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『ヲタクに恋は難しい』最新巻、読了。
第一巻が100万部を突破したという大ヒットコミックスの続刊です。
いや、100万部て。この漫画不況の時代にとんでもない売れ行きですね。
それでは、その成果に値するほど面白いのかというと――これが、そうでもない。
まあ、普通? 普通よりは上かな? それくらいの漫画だと思います。
もちろん悪くはないのだけれど、天才の閃きを感じさせるとか、そういうことは一切ない。ごくありふれたラブコメ漫画。
それにもかかわらず、この作品が圧倒的人気を博しているのは、ひとえに時代を捉えるセンスが傑出していたからではないかと。
いい方を少々下品な方向に変えるなら変えるなら「時代と寝た」一作といっていいでしょう。
どういうことか?
この漫画は既存のオタク漫画、たとえば『げんしけん』とかとは決定的に違う作品だと思うのですね。
『げんしけん』とか『こみっくパーティー』といった漫画が、なるべくディープなオタクの生態を描こうとしていたのに対し、この『ヲタクに恋は難しい』が描いているのは、どこまでも「ライトオタク」なのです。
あるいは作者の能力の限界からたまたまそういうことになったのかもしれないけれど、あくまでもライトなオタクの世界を描いている。
取り上げられるネタのひとつひとつもオタク的にはごく「薄い」ものばかりで、そういう意味では面白くない。
でも、これが現代のオタク漫画としては「正しい」と思うのですね。そうそう、これでいいんだよね、と。
じっさい、話の内容も、お前は有川浩か!といいたくなるようなベタ甘さなので、『ヲタクに恋は難しい』というタイトルもほんとうは正確じゃない。
このタイトルは一種の反語であって、『(ライト)ヲタクに恋は易しい』が正しいと思う。
しかも、男性はどこまでも格好良く、女性はどこまでも可愛く、可憐に描写されている美男美女漫画でもあるので、既存のオタク漫画が好きな人は「こんな奴らいねーよ」と思うかもしれません。
でも、おそらく、いるのです。あの「リア充オタク」という造語で話題になった(ていうか炎上した)『新・オタク経済』で語られたような人たちは、多数派ではないかもしれないけれど、たぶんそれなりに数がいるんですよ。
いままでオタク文化とされてきたカルチャーはそこまですそ野が広がっているということ。
それは旧来のオタクからすればいたって「薄い」「凡人」に過ぎないかもしれません。
でもねー、たかが趣味に「濃さ」なんてものを必須として求めるほうがどうかしているとぼくは思うのです。
いま、若年層でいっさいアニメや動画を見たことがない、ゲームをしたことがないという人は、むしろ少数派なんじゃないかな?
ということは、若年層の大半は、程度の差はあれどこかしら「オタク」であるのです。
『ヲタクに恋は難しい』は、そういう時代をみごとに捕まえた一作といっていいでしょう。これはこれで素晴らしい。
いや、ほんと、つくづく思うけれど、こういう漫画が出る、しかも100万部とか売れてしまうご時世なんだよなあ。時代は変わりにけり。
でも、
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