
21勝1敗2分のキャリアを誇り、現在はFIGHTER’S FLOWのコーチを務める鈴木隼人インタビュー。指導活動から現役時代の話を伺った(聞き手/ジャン斉藤)
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・渡辺華奈は「世界」とどうやって戦ってきたのか■上田貴央のコーチ論
――鈴木さんはFIGHTER’S FLOWではどういう役割をされているんですか?
――FIGHTER’S FLOWはキックや他競技からMMAに転向してきた選手が多いですね。
鈴木 そのベースを活かしたままMMAで戦うには、どうしたらいいか?を考えてやってます。キックなら得意な打撃をMMAの打撃に変換しないといけないし、そこにレスリングを組み合わせないといけないですので。
――バックボーンがあると、イチからMMAを覚えてる選手とは違う難しさがあるわけですか?
鈴木 そうですね。だから選手たちは苦労してMMAを学んでいます。キック出身は組まれたら打撃ができないし、そのまま寝かされちゃう……ということが多いので、いかにテイクダウンを防ぎながら打撃もしっかり打てるか。代表の上田(貴央)さんが打ち込みを何回も繰り返させて、ボクが実践的に教える流れができてますね。
――やっぱりキック転向組はテイクダウンの攻防がポイントなんですね。
鈴木 そうですね。ただ、タックルも100%防ぐことに力を注ぐわけではなく、お尻ついた瞬間、背中をつけられて固められる前に動くとか。そのへんの身のこなしを反復練習しています。やっぱりテイクダウンを100%防ぐのは無理なので。タックルを切るというよりは、テイクダウンされた瞬間、何をするか。そのあとが勝負だよと。お尻をついた瞬間、背中がついた瞬間が始まりです。
――テイクダウンされたあとが重要だと。
鈴木 こないだのRIZIN仙台で直樹(vs黒井海成)がテイクダウンをすぐ取られたけど、下からの足の使い方だったり、どういうふうに戦っていくかは練習通りそのまま出せたなと。冨澤(大智)くんに関しても、寝かされてから立つのがうまいので、そこに特化して練習しました。このあいだ相手(加藤瑠偉)は柔道が強いということで投げの対策もしてたんですけど、まあ投げられるだろうなとは思ってて。寝かされたら勝負。そこから何もできないと、打撃しかできない選手になっちゃうんで。
――FIGHTER’S FLOWはストライカーが多いから、そこがキモだと。
鈴木 FIGHTER’S FLOWは渡辺華奈、泉武志、渋谷カズキが始まりで、どっちかっていったら組みメインだったんですよ。最近になって移籍組やキック組が増えていったんですけど、「あっちは打撃したい」「こっちは寝かしたい」ということで、ちょっといい感じになってますね。
鈴木 そうですね。ひとつひとつに輝きや強さを持ってる選手の集まりになって、ちょうど噛み合っていい練習ができていると思います。FIGHTER’S FLOWってピラミッド式になってて、ボクが見てるプロ練習がAチームだとしたら、その下にBチームというか、育成組、アマチュア組があって。転向組はいきなりAチームからはやらせないです。まずは打ち込みを延々とやります。たとえば「三角の逃げ」「エスケープ」「極め方」「力の使い方」「立ち方」……そのへんの基本が身についてから育成組に入って……という段階がありますね。いきなり一番上のプロ練習に入っても、ついていけなくなっちゃうんで。プロ練でやったことをボクや上田さんがあらためてパーソナルで見ることが多いです。
――マンツーマンでチェックするわけですね。
鈴木 そうです。パーソナルでやったことをプロ練習で試して、ダメだったらパーソナルでまたやって……という繰り返しですね。
――そうやってちょっとずつレベルを上げていくと。
鈴木 あと渡辺華奈でも、一般のクラスに出て会員さんと一緒にやったりしてますね。
――えっ!
鈴木 そこでバチバチやっつけるわけじゃなくて、会員さんに教えてあげたりしながら、そこで自分の技を試したり。
――教えることによって習得できることもあるんでしょうね。
鈴木 他ののプロ選手も、ボクの一般クラスに出てます。一般クラスはプロ練よりもちょっと言葉を細かく崩して、初心者の方にもわかりやすいように教えてるので。基本をあらためて学べるところもありますね。ジョリーくんとか普通に一般クラスに出てるんで、一般会員がびっくりしますよ(笑)。
鈴木 そこまでしてイチからやりたいっていう意識があるからこそ、気にしないっていうことですよね。プロ練って、やって・やられて技を覚えていくところがあると思うんですけど。一般クラスは教えながらやっていくっていうスタンスですし。
――鈴木さんのキャリアは21勝1敗。レスリングベースですけど、バックチョークの一本勝ちが9回。ONEでは3連続バックチョークで勝利してます。
鈴木 やっぱり格闘技は一本勝ち、KO勝ちがゴールじゃないですか。そのゴールに向かって逆算して動いていくのがボクのスタイルでした。現役時代はテイクダウンからパスをして、バックチョークという流れでずっとやってたんですけど、もともとは三角絞めや下からの腕十字とか、いろいろ選択肢があったんですね。でも、途中からバックチョークだけに絞りました。そこに至るまでにも、マウントからパウンドアウトとか、ゴールは枝別れしてるんですけど。あんまりパターンを用意すると迷ってしまったり、判断が遅れたりして中途半端になってしまうことがあるんで。
鈴木 でも、練習ではいろいろな技や動きをやってます。引き出しがたくさんある中で、試合のときは自分の一番自信のあるもので戦っていただけで。いま教える際も、たとえばパンチでKOしたいんだったら、そのためにはストレートをどう当てにいくのか。フェイントやコンビネーションをシチュエーションに応じて練習していますね。
――渡辺華奈選手がベラトールで戦っている最中、レスリングのタックルを習得したんですが、それもかなり時間がかかったんですよね。
鈴木 渡辺華奈の場合はもともと柔道のクセじゃないですけど、身につけたものがあるので。柔道の投げができるから、レスリングのテイクダウンはそこまで重点的に置いてなかったみたいです。でも、世界と戦っていくとなったときには、タックルを覚えたいということで教え始めて。最初の構えから始まって、頭やヒザの位置はどこか。あとタックル入る姿勢と打撃の姿勢をミックスさせていきました。
――もともと柔道のスタイルがある中で修正していくのは、大変な作業ですね……。
鈴木 ボクは柔道をやったことないから詳しくはわかんないですけど、どっちかっていったら、前に押し出すというよりは引っ張って投げるイメージですよね。そこは柔道を捨てるわけではなく、柔道の中でレスリングのタックルに入れるようにしました。
――なるほど。レスリングを覚えるんじゃなくて柔道ベースのレスリングですね。
鈴木 たとえば投げようとして相手が踏ん張ったところにタックルに入ったり。パンチから組むと見せかけて下のタックルに入ったり。練習で何パターンもやっていくうえで合うものもあれば、なんかしっくりきてないものもある。そこは試行錯誤を繰り返しましたね。どの試合かは忘れちゃったんですけど、試合開始と同時にきれいなタックルが決まるまでになって。ボクは頭でっかちに「これ、やれ」「絶対こうしよう」「これがいいから!」って指導はしないですよ。ボクの知っている知識を選手に渡していると思ってて。選ぶのは選手です。
鈴木 そのやり方もわかるんですが、押し付けるだけだと試合中の判断が磨けなくなっちゃうのが良くないなと。試合中はセコンドより自分の判断が一番早い。自分で動かなきゃいけないときに押し付けられた作戦に固執しちゃうのはよくないです。
――セコンドの指示だとワンテンポ遅れることがあるし、試合前の立てた戦術も変えざるをえない場合もあるわけですね。
鈴木 そうなんです。選手があんまり自信がなかったり、「あの動きを試合でやれ」と伝えていても、できないこともあるんで。
――選手に任せるといってもフォローはするから、そこは共同作業になるわけですね。
鈴木 共同作業ですね。試合が決まれば「どんなふうに戦うか」を話し合いしながら、試合までしっかりと磨いていきます。
――FIGHTER’S FLOWは選手がかなり増えましたよね。拠点も2つに増えて。
鈴木 なんでかわからないですけど。和気あいあい的な楽しさもあるし、本気度もあるし。仲間に対してちょっと熱い気持ちを持ってる選手が多いんですよね。ボクがプロ選手を見てますけど、ボク自身に監督的なオーラがなくて(笑)。「もっとやれよ!」というよりは、「みんなで頑張ろうぜ!」というノリ。トップが怖いからついていくというよりは、みんなで頑張る雰囲気ですね。
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