超情報化社会におけるサバイバル術   「いいひと」戦略

 いま、ビジネス書などの棚を眺めていると、「パーソナルブランディング」だとか「セルフブランディング」、「SNSブランディング」などという言葉を見つけることができます。横文字だからすぐには意味がわからないけれど、つまりは「ネットを通して自分の価値を確立すること」というほどの意味だと思います。

 岡田斗司夫さんが『「いいひと」計画』という本を出していますが、このもある種のパーソナルブランディング本ですね。常に「いいひと」として振る舞うことによって利益を得る戦略と受け取っていいでしょう。ぼくたちはいま、単に人生を生きるだけではなく、それを演出し、包装し、ブランド化して売らなければならない時代に差しかかっているのかもしれません。

 ところで、最近読み終えた菅付雅信『はじめての編集』はとてもおもしろい本でした。そのなかでこう書かれています。

 では、情報が氾濫し、生き方が可視化されたこの時代に、クリエイティヴな人はどうすれば評価されるのか。評価される人生を送るしかない、と先ほどお話しましたが、それはつまり「人生の作品化」です。
 ネット上で生き様が見られている、情報化されている以上、生き方を作品化しないと人々は評価してくれないのです。「人生の作品化」などと言うと美しく響くかもしれませんが、大変な時代が到来したとも言えます。匿名的な裏方でいながらも影響力のある第一線のクリエイターでいるというあり方は、もはやなかなか成立しづらいのです。
 しかし、本書でいろいろと見てきたように、人が生きるということ自体が編集行為そのものだとも言えるわけです。何を食べて、何を着て、何の仕事をして、誰と付き合い、どこで生きるか、には無限の選択肢があります。その無限の選択肢のなかから、自分で可能な範囲で選んでカスタマイズして人は生きているわけです。言い換えれば、人は常に「人生を編集している」のです。

 ぼくたちはもはやただ生きるのではなく、人生を編集し作品にして発表しながら生きざるをえないということ。そのことをわかりやすく示した一文です。