『サカサマのパテマ』を観てからエンターテインメントと人気について考えています。いや、『パテマ』、めちゃくちゃ良い映画なんだけれど、どのくらい人気が出ているんだろう、と。

 地道に上映館が広がっているようなので、とりあえず失敗ではないでしょう。色々と海外の映画賞なんかも受賞しているようだし、それなりに成功しているのかもしれない。そうだといいな、と思います。

 しかし、つくづく思うのですが、作品の完成度と人気はまたべつの問題なんですよねー。

 いや、ぼくもべつに「良い作品なら売れる」という神話を信じているわけではないのですが、それにしても、『パテマ』が、『風立ちぬ』とはいわないまでも、『まどか☆マギカ』あたりと比べてもごく狭い層にしか広まっていないであろうことを考えると、うーん、と考えてしまいます。

 ある作品が広く大衆的に通用するためには、その作品のクオリティとは別に、わかりやすくキャッチーなセールスポイントが必要だと思います。『パテマ』はそこは弱いかなあ、と。

 いや、観たらだれでも面白いとわかると思うんですよ。でも、じっさいに観てみないとわからないし、それをわかりやすく伝える方法がないので(「サカサマなんだよ!」っていってもね)、あまり爆発的人気に繋がらないのかな、と。

 そこら辺、ジブリ映画が強い所以で、やっぱりキャラクターデザインとかアニメーションの時点で魅力あるものね。予告編を観ただけでも観に行きたくなる何かがある。

 これはもちろん、漫画でも小説でも同じことです。成功した作品は、「内容のクオリティ」と「明確なセールスポイント」を両立させているということ。

 『暗殺教室』とかわかりやすい。「暗殺×教育」という面白さ、わかりやすさ。殺せんせーのヴィジュアル。これらがセールスポイントになっている。その上で王道の物語を紡いでいるからこそ、人気が出たわけです。

 『進撃の巨人』とかにしてもあの巨人のヴィジュアルだけでインパクトがある。『進撃の巨人』については時々、作者の画力を問題にする人がいますけれど、そういう意味での完成度よりインパクトのほうが大切だと思うんですね。

 いま連載している漫画だと『四月は君の嘘』あたりは非常に完成度が高い作品だと思うのですが、もうひとつインパクトが弱いんですね。差別化に成功していないように見える。

 もちろん、人気がすべてではないですし、『四月は君の嘘』はすばらしい作品なのですが、ぼくは微妙に隔靴掻痒を感じながら読んでいます。

 つまりは漫画なりアニメは「読まれる前」が勝負という一面があるということ。読んでもらわないと面白さがわからないようでは爆発的人気には繋がらないのです。

 これは小説が抱える根源的な弱点でもあると思います。小説は基本的にヴィジュアルがないですから、読んでみないとわからない。そこでライトノベルのような手法が進歩していったという一面はあるでしょう。

 まあ、たしかに