Fate/kaleid liner プリズマ・イリヤ (角川スニーカー文庫)

 TYPE-MOONの『Fate/stay night』がみたびアニメ化するようだ。制作は2006年放送のテレビシリーズ、及び2010年に公開された劇場版アニメ『UNLIMITED BLADE WORKS』を手がけたスタジオディーンに代わり、劇場版『空の境界』などを扱ったufotableが引きうける。

 ネットではいままで映像化されていない『Fate』第三のルート、『Heaven's Feel(桜ルート)』が取り上げられるのではないかともっぱらの噂だ。いままた同じ物語を繰り返すとも思われないから、妥当な推測と思われる。

 いままで『Fate』シリーズは上記の二作品のほか、『Fate/stay night』の前日譚にあたる『Fate/Zero』がアニメ化されている。

 また、番外編(というかなんというか)の『Fate/kaleid liner プリズマ・イリヤ』も現在、アニメ版が放送中である。出せばあたる人気シリーズとしかいいようがない。

 しかし、『Fate/stay night』が発売されたのはすでに2004年のこと。すでに9年も前なのである。おそらく新アニメは2014年の放映になるだろうから、そこから考えると10年前ということになる。

 そして、この9年間、TYPE-MOONはひたすら『Fate』の派生系を出しつづけることに終始していた印象がある。

 もちろん、高い評価を得た『魔法使いの夜』はある。しかし、ボリューム的に見ても、あの作品を『Fate』に匹敵するものとみなすことはむずかしい。

 過去9年の間、TYPE-MOONは結局、『Fate』と同等か、それ以上の質と量の作品を発表することができなかったといっていいと思う。

 たしかにそのあいだ『Fate』の枝葉は豊かに茂っていった。なかでも『Zero』は、質的に『Fate』を上回る力作だったかもしれない。

 どこまでが虚淵玄個人の才腕で、どこからがTYPE-MOOMの助言によるものなのか、それはわからない。しかし、とにかくあの作品は広い意味での「二次創作」の最高峰を見せてくれた。

 闇黒の大河のような壮絶無比な物語は、『Fate』を補完し、その世界をさらにひろげるという意味でも、重要な成果だといえるだろう。少なくとも並大抵の二次創作とはあまりに次元が違う出来であることはたしかである。

 あるいは、「魔法少女もの」という色物的設定で発表された『プリズマ☆イリヤ』にしても、意外にそのクオリティは低くない。ぼくはまだアニメは見ていないが(録画はしてある)、漫画版は実に楽しく、面白く見ることができる安心、安定の仕上がりである。

 『Fate』の世界を作った二次創作ものとしては、十分な出来といえるだろう。

 しかし。やはり、多くのユーザーは『月姫』、『Fate』に量的に比肩する第三の作品を待望しているのではないだろうか。