今回は竹内 健さんのブログ『竹内研究室の日記』からご寄稿いただきました。
■まじめに規則を守って仕事をすればするほど、ダメになっていく日本
ミッドナイトフライトで日本に帰ってきました。モントレーで開催されたIRPS(Internaitonal Reliability Physics Symposium)で竹内研からは3件で発表しました。
学会中は自分の発表以外は、ホテルにこもって、仕事ばかり。
特に、西海岸の夜が日本の昼なので、連日、Skypeでミーティングをしたり、資料を作ったり。とうとう、徹夜になってしまった。
深夜便の中でも仕事して、朝の5時について、帰宅して、また仕事です。
大学の研究者の自分がそこまでしゃかりきに仕事をしなくてもいいのかもしれないけど、何とか、日本の電機やIT産業を復活させたい。
その思いだけで、企業や大学の間の調整をする毎日です。
その中で、どんな組織からも出てくるんですよね、ルールばかり気にする人が。
石橋を叩きに叩いて、最後は叩き割る。
いつも結論は、「やめましょう」になる人が。
私は今まで、大手電機メーカー、国立大学、私立大学、と3つの組織を移りました。
更に、共同の研究プロジェクトで、多くの企業や大学とかかわっています。
でも、大きな仕事をしようとすると、多くの時間が、意味があるとは思えない規則との折り合いをつける調整に使われる。
時々、あまりにもの調整コストの大きさに、絶望的になる。
多くの規則は、過去に何か問題があったために、作られる。
では、そういった過去の事例に学んで規則を積み上げると、何が起こるのか。
規則だらけで、解が無くなるんですよね。
あるいは、部門間の調整にとてつもなく時間がかかったり。
企業で半導体の設計をしていた時のことです。
歴史のある企業では、過去の失敗事例をもとに、様々なルールがある。
でも、ルールをすべて守ると、半導体のチップの面積が大きくなって、コストが増える。
あるいは、設計ミスが無いか、念には念を入れて検証ばかりしていると、設計期間が延びてしまって、市場への製品投入が遅れる。
一方、新興企業だった三星には、そんなルールがない。
結局、ルールにがんじがらめになった、日本の多くの半導体メーカーは敗退しました。
ルールがないので、三星は失敗もしますが、斬新なチャレンジもする。
ルールを守ることに汲々とするより、まず、やってみる。
そして、失敗して直した方が、失敗を恐れて停滞するより良いのではないか。
15年位前の話ですが、自分も、実際に、三星と共同でフラッシュメモリを開発して、彼らから多くを学びました。
これは、明文化したルールだけでなく、心理的な面もあります。
日本では、ちょっとしたルール違反を口うるさく言う人が多すぎる。
むしろ、いまの日本に必要なのは、失敗を叱らないこと。
チャレンジしないことこそ、恥ずべきことじゃないですか。
規則にがんじがらめの組織、規則の中身を考えもせず、規則ををひたすらまじめに守ろうとするカルチャー、こういったものを変えないと、日本の復活はないと思う。
それは、企業も、大学も、役所も同じ。
執筆: この記事は竹内 健さんのブログ『竹内研究室の日記』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年04月23日時点のものです。
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