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やっぱり全女は凄い!! プロレスは凄い!……と唸ること間違いなしの高橋奈七永ロングインタビュー!! 14000字のボリュームでお届け!!
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【アジャコング インタビューシリーズ】
①「あの頃の全女はAKB48やジャニーズだった」
②恐るべし全女の異種格闘技戦/ダンプ松本、究極の親分肌
③偶然と必然が折り重なった「アジャ様」覚醒の瞬間
④ブル中野・2年間戦争/バイソン木村との哀しき別れ
⑤対抗戦ブームの終焉と全女退団……
⑥さらば! 私が愛した全日本女子プロレス
――高橋さんが全日本女子プロレスのオーディションを受けたのは96年のことですが、そのときは激戦だったんですか?
高橋 私たちの時代は応募者40~50名ぐらいでした。それこそクラッシュギャルズの時代は何千人もオーディションを受けに来ていたと聞いていたんで、それと比べると全然ですね。
――いくら人数が少ないとはいえ、オーディションを受かる自信ってありました?
高橋 ないですよ! やっぱり、プロの世界なんでレベルが高いんだろうなと思ってましたし。だから私、オーディション前はアニマル浜口ジムに通ってたんですよね。それでも自信はなかったです。だって、ほかにどういう人が受けに来るかもわからないから。どんなに凄い人が集まっているんだろう?って怖かったですけど、実際はそうでもなかったという感じでしたね(笑)。
――そもそもアニマル浜口さんのジムで練習をこなすのが大変ですよね。
高橋 当時は「プロレスラーになりたい!!」という目標はハッキリしていましたから。アニマル浜口ジムで「プロの世界はこういうものだ」と高いレベルで教えてもらえたのは逆にありがたかったですね。
――浜口さんってメンタル重視でもありますよね。
高橋 なにしろ「気合いだあああ!!」の人ですから。でも、本当にあのまんまなんですよ。何かのスイッチが入ると「海や、地球や、空気というのは……」みたいな壮大な語りが始まりますし(笑)。
――ハハハハハハハ! 浜口ジム出身の小原道由さんが言うのは、テレビのカメラが回ってなくてもパワフルみたいで。
高橋 変わらないですねぇ。私がジムに通っていたときは、24時間スクワットという企画に挑戦されたりもしていましたし。
――それはテレビの企画でですか?
高橋 いや、テレビは関係なかったと思います。
――プライベートで!(笑)。
高橋 一人で黙々とスクワットです。もちろん途中でバナナを食べたり、休憩を取ったりしてるんですけど、基本的に24時間ずっとスクワットを続けるという。精神力がハンパないなと思いました。
――そんなお父さんのもとで育った京子さんはたくましいはずですよね。
高橋 私は京子ちゃんと1歳違いで、ジムで一緒にスパーリングをやったりしたんですけど。親子だからこそ、よりキツく京子ちゃんを怒っていた気がします。2人ともオンオフは凄くハッキリしていて、京子ちゃんも練習中は絶対に笑わないし、気の緩みも絶対に見せないんですけど、練習が終わった瞬間にいつものホワ~~ンとした京子ちゃんになるんですよ。
――テレビに出ている京子さんは、おっとりしてますもんね。
高橋 あれが普段の京子ちゃんです。スイッチが入った瞬間もう別人。アニマルさんがよく「目をひんむけ! 野獣になれ!」って言うんですけど、その言葉どおり目の色が変わりますよね、京子ちゃんは。
――そういう厳しいところで練習されたら全女にも受かりますよね。入門当時はどんな1日のスケジュールだったんですか?
高橋 まず朝起きて、9時から寮や事務所の掃除をします。10時から朝練が始まって、それが終わって全女のレストラン『SUN賊』でアルバイトというか、ウエイトレスやるんですよ。
――全女の自社ビルの中で経営していた飲食店ですね。
高橋 夕方からまた練習という感じです。当時の練習は走ったり、縄跳びしたりとか基礎トレーニングですね。全女の道場って目黒のビルの中にあったんですけど、天井が低いのでリングをそのまま立てられないんですよ。だから、コンクリートの上にマットを敷いて練習をするんですけど、それがめっちゃ堅いという。
――ああ、マット下のスプリングがないんですね。
高橋 あんな堅いところで受け身を取っていることも逆に自信にもなるんですよね。だから全女の人はみんな強いんですよ。
――「100発投げ」という全女名物の特訓がありますけど、コンクリにマットを敷いただけの場所に投げられるのはイヤですねぇ。
高橋 そうそう、100発投げね。あれって練習試合を何十分もやったあとに最後の最後にやるんですよ。みんな泣きながら投げられてましたねぇ……。
――それは厳密に100回数えるんですか?
高橋 数えますよ。投げる側が1人10発ずつ投げるんですけど、それを見ている周りのみんなが数えるんですよね。
――ちょっと寒気する光景ですねぇ。道場だけじゃなくて地方巡業中の試合前にも100発投げをやることがあるんですよね?
高橋 もちろんありました。地方の場合はお昼頃に会場入りするんですけど、若手はそこから急いでリングを作って、息つく間もなく練習して……というスケジュールで。そのあとに100発投げを受けながら、アジャ(・コング)さんにメッチャ怒られたことを覚えてますねぇ。私、入門してから何度か逃げちゃってて、何回も出戻りしている身なんですよ。そのことを100発投げのときにほじくり返されて「おまえ、逃げたんだろ!」「また逃げんのかよ!」みたいに怒られて。
――それって練習というよりはシゴキに当たるんですか?
高橋 いや、というわけでもないですね。デビューが決まっていたから、そういう意味で試されていたんだと思うんですけど。デビュー前とか追い込み期間になるとやるわけで。どういう状況でもケガしないという練習だし、心も身体も鍛えられるわけなので理にはかなってますね。
――100発投げが理にかなってる!!(笑)。
高橋 だって、試合なんて心が折れたところで負けるんですから。イヤですもん、自分に負けるの。試合で負けることより、自分に負けることのほうがイヤです。100発投げは自分に負けないための練習ですよね。
――先ほど「道場で何十分も練習試合を……」と気になることをおしゃってましたが、それってどういうことなんですか?
高橋 普通にタッグマッチをやるんですけど、あの練習試合が一番激しいんですよねぇ。当時レフェリーだったボブ矢沢さんがコーチも兼任してたんですけど、矢沢さんがOKと言うまで練習試合は終わらないんですよ。つまんない試合だと3カウントを入れてもらえかったり。
――それはプロの試合として成立していないと矢沢さんは認めてくれないということですか?
高橋 そうです。しょぼい技じゃなくて、しっかり追い込んでフォールしないとカウントを取ってくれないんです。いつも40分くらいは平気でやりますし、最高で60分もあったなあ。
――60分!? それって昭和プロレスでよくあった、ゆったりしたリズムのフルタイムドローではなくて、展開の速い内容ですよね?
高橋 どこでフォールをしてくれるかわからないからずっと全力ですよ。
南月たいよう(SEAdLINNNGレフェリー・コーチ) 練習試合なのにビルを飛び出して道路なんかでもやりあって帰ってくるときもありましたよ(笑)。
――早すぎた路上プロレス!(笑)。
高橋 練習試合じゃもったいない。お客さんに見せたらお金を取れるって言われてましたね。入門から3年目までの人たちが一緒に練習をするんです。上のほうになると一緒には練習しなくなるので。
南月 でも、奈七永さんは、3年どころか5~6年経ったあとでもやってましたよね? 先輩の中で一番マジメに練習やってました。
高橋 私は練習しないとリングに立っちゃいけないと思っている人間なので。
――代が1年違うと人間関係もガラリと変わるじゃないですか。練習試合でもその関係を引きずっているわけですよね。
高橋 まあ、逆にこっちは後輩のことを「ガンガンやってこいよ!」って感じでナメてかかってますから。そこで遠慮したりすると、その後輩はそのまま潰されますからね。そういうところから毎日が闘いですよ。気が休まるときがないですね。
――練習試合からして潰し合いだったんですか……高橋選手が入門された当時も、抑え込みで決める実力勝負の試合はあったんですか?
高橋 もちろん。全女の若手はそこから闘いが始まるんで。
――抑え込みの実力で序列を決める闘いはプロレス界の中では特殊ですけど、高橋選手も全女流の闘いを理解して入門されたんですか?
高橋 理解も何もないですよ。私は全女が好きで見ていたし、全女を見ていれば、そういう闘いだってことはわかりますから。そもそも私はプロレスラーの強さに憧れて全女に入ってますし。抑え込みも含めて「闘い」があるのは当然のことでしたね。
――高橋選手がいまでも格闘技の試合に出たりするのは、その延長線上というか。
高橋 そうですね。もともと全女って格闘技戦をやったりとか、アマレスの大会に出たりとか、そういう側面もありましたから。私が一番憧れていた堀田祐美子さんもV☆TOP WOMANという総合格闘技のトーナメントに出て強かったですし。いつか自分もそういう闘いをやりたいなという気持ちはありました。そもそもアニマル浜口ジムからスタートしているので、わりと格闘技の練習はコンスタントに続けてきていたんですね。プロレスラーは強くないといけない、と。
――全女はレスリングやキック、MMAの試合をあたりまえのようにやってましたもんね。
高橋 豊田さんはアマレスの全日本選手権で優勝してますし、アマレスとコラボした大会なんかもあったんですけど、脇澤美穂は当時アマレスのトップだった山本聖子ちゃんとアマレスルールの試合を急にやらされて。負けて泣きじゃくってましたね。アマレスの人にプロレスをやりなさいと急に言われてもできないのと同じで、プロレスラーが急にアマレスの試合で勝てるわけないんですよ。競技が違うから。試合をやらされることにも納得いかないし、負けることもくやしいから泣いてたんだと思うんですけど。
――会社の命令だから断れないんですか?
高橋 イヤだから出ないとか、そんなの通らないじゃないですか。もうやるしかないんですよね。会社も選手もそういう姿勢だから全女という団体は世に出たんだと思います。
――タフじゃないと全女では生き残っていけないんでしょうね。
高橋 しかも、全女はプライベートでの関係性がそのままリングに持ち込まれていましたからね。豊田真奈美さんが、吉田万里子さん、伊藤薫さん、長谷川咲恵さんと「フリーダムフォース」というユニットを作られたときは、巡業のときにそのメンバーだけ変な場所に控室があったりとか。
――アジャさんが全女のトップだったブル中野さんに反旗を翻したときは、巡業のバスにも乗れないし、控室にも入れてくれなかったとか。リング上の対立がそのまま反映されるという。
高橋 豊田さんは会社から何かされたわけではないんですけど、選手のみんなが気に入らないことがあるとそんな目に遭ったり……女の殺伐とした争いはつきまとっていました。
――全女が凄いのは、フロント陣が選手間の対立を煽ってたんですよね。
高橋 ああ、そうなんです。私も前川久美子さんと、些細なイザコザがきっかけでリング上での抗争に発展しましたからね。たしか前川さんが後輩を殴ろうとしたときに、私が止めに入ったんですよ。そのときに私の手が前川さんに当たっちゃって、私が前川さんを殴ったみたいになっちゃって。そこから確執が始まった感じですね。
――その確執を聞きつけた会社がマッチメイクすると。
高橋 それを聞いちゃったら会社は試合にしますよね。つまり「外でやるならリングの上でやれ!」ということだと思うんですけど。
――そういう因縁が発端で試合が組まれると、相手との信頼関係って保てるんですか?
高橋 信頼関係がないって思いますよね? でも、全女という傘の下にいるから、やっぱり信頼関係はあるんですよ。相手に対しておもいきりぶつかってもいいという信頼関係。相手も自分も「全女の選手だ!」というプライドが強いんで。
――そこはお互いにプロなんですね。
高橋 もちろんプロなのでケガさせないことも大事ですし。そこは全女が好きでみんな集まってきていて、リング上の闘いを充実させたいという共通の思いがあったからこそだと思います。でも、前川さんとの試合はヒドい試合になりましたねぇ。私もグーパンチをいっぱい入れてましたし、2人とも髪をつかみ合って動かないという(笑)。
――ハハハハハハ!
高橋 お客さんのヤジも飛んでいて。前川さんとはその後も何試合かやるんですよ。
――うわー、精神的にもキツイですねぇ、それは。
南月 その抗争が行きすぎたことがあって、奈七永さんが後楽園ホールのエレベーターを蹴って壊すという事件も起きましたよね?(笑)。
――エレベーターを破壊ってどういうことですか!?(笑)。
高橋 あのときは堀田さんも絡むんですけど、堀田さんは当時もう全女をやめられていたんですよ。でも、私と前川さんの試合に乱入してきて、結局前川さんが「私は堀田さんに付く!」と言ってリングから出てっちゃったんですよ。私としては「なんじゃ、そりゃ!?」じゃないですか。怒り狂ってリング下に置いてあるリング設営用スパナを取り出して追いかけたんです。
――ええええええええ!?
高橋 2人が肩を組んで後楽園ホールのエレベーターの中に入っちゃったので、エレベーターのドアをバーンと蹴ったんです。そしたらエレベーターが止まっちゃったという(笑)。
――ハハハハハハ! ヤバイやつじゃないですか!
高橋 あのときは怒られましたねぇ、松永会長に。
南月 周囲にお客さんもいたし、大事件でした。ほかの選手も控え室から出てきて、みんなで奈七永さんを止めるみたいな(笑)。
高橋 もう無我夢中だったから。そのときは試合を魅せるというより「勝ちたい!!」「闘いたい」という気持ちのほうが圧倒的に上だったんで。当時は「どうしたらラリアットで人が殺せるか」を真剣に考えて、ずっとサンドバックで練習していましたから。
――ひえ~(笑)。でも、そこはプロレスの技の範疇なんですね。
高橋 プロレスの技でどうにかしたいから、プロレス技を練習しました。
――闘いを通して前川選手とわかり合える瞬間はあったんですか?……14000字インタビューはまだまだ続く!!
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