2014年は4K元年となりそうだ。ソニーが米国で昨年から開始した『Video Unlimited 4K』は140作品を突破。米配信大手『NextFlix』も4K配信を今年開始する。セットトップボックス(STB)が一般的な米国では、4Kが急速に拡大している。
日本は衛星放送で7月に試験放送予定
一方、無料視聴の地上波が長らく王様と呼ばれた日本では、4Kの主役はあくまで“放送”。総務省主催の検討会を母体とした『次世代放送推進フォーラム』(NexTV-F)が設立。世界で最も早いタイミングとなる今年7月の4K試験放送開始を目指す、放送や電機、通信各局合計21社による業界推進団体だ。
現在のロードマップでは今年中に4Kの試験放送、2016年のリオ五輪には8K放送、2020年東京五輪には8K本放送のスタートを目指している。
今年7月の4K試験放送開始の目標となるのは、現在『スカパー!』が放送を提供中の124/128度CS衛星による放送を想定。地上デジタルの4倍の情報量をもつ4K放送の帯域の伝送経路としてCS衛星を利用する。そのため、4K放送の視聴には対応するパラボラアンテナとSTBの導入が必要となる。もちろん、撮影機材や放送用機材の研究開発も同時進行し、技術的な課題をクリアーする必要もある。
放送機材やコーデック、4K STBも開発途上
4K放送の撮影から、家庭のテレビに届くまでに必要な要素を順に整理していこう。
まず、4K放送は地デジ放送の4倍の解像度と2倍のコマ数となる秒間60コマ(3840×2160ドット/60p)で、専用の収録用カメラが必須。4Kカメラはソニー『PMW-F55』、キヤノン『CINEMA EOS』など、映画用のカメラが4K放送でも試験的に用いられる。
地上波より帯域に余裕のあるCS放送でも、4K伝送には高効率の圧縮コーデックが必須だ。4K映像を効率的に圧縮する方法として、4K放送では“H.265/HEVC”の採用を決定。ビットレートは試験放送では家庭用アンテナ受信の上限にあたる約35Mbpsを想定しているが、実放送ではBSの中継器1本に3チャンネルを配信できる約25Mbpsがターゲットになる。現時点のHEVCエンコーダーはリアルタイムかつ高画質処理が難しいが、あと数年で開発がだいぶ進むだろう。
もちろん、4K放送を受信できるSTBも必須だ。『ひかりTV』は光回線で4K HEVC対応のSTBの試作機を展示。J-COMもKDDIと共同で4Kや8Kの伝送実験を進めており、今年夏には4K試験放送を予定している。
それでは、今すぐ4Kテレビを買ってもいいだろうか。答えは、2013年秋以降の日本メーカー製4Kテレビなら「イエス」だ。
4K/60p対応のHDMI2.0、著作権保護技術HDCP2.2の規格が策定されたことで、4Kテレビと受信用4K STBとの接続性が確保されている。なお、PC用の4KディスプレーはHDCP2.2未対応のため、4K放送視聴は難しい。4K放送の本格化はまだ先だが、先行投資する価値はあると考える。
■関連サイト
次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)
週刊アスキー2/18-25合併号(2月4日発売)の特集『4Kガジェット完全攻略』では、今回ご紹介した4K放送の今後の話のほか、ビデオカメラにPC用液晶ディスプレー、テレビ、4K解像度におけるPCゲームの対応などを詳しく掲載しております。ご興味がある方はぜひ!