
山本アーセン12000字インタビュー!(聞き手/松下ミワ)
――RIZIN広島大会後、ヒロヤ選手の打撃でカットした部分を少し縫ったそうですね。
山本 そう、右目の下を5針縫いました。
――試合後、ドクターに「先端恐怖症だから縫いたくない」とおっしゃってたのがちょっと意外でした。
山本 注射とかがキライで。子供のときのトラウマかわからないんですけど、尖ったものがキライなんですよねえ。でも、結局、縫いました。痛くないように麻酔薬を塗って、それから麻酔の注射を打って縫いました。
――2段階の麻酔(笑)。試合も凄くよかったですけど、なんと人生初の2連勝だそうで。
山本 前までは1勝したら「これでやっとまた2連勝できるチャンスが来た!」と思って、それが叶わず……の繰り返しだったんですけど、今回はそんなことも忘れていて。気づいたら勝手に2連勝になってたから、これからも「連勝したい」とかじゃなく、ただ勝てばいいよなって。
――これまでは意識しすぎてたってことですか?
山本 いま思えばそうだったと思うんです。でも(佐藤)将光さんが日頃から「楽しんで」みたいな感じでアドバイスしてくれて。やっぱ試合だけそれを出そうとしても絶対人間って出ないと思うんですよ。日常から頑張って「減量つらい、けど楽しい」とか、すべての瞬間を楽しもうとしてたら試合でも凄くリラックスできましたね。
――試合後「じつは、この試合は負けたくない気持ちがめちゃくちゃ強かった」と言われてましたけど。
山本 もちろん、どの試合も負けたくないんですよ。同じぐらい負けたくないけど、今回は試合後に初めて試合前に公開されていたRIZIN CONFESSIONSを観たんですよ。事前にKB(KRAZY BEE)vs JTTみたいなのも入れながら組み立てるという話を聞いてたから、そりゃ負けられねえし、負けねえし、みたいに思ってて。試合後に動画を見たらその煽りがめっちゃガッツリで。だから「よかったー!」と思って。
――アーセン選手としては、やっぱりKBを軽く見られるのは我慢ならないですか。
山本 もちろん。だって自分のチームですよ? 日の丸バカにされてるみたいなもんですよ? 絶対イヤじゃないですか。
――その発端は朝倉未来vs矢地祐介戦でしたが、あの頃からイライラくるものもあったんですかね?
山本 そんなのフリーの選手以外は、どこかしらに所属していて、チームvsチームだからあたりまえだし、俺は「KBのがカッケー」と思ってるから。だけど、ストーリー的にあの対戦がスタートになっちゃったから、それはもう勝ちにするしかないよねって。でも、一時期はKBが一番の有名なチームで、そのあとにJTTがデカくなりはじめて。自分たちが負けて、どんどんパワー吸い取られてたんですよね。
――ああ、そういう感覚だったんですね。
山本 みんなが「このチーム、めっちゃカッケー」というのが変わった瞬間だったんですよ。わかりやすく言えば。
――若い人が憧れるチームみたいな?
山本 そうそう。やっぱスター選手を出してない自分たちにも問題があるけど、向こうがバンと上がってきて、KBの選手たちが試合に負けて。こうパワーが吸い取られてたのが、いまやっと逆になったという。
――逆襲の始まりですか。
山本 だから、逆にKBがよみがえってくれてよかったなって。いま、うちの選手たちもヤバイのいっぱいいるから。あとはタイミングとチャンスだけだから。またチャンスひとつで自分たちに波が来るのかなって。じつは、昨日も一緒に練習してる仲間がちょうどJTTの選手と対戦してて。一応勝ってますから。
――試合内容でいうと、今回印象的だったのが、解説の高阪剛さんが、アーセン選手に対して「やっとMMAになってきた」と言われていた部分で。
山本 それ、めっちゃうれしかったんですよ。TKさんに褒められるのって、自分にとってはカリスマだし。でも、本当に練習でやってる動きをやっとちょっとずつ出せれるようになってきたのかなぐらいです。

――いままではレスリングとMMAが噛み合ってないという感覚があったんですか?
山本 どっちかにこだわってたんじゃないですかね。テイクダウンのときはテイクダウン一択、打撃のときは打撃一択で、MMAができてなかったんで。普段の練習ではできてるんですよ。……まあ、みんなそうか。みんな練習ではうまくできてるけど試合では出せない、自分もそのひとくくりの中にいたんですけど、今回初めて4分の1ぐらい、スパーの日に出してるような動きを出せたなって。本当は「相手の脳ミソと遊ぶ」みたいなのが自分のスタイルなんですよ。普段の練習ではけっこうトリッキーなほうなんで。
――「相手の脳ミソと遊ぶ」って凄い言葉ですね。今回それができたきっかけは?
山本 やっぱり、将光さんの言葉ですよね。「アーセンがいまFIGHT BASEでスパーする日あるでしょ? その延長戦だと思ってみ」って。だから上げる必要もないし、下げる必要もない。緊張感を持って自分が楽しむということをテーマにしてやってみなさいと言われて、それを日頃からやってたら試合でちょっと出たかなみたいな。これまでは、0か100だったんでね。
――将光選手とはどのくらいから一緒に練習をはじめたんですか?
山本 聞く話によると将光さんはKILLER BEE時代から行ってたらしいです。でも、めっちゃ仲良くなったのはこの1~2年ですね。
――じゃあ、1~2年の積み重ねがようやく実を結んだということなんですね。
山本 ちょっとずつですね。まだまだです。
――将光選手とフィーリングは合いそうですね(笑)。
山本 そうっすね。やっぱ俺と似たようなヤツが周りにいてもうるさいだけですもん(笑)。そこで“観音様”のような言葉をくれる将光さんがいるんで、凄くバランスが取れるっす。「なるほどな」みたいな。考えさせられるんすよ。
――いま、アーセン選手に必要な言葉を投げかけてくれてるということなんですか?
山本 というよりかは、たぶん自分が勝手に引っ張り出してるだけなんでしょうね。将光さんはいたって普通に話してるんです。普通に話してて、出る言葉、言葉に「たしかに!」みたいな。「なんでいままで気づかなかったんだろう」というのが多いんですよね。
――じゃあ、デビューから10年強で、やっと山本アーセンというMMAファイターが完成しつつあるということなんですかね。
山本 ちょっとずつね。楽しいです。
――ちなみに、いまの練習環境は?
山本 将光さんのFIGHT BASEと、朴(光哲)さんのNO FACEと、KBはKBでいま大森のゴールドジムを借りてやってるんですけど。
――しかし、山本アーセン選手といえばRIZIN旗揚げから参戦されてますし、デビュー戦のクロン・グレイシー戦が本当に華々しかったという印象で。

山本 花火のように散っていきましたけど(苦笑)。でも、誰も体験できないことを体験できたのかなと思いますけどね。
――あのときって、どういう感覚であの場に立っていたんですか?
山本 よく覚えてないですもん。だって、自分の次が(エメリヤーエンコ・)ヒョードルの試合でしたからね。そして、自分の3つ前がボブ・サップの試合で。俺、初めてですよ? 格闘技やるの。なんかよくわかんなかったです。
――楽しいという感覚以上に、わけがわからない。
山本 本当に「俺いいのかな?」と思ってたっす。凄い世界で生きてるなみたいな。みんなちっちゃいときから見てた選手だったんで。
――デビュー戦であのクロンと渡り合ったということで、アーセン選手に対してはかなりファンのハードルが上がったというか。そのおかげで、そのあとはけっこう大変な苦労があったのかな、と。
山本 「自分はもう才能ない」と何回決めつけたことか。
――え、才能ないと思ったんですか?
山本 もう何回も。もう無理だって。でも、やっぱ仲間がね、そう簡単に逃がしてくれないんですよ。感謝。
――それは「まだ続けよう」みたいな声かけがあって?
山本 べつに俺に「続けようよ」とか言ってもなんの意味もない。仲間はそれをわかってるんで、山連れて行かれて「いいよな~。山って」みたいな。「おお、いいな、山って」「ちょっと山走りに行くぞ」みたいな。中村倫也とかがよく俺を連れ出して「山走りに行くぞ」つって。「格闘技、面白いよな?」「う、うん、面白い」なんて言いながら。もう、青春。こういう仲間がいてくれるからいまの自分があるんすよ。
・アマチュアから経験できる羨ましさ
・3年間の長期離脱
・あの動画で弄られたことは…
・山本家は落ち着かない運命
・中学1年で単身ハンガリーへ
・レスリングはしばらく見られなかった
・ノリ(KID)ほど貫禄ある人は見たことない
・ジムはなくても、みんなKRAZY BEEを背負っている……続きは会員ページへ
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