日本テレビ系アニメ 「ガッチャマン クラウズ」オリジナル・サウンドトラック

 きょうもきょうとて『ガッチャマンクラウズ』を布教しますよ!

 これ、時代を代表する一本になる可能性があると思うので、悪いことは云わないから押さえておくと吉。

 『まおゆう』がまさにそうであったように、文脈にそって物語を展開しながら、議論を一歩先へ進ませる革新的傑作と云えるかもしれません。

 くわしくは前の記事に書きましたが、ここまででまだ話は半分なんだよね。のこりの6話でどういう結論を下してくれるのか、楽しみすぎます。

 さて、作品のバックグラウンドのコンテクストについてはすでに書いたので、今回は萌え萌えなキャラクター語りでもしましょう。

 いまのところ、この作品には、実質的にふたりの主人公がいるように思えます。

 ひとりはガッチャマンの新人隊員にして女子高生の一の瀬はじめ。

 もうひとりは二億人の会員を持つソーシャルネットワークサービス「GALAX」を運営する天才少年、爾乃美家累。

 かれらはそれぞれヒーロー(個人)とクラウズ(群衆)を代表するキャラクターであるとも云えます。

 で、性格的にも正反対。どこまでもシリアスに思いつめる累に対して、はじめちゃんはおおらかでいいかげんです。

 いわば累がシリアスキャラクターだとしたら、はじめちゃんはコメディキャラクター。そういうふうに見える。

 しかもふたりとも文脈的に最先端を行っている。どちらが主人公かと云えばはじめちゃんなんでしょうが、役割的には彼女のひきたて役とも云える累にしてからが、異星人ベルク・カッツェから与えられた超能力「クラウズ」をなるべく使わないようにしているという賢さ。

 つまりは「チート能力では世界を救えない!」とわかっているわけです。

 仮にかれにデスノートやギアスを与えたとしてもそれを使わずに世界をアップデートしようとするでしょう。

 ここらへん、文脈的にゼロ年代の『DEATH NOTE』や『コードギアス』から確実に一歩進んでいます。

 でも、それすら「正解」ではない。ここらへんが『ガッチャマンクラウズ』の凄まじいところなんだけれど、すでにその気高い理想の限界まではっきりと認識されているんですね。

 ヒーローだけでは限界があるけれど、同様にクラウズ(群衆)による「アップデート」にも無理があるということ。

 ここは確実にテーマが先へ先へと進んでいることがわかって興味深いです。

 ところで、『ガッチャマンクラウズ』の感想を見ていたら某所ではじめちゃんが巨乳のアホの子呼ばわりされていて愕然。

 そうか、そういうふうに見えるのか……。いや、はじめちゃん、めちゃくちゃ頭いいと思うんですが。

 純粋な思考計算速度なら天才少年の累のほうが上なんだろうけれど、はじめちゃんは直感的に正解にたどり着ける別種の天才なんですよ。

 ただその思考のプロセスが他者には認識できないくらい速い上に言語化されないから、その場の思いつきで行動しているように見えるだけ。

 「非言語的思考直感タイプ」の天才ですね。

 しかもはじめちゃん、累とは対照的に、性格が全然真面目じゃない!

 あまり先のことは考えていない。しかし、その場その場で一瞬で「正解」にたどり着くだけのインテリジェンスを持っているからそれで問題ないのです。

 ある大事故に遭遇したとき、ほかのひとがケータイにつないで「答え」を求めようとしているなか、彼女だけが一瞬で行動に移っている場面は象徴的です。

 「精神の偉大さは苦悩の深さによって決まるのか? 『風の谷のナウシカ』に感じたささやかな疑問。」(http://ch.nicovideo.jp/cayenne3030/blomaga/ar314125)でも書きましたが、真面目人間には自ずから限界があります。

 もちろん真面目な性格にも良い所はあるんだけれど、欠点も付きまとうものなんですね。

 その上、きわだって頭が良いともう非常に苦しいことになる。

 累を見ていればわかるように、「いま、ここ」から遠い袋小路まで思考を重ねてたどり着いてかってに絶望してしまうのです。

 これが真面目人間の病理です。ほんとうにメンタルが強ければその限界すら突破できるだろうけれど、累きゅん、あんまり心が強くないみたいですよね……。

 一方、はじめちゃんはあまり先のことは考えず、常に「いま、ここ」に立ち戻ってアクションします。

 たぶん一般的な意味では累のほうが頭がいいんだろうけれど、はじめちゃんのほうが地に足がついている。だから彼女は常に正解にたどり着ける。

 この文脈ではいままでほとんど出てこなかったタイプのキャラクターですね。

 人間に過剰な期待を持たないから絶望もしない。そうかといって冷めているわけでもなく、やるべきことを淡々とこなしていく。非常にバランスがとれた主人公。

 でも不真面目(笑)。だからこそ素晴らしい。

 たとえばナウシカを初めとする宮崎駿キャラクターの、あの印象的な「まっすぐ前を見つめる視線」は、真面目キャラクターの特徴です。

 じっと相手を見つめる観察の視線! それに対し、はじめちゃんは常に興味の対象が変わりつづけているので、ほとんどまっすぐ相手を見ません。

 しょっちゅうきょろきょろとしているわけですね。でも、どっちの視野が広いかと云えば、これははじめちゃんのほうなんじゃないかと思うんですよ。