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だれもがわかってほしがっている。インタビュアー吉田豪に学ぶプロフェッショナル会話術。(2246文字)
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だれもがわかってほしがっている。インタビュアー吉田豪に学ぶプロフェッショナル会話術。(2246文字)

2013-01-03 09:23
    サブカル・スーパースター鬱伝

     先日、テレビ番組『情熱大陸』を見た。毎回ひとりの人物にスポットをあてその生き方を探るドキュメンタリーだ。今回の主役は吉田豪。「プロインタビュアー」を名のる怪しい男である。ところがこれが非常におもしろかった。ぼくは殊におもしろい番組を見ていると自然と正座になる癖がある。このときもそうなった。それくらい興味深い内容だったのだ。

     職業がインタビュアーだから、当然、話はインタビューの手管に向かう。吉田は堅く心を閉ざした人物からも本音を聴き出す技術に長けているという。じっさい、番組を見ていると吉田は口が堅いはずの大物政治家やら毒舌アイドルからも、普段は話さない本音を聴き出してしまう。いったいどこにその秘密があるのか。

     番組ではいくつか紹介されていたが、ぼくが大切だと思ったのは吉田が取材者を批判しないことだ。吉田は肯定の人なのである。精神科医が患者をカウンセリングする際、重要となる心のありようを和製英語でカウンセリングマインドという。

     それはあくまで会話相手を重視する精神である。決して非難せず、叱責せず、自分の感情を押し付けることなくひたすら相手を肯定する、そういう心のありようのことだ。あるいは吉田にはその精神があるのかもしれない。少なくともそのインタビュー術の真髄は単なる技術とはべつのところにあると思われる。

     この番組を見ていてあらためて感じたのは「ひとはみな理解してほしがっている」ということだ。だれもが自分の事情を聞いてほしい、わかってほしいのだ。それは政治家であれ芸能人であれ変わりない。

     たしかにみずから心をとざし、理解を拒絶しているように見える人物もいる。しかし、それは「どうせ話したところで理解してはもらえないだろう」という思い込みがあるからそうなるのであって、じっさいにはむしろそういう人物こそ理解者を求めているのである。

     「聞き上手」とは「理解上手」のことだ。より相手をわかりたい、話を聞きたいと思っている人間こそが聞き上手の素質を持っているのである。だからだれもが吉田に対して話さないつもりの本心を話してしまう。それは結局、瑣末な技術が問題なのではなく、吉田が「このひとならわかってくれる」と思わせることに成功しているからなのだろう。

     かれはインタビューの際、膨大な資料を用い、丹念に相手のことを調べてから取材に赴くという。それもつまりは相手をより良く理解するための作業に違いない。「絶対に話さないぞ」と思っているひとから話を聴き出すことはできない。あくまで相手の話したい欲求を刺激することが大切なのだ。

     
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