全国的に書店軒数が減少しているなかで、昨今では、地方だけでなく首都圏の書店の閉店も急加速しています。そして、とりわけ駅ナカや駅前立地においては、人件費と賃料によって書店経営が圧迫され、その結果閉店となってしまう例が多数見受けられる現状があります。
本来は書店が成り立つはずの人口が多いエリアである駅にも関わらず、閉店となってしまうと人々の書店ニーズを満たすことができなくなってしまいます。さらには、人々の生活動線上から本とのリアルなタッチポイントがなくなることによって、読書習慣が失われてしまうことにもつながります。
この状況に対して、現代の人々のライフスタイルに合った本との新たな出会いを提供し、人々のニーズを満たす書店の新たな形として、完全無人書店がオープン。そして、 “完全無人”かつ“ライトユーザーにもやさしい店舗設計”の書店モデルとしての開発に挑戦しています。
まず、空間づくりのプロフェッショナルである丹青社を開発パートナーに迎え、持続可能な新しい書店モデルを構築。将来的には、人件費の高騰や後継者不足といった、書店が抱える課題に対するソリューションのひとつとして提案し、書店経営の持続性向上に貢献していくことを目指しています。
これまで、リアルイベント開催や本以外の商品との組み合わせなど書店経営の生き残り作戦をいろいろと取り上げてきました。それらとはまったく逆となる、何かを「足す」施策ではなく、「引く」施策としての完全無人化。
LINEミニアプリによるデジタル会員証が入店と退店時のカギとなっていて、会員ごとに入退店を管理することで、完全非対面でのセキュリティ管理を実現しています。また、入店ハードルを最低限にするために、ニックネーム登録のみでの会員証発行を可能としています。
ライブカメラはセキュリティのためだけでなく、個人を判別できないように変換したうえで、来店者の動線などをAIにより可視化・分析。来店者による店内行動のデータをもとにしたインストアマーケティングを行い、さらに会員管理を行うLINEを通じてのコミュニケーションも加えて、よりニーズのあるキャンペーン企画、商品告知など、店舗づくりに反映するというのもポイントです。
同じ文章を読むにしても、「本を手に取って読むとき、書かれている内容を記憶するのと同時に、ページのどの位置に、どんな内容が書かれていたか、ページの肌触りや紙の質といった無数の情報を無意識に五感で受け取っている」ことを指摘されています(※1)。リアル書店での本との出会いと、紙の本の読書体験を持続可能にしようという新たな取り組みがありました。
・※出典元:「紙の本なくならない」ページめくる動作にカギ(産経新聞)