
北米MMAを知り尽くした男・水垣偉弥がここ最近のMMAシーンを語りまくります(聞き手/ジャン斉藤)
――水垣さんは現役中にスランプというか、思ったより動けないと悩んだ時期はあったんですか?
水垣 UFCとACBを挟んで4連敗したときは「いきなりパンチもらっちゃう。なんで?」と。いま振り返っても原因はわからないですよね。そこは打たれ弱さもあるのかもしれないですけど、「なんでこんなパンチをもらうの?」みたいな感じでダウンしちゃうんですよ。
――なんでそんな質問をしたかといえば、パッチー・ミックスが急激に動きが悪くなったので……
水垣 パッチーはUFCの初戦でマリオ・バティスタにサンドバッグにされちゃいましたけど。ああいう負け方をしちゃうと、穴が見えちゃったところもありますね。
――RIZINでは秋元強真にKO負けして、ますますドツボにハマるという……。
水垣 ちょっと調子が悪いときに、若くて反射神経めっちゃいい相手はイヤでしょうねぇ。そこでも負けちゃって、いよいよ崩れていった感じがしますけどね。
――今回も、佐藤将光選手の打撃で棒立ちになるシーンがあったじゃないですか。
水垣 そうなんですよね。カーフも効いてましたし、やっぱりバティスタ戦の負け方から攻略法が明らかになっちゃったので、みんなその穴に付け込んでいる気はしますよね。
――昔からそういうケースってよくありますよね。無双してた選手が負けた瞬間、ピラニアのごとく群がって食い尽くすという……。
水垣 パッチーは、ある程度のビッグネームじゃないですか。実力的にそれなりの相手と戦うから、どんどん崩れやすいのかもしれないですね。
――チューンナップファイトができない。軽い相手と調整ができないということですよね。
――トニー・ファーガソンなんか典型的ですけど、上のクラスで名前があると下の選手とマッチアップしづらいから、連敗が止まらなくなっちゃうんでしょうね。
水垣 あ、ファーガソンもそうでしたよね。逆にいうと、ジム・ミラーぐらいだと、まだ下の選手とやらせてもらえるのでサバイブしやすい。相撲でいうと横綱はもう番付から落ちないぶん、負けられない難しいポジション。そういう扱いに近いですよね。
――パッチーも1ラウンドはバックチョークを極めかけて、さすがの動きでしたけど、そのあとは……。

水垣 実際は計量失敗してるから調整もあんまりうまくいってなかったところもあると思います。ちょっと疲れて動きが止まって蹴られて……みたいな。3ラウンドはテイクダウンを奪ってポジションキープしましたけど、2ラウンドは体力的な部分からあえて捨てたと思うんですよね。
――ああ、なるほど。ベラトールの堀口恭司戦の戦術と同じだ。
水垣 1ラウンドで極められなかったら、そういう作戦だったのかなと。ただ、計量オーバーでレッドカードの減点をもらってるから、それだと判定負けになっちゃうから「どうなのかな」と思ったんですけど。
――視聴者からコメントで「激闘型なら衰えはわかるが、グラップラーのパッチーが急に衰える現象ってなんだろう」。たしかに日本の格闘家で40代でもやってるのは組み主体のスタイルが多いですね。
水垣 組めば戦えると思うんですけど、組みに行くまでの打撃に反応できなくてやられてるじゃないですか。そのスタイルの弱さが出ちゃってるの感じですかね。
――パッチーがトップだったのは3年前。彼のスタイルも分析されて、MMAのレベルも上がってる。時代に追いつける武器を増やせなかった。
水垣 それもあると思いますね。あとはモチベーション的なものも……。やっぱりUFCクビになって、どういう気持ちで格闘技と向き合っているのかなと。
――コメント欄に「パッチーが衰えたのはドーピングのせいじゃないか」ってあるんですけども、ドーピングのせいなら、抜き打ち検査のないRIZINで元気になってるはずなんですよ(笑)。
水垣 もしドーピングをやってたとしたら、できるわけですもんね(笑)。ただ、パッチーはやってる感じはないですよね。
水垣 ボクもサウナで減量していたら、相手の選手がやってきて「キャッチウェイトにしてくれないか」って誘われたんですよ。「コイツ、キツイんだな」と思って「絶対にイヤだよ」って追い返したんです。そうしたら30分後ぐらいに、そいつは「体重が落ちた!」とサウナから出ていって、ボクはそこから2時間半ぐらい残ってたんですけど(笑)。
――誘ってきたほうが先にクリアした(笑)。
水垣 キツイのはボクのほうなのに、30分ちょっとの水抜きもイヤで、キャッチウェイトを交渉してくる。外国人はそんな感覚なんですよ。「余裕で落ちるのにそんな交渉しちゃうの?」みたいな。
――しかし、2時間半サウナですか……。
水垣 それはロシアのサウナだったんですけど、かなり熱くて鼻を火傷しましたからね(苦笑)。
――ケイタがキャッチウェイトを懇願するやつですね。まだ規定時間まで90分もあるのに(笑)。
水垣 あの動画を見て、いろいろと思い出しました(笑)。
――あのときのピットブルは結局キャッチウェイトを拒否しましたけど、やっぱり相手の態度ですよね。リカバリー食片手に「見逃してくれよ」と頼まれても「ふざけんな」ってなりますよ(笑)。計量トラブルって相手陣営の態度が原因じゃないかなと。
水垣 ホントそうです。今回パッチーも公開計量のときにベルトを巻くポーズをしちゃうから余計に反感を買ったと思うんですよね。
――佐藤将光選手は受けたけど、2.8キロオーバーであんな態度を取られたらバカバカしいですよね。
水垣 吉田善行さんがUFCでアンソニー・ジョンソンに計量オーバーされたじゃないですか。
――6ポンド(約2.7キロ)オーバーですね。
水垣 あのときは家族とかを呼んでて、試合を流したくない事情があってキャッチウェイトで受けたんですけど、負けてしまって。次の試合も負けたことでUFCをリリースされてしまったんですよね。それ以降はキャッチウェイトでも試合を受けないって決めたんですよ。それでタイタンファイトのときに2ポンドオーバーでも断ってるんですよね。
――主催者が条件を含めて譲歩したけど、吉田さんは受け入れなかったんですよね。ONEで海人選手がグレゴリアンの400グラムオーバーでもキャッチウェイトを拒否したじゃないですか。よっぽどグレゴリアンの態度が悪かったんだろうなと。議論になってますけど、水垣さんはキャッチウェイト派、それともノーコンテストルール派?
水垣 ボクはずっとキャッチウェイトのところにいたんで、やるならやるで「負けてもノーコンテストでしょ」みたいな状況で試合したくない。それだと自分自身が燃えないというか、やる気が出ないです。これは完全に個人的な好みですけど。
――仮にジムの選手がそういう状況に置かれたらどうします?
水垣 いやあ、それまた別だなあ……。他人事だと変わってきますねぇ。
――難しいですよね。仮に何キロオーバーしているかにもよるじゃないですか。2.8キロはキャッチウェイトでもやりたくないですよ。
・選手に命令できる環境
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