こんにちは、マガジンハウスです。今回はこの原稿をスマホで書いてみようと思います。…(数分で断念)ガジェット通信を御覧の皆さまでしたら、当然、スマホ所有率は高いでしょう。今回、紹介したい本は、「クロワッサン特別編集」というだけあって、主に中高年層の女性に向けたスマホガイド本。ですが、「なあんだ、じゃあビギナー向けか」とスルーするなかれ! 何年も使ってきてはいるものの、実はまだまだ使いこなせていない機能や使い方はあるはず。巷のスマホ本とは一線を画す本書、意外な掘り出しネタがあると思いますよ~。
―――というわけで担当編集のHさん、よろしくお願いします。認知症の本や健康家計簿などを作られたHさんがスマホ本って、ちょっと意表をついたんですが。
H 「そう? でも私、通勤時間が長いからスマホでめちゃめちゃ仕事するんですよ、横須賀線で。メールしたりラインしたり。で、人並み…いや最低限(笑)、自分がやりたいことはやれてる気がするんだけど、こんなもんじゃないってのも無論わかってて。それで、本屋さんでスマホコーナーの本を見たりしたんですが、なんかこう…うまく読めない(笑)」
―――わかりますよ。意を決して開いても、いきなり読めないっていう。いきなり高いスタート地点で萎えますよね。
H 「スマホの画面写真がバンバン並んでてね。何もわからない人向けのものがない。それで、自分で作ろうと思ったんです。いつもそうですね、介護の本も、歌舞伎の本も、わかる本がないと自分で作るっていう」
―――スマホについて「わからない」と自認するHさんが作るとなると、けっこう時間がかかったんじゃないですか?
H 「監修してくださった井上真花さんは、スマホとかタブレットの本ばかりを作られる専門家。だから最初は大変でした。ほんとに言葉が通じないんですよ、お互いに(笑)。私が何がわからないかを井上さんにわかっていただくのに、まず何か月もかかりました。どうしたら読む気になるのか、その一つの工夫として、Q&Aにしたり」
―――共通言語のない二人のコミュニケーションは大変そうですね。でも、Hさん目線だからこそ、わかりやすくなった。
H 「と、思います。例えばGoogleマップを知らない人はいないと思うけど、旅行のガイドブックの代わりになるんだよということも読者に知っていただきたかった。ガイドブックは何年も改訂されないけど、グーグルマップはすぐ更新されるし、ストリートビューで見ることもできちゃう。でも、そういうふうにどんどん選んでスキルアップしていける人って、女の人ではそんなにいないと思うんですよ」
―――自分のできる範囲のことでとりあえず、って感じですよね。
H 「うん。だから、自分でも使いこなせてはいないだろうとは思っていたけど、スマホって自分の代わりに調べてくれるし見せてくれるし覚えててくれるし、こんなにも使えるんだと驚きましたね。そしてそれらの機能も、どこを触ってどこを動かせばいいかっていうのを、私自身ができるか全部試してみたので、わかりやすさには自信あるかな。他のスマホの本はそこが親切じゃない。ビジュアルを並べすぎると煩雑になるっていうのは編集者としては理解できるけど、おいおいわかんないんだからプロセスカットするなよと(笑)。だからプロセスは極力カットしてないです。この本を見ながらなら、絶対できる」
―――そうなんですよね、知りたいのはその省いた部分なんだよって。あとはSNSはごく若い方だけのものじゃなくなってきていますが、親なんかを見てると、LINEもショートメールも同じじゃん、という使い方なんですよね。
H 「私も、LINEもFacebookも、たまたま旅先で知り合ったぐらいの人から接触があって、どうしようかなって時がある。プロテクトの仕方とか、どういう風にすれば失礼がないかとか、暗黙のルールみたいのがあるじゃないですか。私同様、それがたぶんみんな怖いと思ってるんですよ」
―――ローカルルールがあるものには手を出せない、みたいな。それを言うなら、私は本書でも取り上げている格安SIMがそうかも。よくわからないから、デメリットがあるんじゃないかという恐怖心で踏み込めなかった。
H 「けっこう慎重派なのね(笑)。今や8人に1人らしいですよ。だから、この本は今だからこういう紹介だけど、来年だったら全然違う見せ方になりますよね。私も時間できたらSIMフリーに替えようと思ってる。だって、機種も替えずに番号も替えずに格安SIMにできるんだもの。唯一、携帯のキャリアメールだけは変えないといけないけど、今はあんまり使わないしね」
―――あ~…私けっこういるんですよ、キャリアメールだけでやり取りしてる友人が。LINEを頑なにやらない人っていません?
H 「いるいる、ガラケーの友達もいっぱいいるし。たぶん、美学としてやらないんだと思う。既読にしちゃったらすぐ返さないと申し訳ないとか」
―――私、この本読んで、自分は実にややこしいコミュニケーションを持ってるなと思いました。キャリアメールでしかやりとりしてない友人がいて、Instagramのメッセージ機能でやりとりしてる相手もいて、TwitterのDMで連絡取り合う友人もいる。
H 「ややこしい(笑)。キャリアメール、なかなか通知に気づかないでしょ」
―――ええ、だからもうこの本見て、これにしようっていう格安SIMの目ぼしは付けました(笑)。スマホって感覚的に使えるようにできてるから、取説ってほとんど見ないできてるんですよね。自分もたぶん1割も使いこなせてないだろうなと思いながら読んだら、やっぱり知らないこととか「へ~」ってことがありましたよ。
H 「そう、例えばキャプチャーの方法なんて、みんな知ってるだろうと思っていたんだけど、わりとそうでもないって言われて載せたんですよ」
―――あと持ってる家電の取説がPDFでダウンロードできるというのも、お母さん世代の方々こそ知っておいてほしいですね。買った時に入っていた説明書を後生大事に持ってるじゃないですか。でも、必要なときにスマホで見ればいい。
―――私は、実は知らなかったのが、検索の時、大文字小文字を書き分けなくていいってこと。知ってた?
―――知ってましたよ(笑)。だってアイドルグループについて調べる時、そこらへんの表記は厳密じゃなくてもOKって早々に気づいてましたから。<B.A.P>ってグループ名は、小文字の”b.a.p”でもドットなしの”bap”でもヒットします。
H 「そっか…、知ってたか(笑)」
―――Hさんの場合はあれです、編集者の悲しい性ですね。大文字か小文字かを追求しないといられない。「この‟K”はどっち!?」みたいな毎日だから。
H 「…てな感じで、みんな‟へ~”って思うところが違うんですよ。説明書を見ながら使っていくものではないゆえの。だって私、ブラウザって何ですか?って聞いて、井上さんを驚愕させましたからね。『ブラウザがわからない人に、私は何を教えたらいいんだろう』って(笑)。だってブラウザなんて言葉、知らなくても使えるんだもん」
―――専門誌はそこらへんは当然知ってるものとして進みますよね。でも、専門誌でも、初心者向けに作られた本はありますよね。
H 「あります。ただ、超初歩的なガイド本っていうのは、文字の入力の仕方とかタップの仕方とかが載っているんです。でもみんなそれはできていると思うのよ、使ってるんだから。文字を早く打つ方法もよく見るけど、そういうことは別に求めてない」
―――確かに、そんなに超速く文字が打ちたいとは思わない(笑)。
H 「そうじゃなくて、スマホはこんなこともできるあんなこともできるってことをご存知ない、宝の持ち腐れになってる人に向けて作りたかった。大文字でも小文字でもいいってことも、知ってるとそれだけで無駄がなくなるじゃないですか」
―――「こんなこともできるんだ」だけじゃなく、「こうすると便利なんだ」っていう、活用法を広げる案内があるのもいいですね。あと、出だしのこの感じでほっとする人多いと思うんですよね。専門誌には手出せない人は安心します。
H 「そうなの、ある程度年齢いった女性で機械が苦手な人が読むものがなかった。せっかくそれなりのお値段を毎月払ってるわけだから、スマホができることはやれるようになったほうがいいと思うの。生活が楽になると思う」
―――楽になる…そうですよね。
H 「そんな頑張らなくてもいいのよって人もいるかもしれない。でも、例えばいちいちメモらないといけないことを省けるし、冷蔵庫にある野菜の名前を入れただけでレシピを考えてくれるし、使えたほうが楽しくて得かなと思うんですよ。できるようになった時の達成感っていうのは、誰しも少なからず感じたことがあるでしょ。それに新しいことを学ぶ機会もそんなになくなってきたし(笑)」
―――なくなりましたね…。ところでHさんご自身が愛用してるアプリってあるんですか?
H 「ここで紹介してるのはほとんど使ってるよ。一番使うのは写真のアプリですね、大衆演劇好きだから。カメラロールは一見好太郎さん(一見劇団)だらけ(笑)」
―――仕事では何を使います?
H 「facebookかなあ、主にリサーチに。もちろん原稿読んだり、電車の中で入稿したりもしますし、文書類もスマホで書きますよ。旅先のインドから企画書を送ったこともあります(笑)」
―――インドから届く企画書って興味ありますね! なんて未来的な。
H 「そう、スマホが人らしさとか人の時間を奪ったというようなことを言う人もいますが、何事も使い方次第というか、私はやっぱりスマホによって世の中は面白くなったと思うんですよね。今の時代のよくわからない不安感っていうのはもちろんあるんだけど、その一方でスマホがもたらしたワクワク感って大きいと思うんですよ。‟こんなこともできちゃうの、これで?”って、一般の人にわかりやすい形で未来感というものを実感させてくれたものだし」
―――ワクワク感や未来感ゆえ、距離を感じる人もいたんでしょうね。
H 「そう、だからこそちょっと難しいような気もしちゃって止まってる人もいるんだと思う。感覚で広がっていくものもあるから、そういう商品がなかった世代の人は、躊躇するのもわかります。その時に、こういう本でプロセスを見て、ああこういうこともできたんだとか、こうやれば楽だったんだって、助けになればいいなと思いますね」
―――Hさん、ありがとうございました。私もスマホ使いをグレードアップさせます!
今週の推し本
クロワッサン特別編集 よくわかるスマホ
マガジンハウス 編
ページ数:100頁
ISBN:9784838751457
定価:880円 (税込)
発売:2017.02.27
ジャンル:実用