2010/08/10
10:53 am
昨日、赤坂レッドシアターで「12人の優しい殺し屋」を観て来た。
良くできていた。
ニコミュWSに参加していた菊田大輔くん、
緊張しっぱなしのように見えたけど、まじめでストレートな演技はこれからが楽しみだ。
この物語を面白いと思うかどうかは観る人に委ねるとして、
この舞台を作った人たちの誠実さはとても心地よかった。
元々、2次創作で広まった物語世界をベースに、舞台は舞台の世界が広がっているみたいだ。
舞台では、閉ざされた空間で人間の心理のアヤが錯綜すると言う、
オーソドックスな演劇的な物語が展開されていた。
殺されると決められた人間の心の奥に入り込み、
心の底に隠れ住んでいた歪みを暴きだし叩き潰す、叩き潰してからでないと殺さない、
と言う物語の展開はたぶん脚本で作ったものだろうが、よく書けていると思った。
殺され屋を演じている役者が妙にはまっていて
一人だけ闇の中に棲んでいることがよく表現されていた。
経験の少な俳優たちの、どこがプロの殺し屋だよ、
と言いたくなるほど形だけの滑稽な殺し屋ばかりの中で、
一人,芝居が際立っていたが、彼のおかげでドラマに引き込まれた。
脚本に一つだけ言うことがある。
普通は殺し屋は単独行動だけど、今回は4人でチームを組む、という話になっているが
その理由は最後まで語られない、こうした謎は解決しておいてほしい。
演出も、空間を屏風で構成するやり方は、蜷川さんがよくやるし、別に独特と言うほどでもないが、
今回の一人で立たせると持たない役者が多い舞台では、
転換を役者が行うことで役者の気分も適度に緊張感の緩和がなされるし、
観る方も目を紛らわされ、場面が替るとさあもう一度出直しですよ、と言うあらぬ効果を生んでいた。
そこも含め、役者をその気にさせると言うところも、この演出家かなりなマジックの持ち主だろう。
従来の演劇スタッフからはともすれば色ものと思われるようなこうした題材で、
自分たちが作りたい演劇を作ろうと真剣に考え、
それを舞台上に繰り広げた脚本・演出、をはじめとしたスタッフたちの、
舞台作りに対する誠実さに拍手したい。
また、スタッフをそのような姿勢に持って行ったであろう、
制作会社のプロデューサーにも喝采を送りたい。