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【結城登美雄の食の歳時記#22】新しい若者像と“半農半X”という生き方(中山間地域編・その3)
このごろラジオ、テレビ、雑誌なんかで団塊の世代(第1次ベビーブーム世代の1947~1949年に生まれた人)が定年をむかえてその数が7〜800万人もいる、それが企業社会を離れどうなるだろうか、ということが議論されるようになりました。
いわゆるかつての「2007年問題」「2012年問題」です。団塊の世代が企業社会を離れたらその後どうするかというアンケートがあちこちでおこなわれています。「連合」という労働者組合がとったアンケートによると団塊の世代の40%代がこれからの第二の人生は農業を中心に暮らしていきたい、農的な生活を基盤に第二の人生を送りたいという方が多いんだそうです。これを「定年帰農」といって、定年になったら農業に就くぞという言葉もあるほどです。
しかし僕は若者と農業の話がしたいのです。団塊の世代が農業への志向を強めていますが、その息子や娘たち、すなわち団塊ジュニアの40歳前後ぐらいの人たちが、親たちとはまた別の理由で農業に関心を寄せています。毎年1万人以上の若者が実際に農業に就いていますが、そこにはシビアな企業社会に勤めていた親たちの後ろ姿を見たからなのでしょうか、自分はそうではないもう1つの生き方を探したいんだ、そんな若者の姿が浮かびます。
不況、リストラ、先の見えない情勢、その中でも自分なりに安心できる基盤を探したい、これが若者が全国あちこちで農業を始めた理由だと思っています。
僕はこの数年、若者たちに会って取材をしてきました。外見にみるとちょっと頼りなさそうな若者たちですが、実際に話すとしっかりとした考えがあって、僕らはついお金に目がくらんでしまいそうだけれども、若者はお金だけをもとめているわけではないようです。もっとやりがいのある仕事、充実した仕事の1つとして農業を見ているようです。確かに農業は大人たちから見れば、金にならないというふうに言われてきましたが、そして事実として大変厳しいものでもるのですが、若者にしてみれば自分の足場を農業で築いて、その上に立って暮らしを営みたい、足りないところは何か稼ぎを他に見つけて暮らしていこうではないか、そんな姿勢が見られます。
かつて「半農半漁」という言葉がありましたが、若者たちの間では、「半農半X」という言い方があるんだそうです。半分は農業をやりながら、足りないところは自分の趣味ややりたいことを充実させ、それが稼ぎにつながっていくような何か=「X」をそれぞれに見つけたい。その土台に農業を選ぶという新しい若者像が生まれつつあります。それが新しい農業者像になっていくんではないかと僕は見ています。(「その4」につづく)
【プロフィール】結城登美雄(ゆうき・とみお)
1945年、中国東北部(旧満州)生まれ。宮城教育大学、東北大学大学院非常勤講師。「地元学」の提唱で2005年芸術選奨・文部科学大臣賞受賞。著書に「地元学からの出発―この土地を生きた人びとの声に耳を傾ける」(農文協)「東北を歩く―小さな村の希望を旅する」(新宿書房)など
【これまでの記事】
■結城登美雄の食の歳時記#20<中山間地域編・その2>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar252134
■結城登美雄の食の歳時記#16<農山村と若者編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar215232
■結城登美雄の食の歳時記#12<浜の暮らし編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar190685
■結城登美雄の食の歳時記#8<食育編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar164946
■結城登美雄の食の歳時記#4<麦編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar139064
■結城登美雄の食の歳時記#1<暦編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar126106
このごろラジオ、テレビ、雑誌なんかで団塊の世代(第1次ベビーブーム世代の1947~1949年に生まれた人)が定年をむかえてその数が7〜800万人もいる、それが企業社会を離れどうなるだろうか、ということが議論されるようになりました。
いわゆるかつての「2007年問題」「2012年問題」です。団塊の世代が企業社会を離れたらその後どうするかというアンケートがあちこちでおこなわれています。「連合」という労働者組合がとったアンケートによると団塊の世代の40%代がこれからの第二の人生は農業を中心に暮らしていきたい、農的な生活を基盤に第二の人生を送りたいという方が多いんだそうです。これを「定年帰農」といって、定年になったら農業に就くぞという言葉もあるほどです。
しかし僕は若者と農業の話がしたいのです。団塊の世代が農業への志向を強めていますが、その息子や娘たち、すなわち団塊ジュニアの40歳前後ぐらいの人たちが、親たちとはまた別の理由で農業に関心を寄せています。毎年1万人以上の若者が実際に農業に就いていますが、そこにはシビアな企業社会に勤めていた親たちの後ろ姿を見たからなのでしょうか、自分はそうではないもう1つの生き方を探したいんだ、そんな若者の姿が浮かびます。
不況、リストラ、先の見えない情勢、その中でも自分なりに安心できる基盤を探したい、これが若者が全国あちこちで農業を始めた理由だと思っています。
僕はこの数年、若者たちに会って取材をしてきました。外見にみるとちょっと頼りなさそうな若者たちですが、実際に話すとしっかりとした考えがあって、僕らはついお金に目がくらんでしまいそうだけれども、若者はお金だけをもとめているわけではないようです。もっとやりがいのある仕事、充実した仕事の1つとして農業を見ているようです。確かに農業は大人たちから見れば、金にならないというふうに言われてきましたが、そして事実として大変厳しいものでもるのですが、若者にしてみれば自分の足場を農業で築いて、その上に立って暮らしを営みたい、足りないところは何か稼ぎを他に見つけて暮らしていこうではないか、そんな姿勢が見られます。
かつて「半農半漁」という言葉がありましたが、若者たちの間では、「半農半X」という言い方があるんだそうです。半分は農業をやりながら、足りないところは自分の趣味ややりたいことを充実させ、それが稼ぎにつながっていくような何か=「X」をそれぞれに見つけたい。その土台に農業を選ぶという新しい若者像が生まれつつあります。それが新しい農業者像になっていくんではないかと僕は見ています。(「その4」につづく)
【プロフィール】結城登美雄(ゆうき・とみお)
1945年、中国東北部(旧満州)生まれ。宮城教育大学、東北大学大学院非常勤講師。「地元学」の提唱で2005年芸術選奨・文部科学大臣賞受賞。著書に「地元学からの出発―この土地を生きた人びとの声に耳を傾ける」(農文協)「東北を歩く―小さな村の希望を旅する」(新宿書房)など
【これまでの記事】
■結城登美雄の食の歳時記#20<中山間地域編・その2>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar252134
■結城登美雄の食の歳時記#16<農山村と若者編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar215232
■結城登美雄の食の歳時記#12<浜の暮らし編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar190685
■結城登美雄の食の歳時記#8<食育編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar164946
■結城登美雄の食の歳時記#4<麦編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar139064
■結城登美雄の食の歳時記#1<暦編>
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar126106
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