第5話:異変
「わりぃ、もうお腹いっぱいかも…」
箸を置きながら彼が言う。
仕事の関係で夜に家を空けがちな親に内緒で、私たちはほぼ毎日一緒に夜ご飯を食べていた。毎日私が献立を考えて、スーパーに食材を一緒に買いに行き、彼がゲームをしている間に作ってあげるのが日課だった。ちょっとした新婚生活だ。
「味、合わなかった? 苦手だった?」
私が申し訳なさそうに聞くと、彼は慌てて首を振る。
「すげー美味いよ。本当、料理上手だよな。でも最近、夏バテのせいか全然食欲がなくて…わりぃ…」
「そっか、じゃあ明日はしっかりスタミナがつきそうなご飯にするねっ」
私が言ったのを聞いたのか聞いていないのか、彼はどこか心ここにあらずといった表情のままテレビの前に寝転んでしまった。
最近、そんなことが増えた。毎日毎日一緒にいるから、マンネリなのかと不安にもなったが、それとはどうも違うのだ。明らかに彼の元気がない。
「ねぇ…」
「…どした?」
ワンテンポ遅れた返事と共に彼が振り返る。私の不安は頂点に達した。
「最近おかしいよ。何かあったの?」
はっとした...