<ダイエットを脅かす店達1(プレゴプレゴ)>
ダイエットメニューの写真が余りにもフォトジェニックでないので(セヴンのサラダチキンとゆで卵の白身。等々)、ここ最近、物を喰っていないぐらいのインスタグラム(擬似)になっていたが、どんなストイックさも、必ず悪魔の囁きに身を委ねる時が来る。日本語では「魔が差す」という。私はこの言葉が大変好きだ。特に「差す」の部分である。
もう結構前になるが、ラジオで「新宿キクチシュラン」という企画をやって、いくつかの行きつけを紹介した。この番組のみならず今まで何度メディアで紹介したか解らない「プレゴ・プレゴ」は、富博氏が料理長に就任し、石黒元店長は、勇退して店内勤務だが隠居の身と成った。
とはいえこの二人がガチンコのヤンキー上がりである事は、昔からのご贔屓筋には承知の事であろう。つまり彼等は、とうとうフリッタータや尾の身の煮込みを我慢出来なくなった私に対して、開口一番「菊地さんお久しぶりです」ではなく「ええー!入れたんすかカッチョ良いー。オーラがあるなあその柄」というものであった。彼等ですら和彫り世代である。
写真は暖かい&柔らかいフリッタータ(オムレツ)、パートフィローに包んだ、春巻き風のフロマージュテット(古谷アナとのコントに出て来た料理)、秋刀魚のペペロンチーノ、尾の身とじゃがいもの煮込み、デザートにイタリア式のプリンである。ヴェネト州の土着品種の白が総ての皿をまとめてくれる。
ただ、これで三日間はダイエット食すら半分に落とさないといけない。喜悦と苦渋に引き裂かれ、結局表面には苦渋ばかりが出てしまっている私の写真から、魔が差すという素晴らしい言葉の深み、刺青がイタリア料理に似合わない事、の二点を味わって頂きたい。うんざりするほど面倒くさいが、念のために書かなければいけない。この日は新しい妻と二人で出掛けた。