Dropkick
【Dropkick】朝日昇インタビュー完全版
現在発売中『Dropkick vol.9』朝日昇氏のインタビュー企画ですが、編集サイドの不手際で内容修正前のものを掲載してしまいました。あらためて完全版を掲載すると同時に朝日氏、取材ライターの高崎計三氏にお詫び申し上げます。
朝日 いやあ、すごかったですねえ! ずっと見ちゃいましたよ!
──お願いしていたUFC日本大会の映像、見ていただけたんですね。
朝日 あ、それはもちろん見ましたけど、すごかったのはWBCですよ。僕も野球やってたんで、やっぱ燃えますわ!
──そっちですか(笑)。
朝日 やっぱ対世界、国別対抗戦になったら燃えますよね。昨日ももうずーっと「日本、なんで打てんねん!」って(笑)。ヤバいじゃないですか、どこの国も。日本代表の選手がキューバの練習を見たらしいんですけど、「あ、こりゃ無理や……」って唖然としたらしいんですよ。彼らは身体能力がすごいじゃないですか。だからブラジルにも苦戦したけど、いまはまだブラジルに経験がないだけで、もうちょっとしたらヤバいんじゃないですか?
──格闘技も、いまの日本は同じ状況になっちゃってますけどね。
朝日 それはでも、僕はなんの宗教にも入ってないですけど、諸行無常というかすべての事象、一緒ですよね。人間のやることなんだから。八百屋さんでもなんでもね。聞いたところではJリーグって、日本プロ野球を反面教師にして作ったらしいじゃないですか。
──そうらしいですね。
朝日 だからチーム名にくっだらない企業名なんか入れないで、地域の名前を入れたり。当たり前のことをやってますよね。別に格闘技だって後追いなんだから同じことをやればいいんじゃないですか? 石井館長はそれをやったわけですよね。頭のいい人だから。だから、誰がどう言おうが、優秀なヤツは世界に行くねん! それを島国根性体質の人たちとかがアホなことして止めるじゃないですか。無理! 結局行かなかったけど、大谷みたいなヤツが高卒で最初から標榜する時代になっちゃったんですよ。でももっとまずいのは、今年の正月にTVを見てたら前田健太とリトルリーグの世界一の子が対戦してたんですよ。
──そんな企画があったんですね。
朝日 そいつら、前田健太の球を平気で当てるんですよ! あいつらが育ったときって、もっと世界が当たり前になってますよね。それが当然なのにワケのわからんことばっか抜かしやがって、行くに決まってるし、こんな小っちゃい村の中で一等賞になって喜んでる方がダセエと思わねえのか、おまえらって!
──えーと、いまは誰に怒ってるんでしょう(笑)。
朝日 いまやねえ、ネットで、ボタン一つで世界が見れるんですよ! 小見川(道大)が練習に来たとき、聞いたら子供がまだ2歳なんだけど、彼のiPhoneで勝手にYoutube見てたと。「小見川それはアレやろ、俺なんかが農道でエロ本拾ってたパターンを、いまはボタン1個でやっちゃってるんやで」と。
──小見川選手のお子さんはエロ動画見てたわけじゃないでしょうに(笑)。
朝日 もうその子たちは最初から使いこなせますからね。僕はやっと最近、電話が取れるようになったんですけど。全然わかんないんですもん、あのスマホってヤツは! それをねえ、最初から使えるんですよ。そういうことをわかればいいのに、あのバカどもは……! 自分らの持ってる化石のような既成概念がすべてだと思ってやがる。
──だからどのバカの話なんでしょうか(笑)。
朝日 僕も普段TV見ない人間だけど野球選手になりたかったからWBC見ますけど、視聴率もすごいことになってるじゃないですか。これで決勝ラウンドとか行ったらもっとすごいですよね。それを素直に見習えばいいのに! それで国内リーグをどうするかというのは絶対に問題になるから、それを考えればいいんですよね。でも日本人って優秀だから、絶対勝てると思うんですよ。
──体格や身体能力で劣っていても、勝つための何かを編み出すというか。
朝日 そうじゃないですか? 戦争でもゲリラ戦法を編み出したのって日本人なんですよね? それにバレーボールのAクイックやBクイックも。あらゆることを日本人は作り上げるじゃないですか。日本はハッキリ言ってパクリ文化だけど、怖ろしいことにパクったものをドえらい世界まで昇華させるのが日本人じゃないですか。そこがパクったままで終わる中国や韓国との違いですよ! いろんなところに行かれてるからわかるでしょうけど、こんなにアホみたいに働く国ってないですよね? 頭おかしいですよね?
──確かに(笑)。
朝日 練習だって、日本人みたいに黙ってコツコツやる国なんてないですよ! 頭もいいんだからすごいのは生まれますよね。野球でイチローみたいなのが生まれたし、サッカーだってあるサイトでは、「サッカーだってあるイギリスのサイトでは、日本は20年以内にイングランドより先にW杯で優勝するだろう」って言ってたんですけど、それはあり得ますよね! 日本サッカーは俺らがガキの頃からしたら異常な成長ですよね。原爆だって落とされても回復した国なんだから、できると思うんだよなあ。ねえ。でも日本国内でワケのわからんプロパガンダばっかりやりやがって、何が世界ランキングだと。日本人ばっかやん!
──あ、やっぱり話がそっちの方に行ってますね(汗)。
朝日 いや、ホント悲しくなってきますよ! この前もあるチャンピオン・クラスの選手から、ここではピー音バリバリの相談みたいんが来たんですよ。だから、話をしました。あいつらの責任は重大ですよ。……(ここから1時間ほどは取材の主旨から外れるので割愛!)。……みんなねえ、認めればいいんですよ。何で「黒船」と思っちゃうんですかね? 僕なんか普段の大会を見てるとすごくいろんな選手がいて面白いと思うんですけど、お客さんからしたらつまんないんですかね?
──まあ、だから今回の日本大会はシウバ、ハント、五味というラインナップにお客さんが熱狂した部分はあったと思うんですが。
朝日 向こうもマーケティングしてそれを組んでるわけですよね。そして、彼らは皆素晴らしい選手ですよね。ただ、五味を否定するわけじゃないけど、いまはあの場でトップ10に入れる選手じゃないですよね? 生き残ってるのが大変なことなんですけど。でもやっぱり日本育ちの選手はリング上がりの技術だし、「ただ面白い試合をすればいい」っていう不思議なものがあるから、ほら、日本のワケのわかんない言葉があるじゃないですか。「打ち合う」っていう。アホか!って(笑)。野球だって「いまからど真ん中のストレート投げます」ってやらないでしょう! 剛球で打ち取れればいいけど、なかなかできないし、それでホームランばっかり打たれてると2軍に行くことになるんだよって(笑)。
──そうですねえ。
朝日 年齢もいっちゃってると、テクニックを修正しにくいから余計に大変ですよね。
──今回の五味選手の試合でもそれを感じましたか?
朝日 いや、でも間違いなく言えるのは、五味ももうUFCで7戦して3勝4敗ですか。それは間違いなく慣れてきてますよね。それはすごく思いました。ただジャブなどは使わず、火の玉のように振り回すかたちでしたよね。でも一つ思ったのは、寝かされても瞬間で立つようになりましたよね。
──そうですね。
朝日 昔は五味って相手にとってはある意味読みやすかったとは思います。パンチのエリアは危険だから、ロングレンジであおって、焦って出てきたところにカウンターで削ると。そして、まず背中を付かせて寝かせようと。でも今回はスッと立ちましたよね。あれは練習したんじゃないですか。
線そうだと思いますね。
朝日 寝技が狙われる部分である事は正直、五味自身もわかってると思うけど、全体のレスリングはそこまで低くないから、アレをされたら相手はイヤですよね。それにやっぱり当たったらヤバいんですよ(笑)。一発で持っていくわけですから。ディエゴ・サンチェスもプレッシャーを感じていたでしょうし、五味がただ漠然とやっていたらサンチェスにもっと簡単に持っていかれてると思います。
──ですね、確実にプレッシャーをかけてる場面もあったわけですし。
朝日 サンチェスはグレッグ・ジャクソンのところだから「エリアに入るな」って言われてただろうし、長い距離なら左ミドル使ってるし、ショートの打ちあいにもいきますが、やらなかったですよね。
──ミドルと言えば五味選手の方が1Rにミドルを蹴っていたのと、それをキャッチされてテイクダウンされたので2Rには蹴らなくなったのが印象に残ったんですが。
朝日 五味は感覚で動くタイプじゃないですか?だから、「パンチが当たらないから蹴ってみよう」ぐらいのことだったんじゃないですか?(笑) でも掴まれて、これはよくないと思ったんでしょうね。周りからもさんざん言われてるんでしょう、「下になるのはよくない」と。同じミドルでもサンチェスは腰を残して蹴るんですけど、五味のは本当にシンプルに蹴ってるだけに見えるから、たぶんサンチェスも見やすかったんじゃないですか?それは当たらないですもん(笑)。でも、五味はそう言われたくないだろうけど、サンチェスとどっこいの試合をしてる時点で凄いなあと思います。
──それは確かですよね。
朝日 この前も(日沖)発くんの試合でアライブの鈴木(陽一)さんから「すみません」って言われたんだけど、相手はクレイ・グイダですよ! グイダやサンチェスってトップ10ですかね? それとマッチアップされるようになって、僅差の判定にまでなってる。日本全体のレベルアップは確かにしてるんですよ。物議を醸すような判定にまでなってるわけですから。まあ、僕は負けは負けだと思いましたけど。
──あ、そうなんですね。
朝日 負けだと思いましたね。やっぱり空振りが多すぎるし、有効な攻めと全体のペースはサンチェスだと思いました。でもサンチェスとここまでやれたのは確かなんだから、ここからどうしたら勝てるか。ちょっとしたプラスアルファやひねりを入れていかないとダメなんじゃないかなと思います。
──でも長くやってる選手ですし、そこからスタイルに手を入れていくのも大変ですよね。
朝日 それもあるし、あとは気持ちを持ち続けていくっていうのがすごいですよ。だからイチローってすごいんですよね。五味だって修斗で一番になってPRIDEで一番になって、それでUFCでも頑張ってるわけで、気持ちの持続と言うものもポイントになると思うんですね。頂のまた頂の、これまた頂となるわけですから。それでも新しいエリアに入って、ちゃんと生き残っていくんだからすごいなと思いますね。ここからどうするかなんだけど、五味は器用じゃねえだろうからなあ(笑)。それに、ここからまた上がズラーッといるんですよね、強いのが(笑)。
──確かに(笑)。
朝日 だからアライブの鈴木さんとも話をした際、もうくっだらない枠にとらわれてないで、ナショナルチームみたいにして情報とか技術を共有していかないと無理なんじゃないかって。サッカーだって、各世代のワールドカップに行った人たちが解説をやったりして、声をつないでますよね。だから香川みたいなのが出てきたんだと思うんですよ。でも日本ってあるとき、海外に行ったヤツをみんなでボロクソ言ってた時期があったじゃないですか。裏切り者とか、売国奴とか。そんなことを言ってる場合じゃないんですよ!
──まずは認めることからですよね。そしたら何を学ばないといけないかが分かってくるわけで。
朝日 僕らが最初、グレイシーに勝てなかったときに、システムを作っていけばいいと。競争を上げていけば、生み出していけると。あとは五味とかがどこまで引っ張っていけるか。技術的に見たら、やっぱりどうしても日本上がりはステップを使えない選手が多いと思いますが、それは一つに狭いリングだとそれでも手を出せば届いたからですよね。
──ああ、そういう違いがあるんですね。
朝日 オクタゴンのケージなどだと回られてしまうから、詰め方を変えないといけない。でも五味のすごさは打たれ強いのもあるし、やっぱり一発の破壊力は今でもトップクラスですよね。ズドーン!って当たったら。それがいままでの日本のリングだと使いやすかったけど、海外の選手は徹底的に戦略ゲームをしてくるじゃないですか。スポーツだったら当然の。でも今回の1回の負けじゃなくて、もっと先を考えたらやり方はあると思うんですよ。UFC1戦目なんてもっと対応できてませんでしたよね。
──そうでしたね。
朝日 もうほぼ読んだとおりで(笑)。距離取られて削られると言う。今回だってサンチェスは経験ある選手だし、テイクダウンのタイミングもうまかったですよね。あのビミョーな削り方! 僕が現役のときもそうでしたけど、相手に触れられないっていうのが一番イヤだと思うんですね。野球だってそうじゃないですか、ランナーが3塁に行けないって、地獄ですよね(笑)。サンチェスだってあのチョコチョコやってるのは、大きなアドバンテージですよ。アグレッシブポイントがない、手数もないけど、ゲームを支配するリング・ジェネラルシップは取ると。ボクシングのクリチコがそうですよね。トップはその上にビッグショットが打てるわけだから。
──五味選手は前には出てたんですが……
朝日 あれはすごいですよ。でも、もっと工夫しないといけない。
──単調でしたか?
朝日 単調です。あれじゃ読まれますよ。ピッチャーならいきなり150kmの球をブワーッと投げてるようなもんですから。それに足が止まっちゃってるじゃないですか。もうちょっとだけ、何かの変化を入れるべきかなと。それに単発ですよね。もう1つ2つ繋ぐことを考えたら、あのダイナマイトはもっと生きると思います。向こうのうまい選手はステップとか身体の入れ方、カウンターまで考えて3つ4つと繋ぎますよね。それとフランキー・エドガーあたりはハエのような出入り。ウザいっちゅうねん!(笑)ってぐらいの。
──エドガーはハエ(笑)。
朝日 五味はプレッシャーは強烈でしょうが、フェイントは見えませんよね。配球で言ったら剛速球だけ投げ続けてるように感じます。WBCの澤村に似てますよね(笑)。あと5km落としていいから、もう制球に配慮しろと、桑田に怒られてましたが(笑)
──その後にブオーン!があると生きるわけですよね。
朝日 そうそう。僕はどうしてもたとえが野球になっちゃうんですけど……
──ええ、さっきから楽しませてもらっております(笑)。
朝日 五味の攻めは4番バッターの集まりなんですよ。一時期の巨人打線みたいなもんですよ! 1番、2番がいないねんって(笑)。巨人が強くなったのって、坂本と松本が出てきたからじゃないですか。彼らが塁に行くから、ワンヒットで点が入るわけですよ。それは五味で言うなら、やっぱりジャブ、ステップとフェイントだと思うんです。
──よくわかります。
朝日 五味のすごさはホームランをたたき込めることなんだから、ちょっとしたことだけでいいんですよ。すごい能力があるんだから。世界の選手たちもそこは警戒してるわけですからね。どうしても日本のリング上がりは4番バッターばっかりになっちゃう傾向が強いですけど。そこもリングとケージオクタゴンなどとの違いの一つですよね。だからねえ、あの連中もいつまでも変なことにこだわってないで……
──またそっちの話しに行きそうですね(笑)。いろいろとすごくよく分かりました。ありがとうございました!