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もちろん、いまもって現役で、パワフルな新作を上梓しつづけてくれている。その石渡の最新作が『ODDS VERSUS!』。先日、第1巻が発売されたばかりだ。
無印、『GP!』と続いてきた『ODDS』シリーズの完結編という位置づけなのだが、冒頭からして何とも暗く、陰惨な展開が示されている。
長年の読者にとっては、「ああ、石渡漫画だなあ」と思わせられる展開なのだが、どうやら主人公の伴侶である女性が死んでしまっているらしいのである。
物語はその事実を描くことなく過去にさかのぼって語り始めるので、ほんとうに死んだのかどうかはわからないのだが、とにかく何とも暗く、やるせなく、絶望的とも云えるオープニングだ。うーん、ダーク……。
石渡治は、『少年サンデー』黄金時代(正確には「白銀の時代」かなあ、という気もする。ほら、サンデーのほんとうの黄金時代は『タッチ』とか『うる星やつら』が連載していた頃だという気もするわけで)に活躍していた作家のひとりなのだが、比較的明るい雑誌のカラーに逆らって、とにかく暗い情念がただよう作風の作家だ。
当時、「不幸漫画の代名詞」的な扱いだった『B・B』を始め、その姉妹編である『LOVE』、また隠れた名作の『パスポートブルー』でも、すべての作品で主人公のパートナーである人物が、ほとんど必然性もなく死んでいる。
相当に人気のある描き手だったはずなのにもかかわらず、アニメ化している作品がひとつもないのは、この「理不尽な死の描写」に原因があるような気もする。
登場人物はひょうひょうとして明るい人物が多いにもかかわらず、世界観そのものは何とも残酷なのだ。突然、ほとんど意味もなくヒロインが死んでしまうのである。
いや、『B・B』でヒロインの小雪が亡くなったときはほんとうにびっくりした。そこまでするか?と。『LOVE』の最終回で、いきなり時間が流れ、主人公の少女があっさりと物語中では脇役かと思われた男と結婚し、そして死別してしまう展開にも驚かされた。
ある意味で異様としかいいようがない展開で、じっさい、連載当時は賛否両論うずまいたという。しかし、まさにこういう展開のために、『B・B』や『LOVE』はいまなお忘れがたい印象的な作品となっているのである。
『LOVE』のストーリーやキャラクターはほとんど忘れてしまったけれど、あの悲壮感ただよう最終回は忘れられない……。
いったい石渡はなぜ、こうも悲劇的な展開を好むのだろうか? 読者を泣かせるため? いや、どうやらそういうわけでもなさそうだ。何といっても、石渡が描く悲劇は、物語的に脈絡がなさすぎて、「泣ける」というより「怖い」ものに仕上がってしまっているのだ。
これはやはり、この作家がそういう世界観を持って生きていると考えるしかないのではないか。つまり、「ひとはいつ死んでもおかしくない」、「この世界ではどんなに不条理なことでも起こりえる」という世界観である。
ぼくなりの言葉を使うなら、この作家は「人間社会の裂け目」から露出した「自然世界のリアル」を描き出そうとしている。
その
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海燕(著者)
『B・B』はOVAでアニメ化しているそうです。ごめんなさい。