すでに店頭に並んでいるが、8月9日からカゴメが数量限定で発売している「カゴメトマトジュースプレミアム」。
限定生産や限定発売というのはよくある話だが、なぜ限定なのか、どう限定なのかを知るために生産現場から工場までを取材した。
まず、原料となるトマトの生産現場に行った。
契約農家でカゴメ専用の畑で採れる2016年産トマトを、濃縮還元ではなくストレートジュースとして出荷するのがプレミアムの一番の理由だ。
「凛々子」(りりこ)と命名されたこのトマトは、カゴメ専用のものでジュース用の品種だ。
一般的にジュースというと、果物として出荷できない形の不ぞいのものや、熟しすぎたものをつぶして作る印象があるが、これはそうではない。
ジュースにするために品種改良を重ねた、いわば専用品種ということができる。
トマトの絵を想像していただきたい。たいていは赤いトマトの上にヘタがあるものを想像するだろう。
しかし、この品種は収穫がしやすいように、またジュースに葉やヘタが混ざりにくいように果実だけがポロッと取れるように改良してある。
実際に収穫するところを見たが、見事に果実だけが外れた。
工場では、真っ赤なトマトが水の中を流れてくる。洗浄をしているのだ。
そして、人の手でもう一度、葉やヘタが混ざっていないかどうか、品質に問題のあるものがないかどうか確認してから、いよいよジュースになる。
トマトは季節モノなだけに、ジュースにするラインは年間を通してこの時期しか稼働しない。
通年発売されているトマトジュースは、濃縮還元で工程が別なので当然ラインも違う。また、他の野菜を絞るラインはトマトとは共用できないため、やはり専用のものとなる。このぜい沢な工場のラインぶりには記者も驚いた。
こうしてペットボトルや紙パックに詰められて、さらに箱詰めされて出荷される。
ちなみに、通年販売されている濃縮還元ジュースの缶入りと紙パック入りでは味が違うという。
缶入りは殺菌のために加熱して充填するのに対して、紙パック入りは技術的にその必要がないため微妙に味に違いが出るということだった。
同社広告宣伝部の大喜多奈央さんに話を聞いた。
--これは本当にプレミアムですね。このトマトはそのまま食べても美味しいのですか?
「ありがとうございます。美味しいとは思いますが、ジュース専用ですので果肉分が多く食用にするとちょっと引っかかるかもしれません。後で食べてみてください」
--ところで、むかしはトマトジュースというと食塩入りでしたが最近はそうでもないみたいですね?
「そうですね。以前は技術上の問題から食塩を入れないとおいしくなかったと聞きます。今は食塩無添加でもおいしく加工できる技術が確立されましたので、両方販売しています」
--私はどちらかと言うと有塩の方がトマトジュースらしくて好きですが、割合はどうなっているのですか?
「年々、食塩無添加のほうが多くなってきています。健康志向といいますか、若い方は無塩のトマトジュースが当たり前という方もいらっしゃいますからね。記者さんのように食塩入りを望まれるお客様もいらっしゃいますが、その割合は減ってきています。残念ながらプレミアムでは普通の食塩入りは作っていません」
--寂しいですね
「でも、プレミアムでも低塩はありますので、そちらを是非飲んでみてください!」
件のジュース専用品種である「凛々子」を食べてみた。
大喜多さんが言ったように、皮から果肉の部分が普通のトマトより厚く、全体に小ぶりなトマトだ。
確かに歯に皮の部分が引っかかったが、味は美味しかった。記者は自分の好みで食塩を振って食べたのは言うまでもない。
最後に飲み比べだ。
通年販売の濃縮還元トマトジュースを飲んでみた。
比較のために無塩のものを飲んだが、ふつうに美味しい。いつものトマトジュースそのものだった。
次に、プレミアムの食塩無添加を飲んでみた。
見た目はさほど変わらないが、若干オレンジというよりも赤色の方が濃いような感じもする。
ところが、味はまったく違っていた。まず、酸味が残らない。うまく表現できないが「トマト食ってる感」がものすごいとしか言えない。
できればこの時期だけしか味わえないので、フレッシュトマト感をそれぞれの舌で味わっていただきたい。
最後に、記者はまったく知らなかったのだが、紙パックをたたむと「たたんでくれてありがとう」の文字が飛び出す。
それはメーカーと消費者の距離がぐっと縮まる瞬間だった。
※写真はすべて記者撮影
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(執筆者: 古川 智規) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか