?結果的に2連敗しちゃいましたけど……。
シュウ いやあ、だってタイトルマッチのオファーだったんでしょ。フライ級に落とせるんだったら、やっぱり受けない手はないじゃないですか。
――即タイトルマッチだったら受けちゃいますよね(笑)。
シュウ プロモーターにとっても大金を払うってことは投資の意味もありますからね。海選手を期待しての大型契約だし、いきなりタイトルマッチってことですよね。そこで負けちゃったわけですけど、2戦目(ティム・エリオット戦)に関しては、技術や試合展開から見たほうがいいと思いますよ。
――適正云々の負け方ではないと?
シュウ 自分に合った適正階級だからといって、寝技のレベルが向上するわけじゃないでしょ。バンタム級でも寝技にどう対応するの?という話になってきますよね。
――仮にバンタム級からのスタートだったとしても、おそらく即ランカー戦だったから、それはそれで過酷な現実を突きつけられたかもしれないし、何が正解かわからないですよね。
シュウ だから意外とフライ級で戦ってみてよかったんじゃないですか。タイトル挑戦も経験できて、バンタムのほうがいいと確信が持てたわけですし、負けることによって学ぶことも多い。重圧を体験できたことは自分の自信にも繋がると思うんで。ただ、勝つことが一番大事ですけど、今回は欲をいえば1ラウンド4分50秒ぐらいで勝ってほしかった気持ちもありますよね。やっぱりケージの中で戦う経験を積んだほうが絶対にいいと思うから。
――バンタムの手応えをもうちょっと味わいたかったということですね(笑)。
シュウ でも、UFCでそんな贅沢なことは言ってられないからね。これで海選手のハイライトリールってやつができたってことですよ。朝倉海選手の煽りVにはこの試合のフィニッシュ映像がガンガン使われますし。本当の勝負は次の試合だと思いますよ。
――海選手本人は8月の上海大会に出たいと希望を出してますね。相手はランカーではなくて、ニアランカーぐらいですかね。
シュウ UFCキャリア1~2試合目ぐらいの相手でいいんじゃないですか?希望をいえばそんなにガチガチのレスリングタイプじゃなくて、打撃系からきた、または殴り合うのが好き、とか得意な選手だと海選手は戦いやすいですね。
――最近のUFCの傾向として、よほどの大物じゃないと選手の意向は通らないというか、選手の扱いが怖くて。今回の鶴屋玲選手の相手だったアギラーはケガで欠場したんですけど、そのままリリースされちゃって……。
シュウ もともとリリース候補だったんでしょうけど、ケガでアウトだからってリリースするのはちょっと厳しいですよねぇ。
――ダナ・ホワイト・コンテンダーズ・シリーズ前だから人員整理をしてますよね。バンタム5勝1敗の選手がカットされたり……。
シュウ 昔をたどれば、じつは岡見勇信選手がそういうかたちでリリースされましたよね。ランキング6位だったのにいきなりリリースされましたし。
――独禁法訴訟が始まってから、契約満了まで待つようになりましたけど、最近はリリースする傾向にまた戻ってきてますね。
シュウ まあ海選手の希望はわかるし、U-NEXTさんの視聴者数も凄かったし、そう考えると上海のほうがいいのかなと思うんですけど。UFCはそのへんを気にしないで北米の大会に当ててくるかもしれないですからね。UFCって「この選手がいればアジアだからチケット売れる」とか「視聴数が増える」なんてことを意外と気にしてない面があるんですよ。前回のマカオ大会だって、あっという間に売り切れたじゃないですか。
――だからなのかムサエフの第2戦は地元のアゼルバイジャン大会ではなくセルビア大会なんですよね。まあ前戦のダメージが長引いてるところもあるんでしょうけど。
シュウ たとえば中国大会や日本大会をやるんだったら、その国の選手と契約することはあるにせよ、勝ち上がっていくと、やっぱり北米の大会で起用するほうが多くなっちゃうんですよね。だから平良選手もアジアの大会にはほとんど出てないじゃないですか。
――平良達郎でいえば、人気者モレノとの試合を上海でやるわけにはいかないですし……。
シュウ 今回のマカオはRTUも合わせてやりましたけど、日本人のRTU1回戦は4勝7敗でしたっけ?
――4人勝ち上がりですね。初日は1勝4敗だったから「どうなっちゃうんだろう?」って不安だったんですけど。
シュウ RTUも国別で見れば一番勝ったのは日本でしょ?
――そもそも日本人は11人も出てますからね。日本ってこれだけ選手がRTUに出ていても、RIZINやDEEPに選手が控えてるじゃないですか。
シュウ いまのRTUはオーストラリアやニュージーランドから選手を入れてもタレントが集まりにくいってことだと思いますよ。よく考えていただきたいんですけど、たとえばニュージーランドやオーストラリアでMMAイベントはいくつあるんですか?ってことです。
――目立ったイベントはあまり聞いたことないですね。
シュウ あるにはあるけど選手が育ちにくい。しかもニュージーランドは離れたところにあるから、プロモーターからすれば飛行機代をかけてまで選手を呼びづらい。物理的に考えると、じつはハワイも同じでハイレベルな選手を呼べる環境でもない。マレーシアやタイのMMA大会もフィーダーショーが確立されてないんですよね。
――そういう意味でいうと日本はメジャー団体からフィーダーショーまで揃ってるわけですね。
シュウ 選手層はまだまだ厚いってことですね。これは前から言ってますけど、RTUはUFCではないってことです。RTUに出たことで満足してる選手はもうちょっと気を引き締めてもらいたいです。RTUはあくまでUFCのオーディション。「この場所しか戻ってきたくない」という偏った考えはせずに、どこでもいいからガンガン試合して白星を上げていけば、またチャンスがあるかもしれない。今回のマカオ大会に出たジョゼ・エンリケ選手は以前、DWCSで木下憂朔選手に負けてるんですよ。そのあと5試合やってるんですけど、そのうちの1つはボクシング。それでも勝ち星を重ねた結果、UFCと契約できたんです。日本人選手もそのやり方を見習ったほうがいいと思うんですよね。
――RTUだけに拘るんじゃなくても、アクティブに動いたほうがいいってことですね。
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