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『杉原千畝 スギハラチウネ』は泣けないけれど凄い映画だ。
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『杉原千畝 スギハラチウネ』は泣けないけれど凄い映画だ。

2015-12-10 01:52
    杉原千畝: スギハラチウネ (小学館ジュニア文庫)

     最近、生活が昼夜逆転していて、あまり陽の光を見ていない海燕です。

     ただでさえ日が短い真冬にこれではいけないなあと思うのですが、普通に暮らしているとどうしてもそうなるんですよね……。

     というわけで、真夜中に一本映画を観て来ました。『杉原千畝 スギハラチウネ』。

     タイトルロールの杉浦千畝は、数千人のユダヤ人に「命のビザ」を発行し、その生命を救った日本人として最近非常に有名になった人物で、映画にも当然、そのエピソードが出て来ます。

     しかし、この作品はその出来事を単純に「いい話」として描いて終わるのではなく、その前後に連なる歴史の文脈を重厚に描き出し、一本のストーリーとして魅せることに成功しています。

     特別な大傑作というわけではないかもしれませんが、深々と心に染み入るように印象的な歴史映画の力作です。

     この映画に出て来る杉浦千畝は、単なるお人好しの外交官ではありません。

     まず何よりも動乱の時代において、ソ連やヨーロッパ諸国で、複雑な諜報活動を展開した人物なのです。

     冒頭から杉原がほとんどスパイそのものといった活躍を繰り広げる場面が続き、いったいどういう映画なのだろうと戸惑わせられますが、もちろんアクションが主体の映画ではありません。

     物語はやがて、戦乱のヨーロッパにおけるナチスドイツとユダヤ人の運命にフォーカスしていきます。

     この、複数の国家や民族に注目しているところで、映画全体に複雑な陰影を与えることに成功していると思う。

     杉原千畝という「美談の人」を集約に選んだところから、「日本人すげー」的なシナリオを予想して見に行く人も少なくないと思われますが、そういう単純な見方を強いる映画ではまったくないのです。

     さりとてひたすらにウェットな涙、涙の作品というわけでもない。

     非情な歴史の荒波のなかで、それでもなお懸命に自分の良心に恥じない行動を取ろうとする個人を描いた物語です。

     そういう意味でははたしてヒットするのかどうか微妙なところですが、ぜひあたってほしい。あたるべき映画作品だと思います。

     偶然ではありますがヨーロッパで難民問題が話題になっているいま、タイムリーな作品ということもできるでしょう。

     日本人が主役ではあるものの、舞台の大半はヨーロッパで、日本語の場面はごく少ないという映画なので、気楽に見に行くには辛いかもしれませんが、見て損はないだけの格式のある作品です。

     ネットの感想サイトを見に行くと、「感動できなかった」、「泣けなかった」という意見が散見されますが、そもそもそういうわかりやすい感動を描く映画ではないんですよね……。

     相当にドライな作風なので、ひとを選ぶところはあるでしょうが、日本にはウェットな映画が既にたくさんあるわけで、ぼくはこういうドライな映画もあっていいと思いますね。

     全編でも特に印象的なのは、 
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